集合住宅維持管理機構のマンションドクターニュースに載せていただきました。
2018年3月13日、日本マンション学会関西支部総会に引き続いて開催された記念講演会(関西フォーラム)で、マンションにおける民泊問題がテーマに取り上げられました。3名の講師によるセミナーの内容を報告します。(会場:大阪市立大学文化交流センターホール)
1.「管理組合の民泊対応」
分譲マンションでおこなわれる民泊に関連して、騒音や共用部分でのマナー違反など、共同生活に支障が出るような事象が多発していることを踏まえ、NPO法人こうべマンション管理支援機構の代表を務めるマンション管理士の植田雅人氏が、管理組合からの相談事例を交えながら、民泊全般に関して系統的に説明されました。
民泊については、国や自治体で様々な定義がなされていますが、依拠する法令によって①旅館業法に基づく簡易宿所、②国家戦略特別区域法に基づく特例で、大阪府や大阪市等で取り組まれているいわゆる特区民泊、そして管理組合が規約改正等で対応に追われた平成30年6月15日施行予定の③住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊の3種類に分けられます。
観光立国を目指し民泊を積極的に進めようとしている政府から、いわゆる「専ら住宅」であっても民泊は可能であるという見解が出され、民泊新法では管理規約において「住宅」という用途に限定されていたとしても、マンション内の住戸で民泊営業が可能と解釈されることになりました。しかし、新法による民泊事業の届出が受理されるまでに管理規約の改正等に着手しておく必要性が自治体や管理業協会等を通じてアナウンスされ、国土交通省のホームページ上で改正案の雛型が提示されたこともあり、多くのマンションで民泊への対応がなされました。その結果、マンション管理業協会の調査によれば、約8割の管理組合が規約や総会・理事会の決議等で民泊禁止を決めており、民泊を容認しているマンションはほとんどありません(約0.3%)。
このように多くの管理組合で禁止の決議がなされていますが、民泊をおこないたい、あるいは民泊に無関心な区分所有者が存在する管理組合や、運営機能が不十分な管理組合では対応できていないところもあります。管理組合として民泊を規制するには、まずは管理規約で専有部分での民泊利用を禁止する方法があります。これには総会決議(4分の3)が必要ですので、事前に十分な広報をおこない、周知を徹底する必要性が指摘されました。他に、使用細則において専有部分を貸与する場合の手続きを明確化し、またトラブルとなる迷惑行為を禁止し、違反した場合のペナルティーも定めておくことで抑止力を高める効果が期待できるとのアドバイスもありました。
2.「民泊の法的課題について」
次いで、弁護士の伏見康司氏より、民泊の法的な問題点を主として解説がありました。
はじめに民泊事業を概観し、全国民泊実態調査結果によると宿泊事業について許可を得ている事業者の割合は16.5%で、無許可30.6%、特定不可・調査中52.9%であることから、8割以上が違法または不適法民泊であるという実態、状況の中で住宅宿泊事業法(民泊新法)が定められたことが指摘されました。
住宅宿泊事業法には、前頁の図に示す3つのタイプの事業者(住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介事業者)があり、それぞれ行政機関への届出や登録が必要となります。このうち宿泊事業者については、都道府県知事(政令市、中核市等)への届出が必要です。知事は監督権限を有しており、住宅宿泊事業に対して自治体が独自に条例を定めて、上乗せ規制をしています。具体的に、関西圏の政令指定都市および府県で実施されている規制には、近隣住民への説明を求めるものや、住居専用地域に限り営業日数の上限を60日程度に制限するもの、施設から一定の距離に管理者の駐在を義務付けているもの、平日は営業を禁止しているものなどがあり、自治体によって規制内容が異なっています。また、宿泊事業者は、下のような標識を掲示することも義務づけられています。
さらにマンションにあっては、管理規約等において住宅宿泊事業が禁止されていないことを裏付ける書面の提出が求められており、宿泊事業が供用される規定となっていない場合には、管理組合に宿泊事業を禁止する意思がないことを証する書面の添付が求められます。
民泊と賃貸借の分岐点については、下図に示すように、滞在期間が1か月以上は賃貸借でそれ以下は基本的には宿泊とみなされる、「1か月ルール」があります。しかし、年間180日以下の提供しか許されていない民泊にマンスリーマンションを組み合わせて、稼働率を上げ、収益性の向上を目指す動きも出てきています。
もしもマンション内に違法民泊を見つけた場合には、民事または刑事対応する方法があるので、当該民泊の実態を把握することが重要だとの指摘がありました。
マンションでの民泊規制のための管理規約改正の有効性について、規約改正前に民泊事業の届をしている区分所有者がいた場合は、特定の区分所有者(民泊事業者)が受ける不利益と管理規約改正の必要性や合理性との利益衡量により判定されることになり、ペット飼育禁止に関しての判例などからも、特別の影響を及ぼす場合に当たらない可能性が高いのではないかとの見解が述べられましたが、いずれにしろ、判断が分かれるような状況が生じないように、民泊を禁止する方向で考えている管理組合はできるだけ早く管理組合の規約改正を図る必要があるとの指摘がありました。なお、植田氏と同様に、法的に有効かどうかは疑問があるが、罰金規定を設けておくことで抑止効果が期待できるとのアドバイスもありました。
最後に折田弁護士から、本来都市計画の用途地域における住居専用地域では旅館的な営業は認められていないにも関わらず、民泊に限りその趣旨を逸脱することについて都市計画サイドからの検討などがされていないのかとの意見が述べられました。
(日本マンション学会 関西支部幹事 太田隆司)