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昨年の夏、過去最小面積を記録した北極海の海氷も、今年の夏は減少スピードが緩やかで、この数年内で比較すると氷が残っています。と言っても、80年代90年代から比べれば、随分減っているけど。 今年の春先には「昨年の最小面積を記録更新するかも」なんていう予測もあったので、とりあえず現状には一安心です。 昨年と今年の同じ8月26日の海氷密接度の図を下に並べてみました。上が昨年2012年、下が今年2013年の最新のものです。 海氷密接度とは、例えば100㎢の範囲の中に、何パーセントが海氷で覆われているか、という指標です。全面に氷があれば100%、半分なら50%。それを色分けしています。 今年が海氷が残っている、というよりも、昨年が異常なほど減少したということです。今年も、昔に比べれば相当減っています。 海氷密接度では、氷の厚さは分かりません。全面に氷があっても、厚さが3mなのか30cmなのかでは、体積は10分の1になってしまいます。 なので、厚さのデータというのも重要です。 下の二枚は、同じく昨年2012年の海氷の厚さと、今年の厚さのデータです。 今年は昨年に比べて、全面で厚い海氷が残っています。昨年なぜ異常に減ったのか?はちゃんと理由があります。暖かかったから?ではありません。今年日本がやたらと暑いから、北極の海氷も心配だね、ということは、関係ありません。 上のグラフは最新の海氷のグラフです。赤い線の途中で止まっているのが今年の線。昨年はこの時期、400万㎢を切るくらいまで行ってましたが、現状は550万㎢。 ちなみに、北極点に挑戦する時期は、最近では通常3月上旬から4月中が一般的。黄色い範囲で示した時期です。 時々聞かれる質問に「なんでもう少し早い1月とか2月から挑戦しないの?その方が寒くて氷もしっかりしているでしょ」というものがあります。その答えは上のグラフを見てもらえれば理由は分かると思います。 1月2月というのは、秋から凍りはじめた海氷がまだ成長段階で、一番面積が拡大する時期が3月上旬です。つまり一番海氷がしっかりとしている時期です。 また、実は気温も一番寒いのが3月上旬頃なのです。海氷が成長段階だと、まだあちこちで海水面が露出しています。海水というのは、塩分濃度によって変化しますがマイナス1.8℃くらいから凍りはじめます。つまり、凍っていない海水面が露出していると、そこから暖気が上がってくるのです。 全面にしっかりと氷が張ると、海の暖気も遮断されて気温も更に冷え込みます。そうすることで、海氷も更に成長できる、ということです。 また、北極点に挑戦するにはカナダ最北端の陸地であるディスカバリー岬付近からスタートしますが、実はそこが一番北極点に近い陸地ではありません。 グリーンランド最北端のモーリスジェサップ岬が最北の陸地になるのですが、モーリスジェサップ岬の沖は、北極海から大西洋へと流れ出る海流(上の図で水色の破線の矢印)の流れが早く、北極点へ向けて歩いていも絶対に大西洋側へと流されてしまいます。また、流れが速いということは、足元の海氷が安定せず、あちこちで氷が割れていて歩くことがとても困難です。というか、無理です。 で、北極海には大きな海流が二つあります。 ひとつは、北極海を太平洋に繋がるベーリング海峡から大西洋に繋がるグリーンランド東岸へ流れていく「極横断吹走流」 もうひとつは、アラスカ沖のボーフォート海を時計回りに回る「ボーフォート循環流」です。 海氷が影響を受けるのは、海流ともうひとつが「風」です。風の方が直接的に影響を与えます。 これから、来年の北極点挑戦へ海氷が好条件になっていくには、上の図で示した高気圧が、あの位置に停滞し続けてくれることが重要です。 昨年の夏、海氷減少が著しかったのは、図で示した高気圧の位置に夏の間じゅうずっと強力な低気圧が居座りました。 高気圧はその周囲を時計回りに風が流れますが、低気圧は半時計回りに風が吹きます。 昨年の夏は、この半時計回りの強風と、海流の流れが重なり、氷の動きが加速されました。強風で氷がバラバラに分断され、海流を加速させるような風の流れで氷はどんどん流れていきました。一番上の、海氷密接度の昨年の図を見ると、アラスカ沖ボーフォート海が異常に氷がなくなっています。この作用で海氷が減ったものと思われます。 図で示した位置に高気圧が居座り、ディスカバリー岬のあたりに北極海の寒気の中心となる低気圧が停滞することで、北極海は海氷が厚く成長していきます。今後の推移を見守っていくには、その辺りを私は注目します。
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2013年08月27日
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