角の墨彩画

コメントの返事書かないことが多いですが、お許しを・・・

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 「あんた、ゴミステーションに捨ててあった自転車を乗り回したからって窃盗とはどういうことだ。落し物を拾ったんじゃないぜ。俺はその自転車が一週間近く前からゴミステーションの道路反対側に捨ててあったのを見ていますよ。捨てられたものを拾って使ったからってどんなで犯罪でえ。法律の何条に書いてあるますか。」感情的で攻撃的な言い方だった。それは野村も文句を言いながらも自覚していた、が自制できない自分をどうすることも出来なかった。
「いやもう済んだことです。息子さんも認めて書類にサインして帰りましたから、・・・・お帰りください。
「なんだとあんた、息子はまだ15だよ。親が出向いてきたのに説明もしないで帰れとはなんだ。」
「お父さん、酒を飲んでいませんか。」
「飲んでるよ。晩酌して何が悪い。俺が怒ったのは、誰が取調べをしたのか訊ねたのに、お前等知らん振りで中々出てこなかったじゃないか。なんだよ、その態度は・・・・、それに二日前のY新聞に岡山でゴミステーションの新聞雑誌、アルミカンをトラックに積んで持ち去る業者がいるが取り締まり出来ないものか?市役所がそれは現在の法律では出来ない、と答えた記事がのってたぞ。お前等そんなことも知らんでやってんのか。さあ、答えれよ」そこまで一っ気にまくし立てた。まくし立てることで野村から冷静さが消え、誰が何を言おうともう止められない雰囲気だった。
「まあ帰んなさいよ。飲んでんじゃ話しにならん。」
 比較的若い筋肉質な刑事は、これは無視するに限るとばかり踵を返して奥に行ってしまった。野村は梯子を外された気分に陥ってきた。それからと言って引き下がることも出来ない。カウンターを乗り越えて追いかけることも出来ない。仮に乗り越えれば頑強な刑事達が俊敏に飛び出し取り押さえ、公務執行妨害かなんかできそするだろう。そんな手に乗るほど戦後不覚状態に陥ってはいなかった。
 「おい、今話した奴、どうして逃げるんだ。答えろよ。卑怯じゃないか。弁解できないから逃げやがって・・・・・」もう喧嘩を売っているようなものだった。だが、それでも誰もが無視した。
「お父さん、もう帰ろうよ。誰も相手にしてないみたいだよ。帰ろうよ。」細君はしきりに促すが引っ張って帰るほどの意気込みはなかった。それ以上執拗に説得するとかえって火に油を注ぐことになることをこれまでの二十年の結婚生活で分かったことだった。内心、夫が言うように捨てられた自転車を持ち出して乗ったからといって息子に窃盗罪で連行し調書にサインさせたことを理不尽に思っている。この事が学校に報告されて高校受験の内申書に記載され不利益な扱いを受けるに違いないと確信していた。早く帰って息子に事件の成り行きを聞きだしたいが、余り執拗に説得するのも自分達以外に部外者がいないのだから署員の目が皆此方を向いてしまいそうで、夫の気が済むまで仕方がないと判断したのだった。それに、夫の訴えはまともだとは思うが、晩酌をして来たことは非を認めた。しかし、電話がある前から飲んでいたのだから不可抗力なことだと思っていた。酔いが醒めてきたのでは今回の場合は遅すぎた。
 野村は無視されたからといって引き下がる人間ではない。カウンターないのボスらしい刑事は相変わらず足を机の上に投げ出して背もたれのある椅子をユルリゆるりと揺すっていた。その刑事と野村の目が合った。その目が不敵というか莫迦にした表情を感じた。それを野村は見逃さなかった。野村にしてみれば最後の獲物のように直感したのだった。直感は理屈ではない。きっと喧嘩を買ってくれる相手だと思った。空かさず右手の人差し指を立ててボスに指差し野村は行動を起こした。
 「そこの足を投げ出した刑事さん、聞いてただろう。答えてくれないか。さっきの若い奴じゃあ話しにならん。逃げてしまったよ。」
 野村は目を逸らさないでボスに挑む眼光を送った。

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