|
博士学位論文 論文内容の要旨および審査結果の要旨
氏名 宇田 和子 食品公害と被害者救済―カネミ油症事件の被害と政策過程― Ⅰ.論文内容の要旨 1.本論文の目的と意義
宇田和子氏は、2008 年度に法政大学大学院政策科学研究科政策科学専攻博士後期課程に 入学し、所定の単位を修得するとともに、鋭意研究に取り組み、2013 年2 月に博士学位請 求論文『食品公害と被害者救済─カネミ油症事件の被害と政策過程─』を提出した。 本論文は、三部10 章および序論と結論から構成されている。A4版ワープロ横組みで1 頁40 文字36 行(1440 字)のフォーマットで書かれており、目次8 頁、本文197 頁、参考 文献リスト14 頁、付属資料等52 頁の計271 頁からなる。 (本論文の目的)
本論文の目的は、カネミ油症問題を対象としつつ、食品公害問題の被害の実態を社会学 的に把握するとともに、これまで、この食品公害の被害が看過され、適切な政策的対処が 欠落してきた歴史的過程と要因連関を解明し、その上で、食品公害被害を救済するための 政策提言を行うことである。カネミ油症問題は、1968 年に被害が顕在化し、大量の被害者 の存在を背景にした一連の訴訟と、複数の段階での被害者運動の展開がありながらも、今 日に至るまで、問題解決については部分的な対処しかなされてこなかった。被害の悲惨さ にもかかわらず、加害企業の補償についての対処も、行政によると政策的対処もきわめて 不十分である。その意味で、現代日本社会における最大規模の未解決の社会問題の一つで あり、被害論、加害論、解決論の三つの側面から総合的に研究し、政策的対処の道を示す ことが必要である。本論文は、カネミ油症をめぐる歴史的事実経過の解明に発し、放置の メカニズムを理論的に分析した上で、食品公害一般に対する政策提言に至るという総合的
研究を目指すものである。 (本論文の意義) 本論文は、その課題設定と研究遂行の仕方において、以下のような積極的意義を有する。 第一に、その被害の広がり等から非常に重要な社会問題であるにもかかわらず、これま
で長期にわたって、「研究史上の空白」と「政策的対処の空白」という形で、二重の意味 で放置されてきたカネミ油症問題についての本格的な実証研究であることである。カネミ 油症問題は、被害規模の大きさと被害の深刻さにもかかわらず、これまでの研究史におい て空白であったところであるが、本研究は、先例のない本格的な社会学的調査にもとづい て事実経過を解明し、その空白を埋めたという積極的な意義を有している。 第二に、本論文は、カネミ油症問題という未解明で複雑な問題を、複数の理論的視点を
組み合わせることによって解明しようと試みている。本論文の理論的視座は、環境社会学 における被害構造論を主要な理論的関心として継承するものであるが、同時に、生活史に ついての質的データ分析や、政策過程についての「組織の戦略分析」を継承している。複 数の理論的視点を総合的に駆使することによって、二重の放置が生み出された複雑な社会 過程を理論的に解明している 第三に、本論文は、これまで専門用語としての厳密さを備えていなかった「食品公害」
という言葉を再検討し、「食品公害」概念の学術定義の必要性と、政策論における必要性 を提起するという課題に取り組むものである。この挑戦的な課題設定は、本研究の深化の 過程で析出されてきたものであり、公害問題研究に新しい領域を切り開いている。 第四に、本論文は、カネミ油症という代表的な食品公害問題に加えて、もう一つの食品 公害問題としての森永ヒ素ミルク事件を副次的な事例として検討している。両者の対処過 程と救済策の相違を比較検討することを通して、食品公害に対するより的確な対処につい ての政策提言を行うことを志向しており、政策過程の詳細な分析を通しての政策提言とい うアプローチで、社会学に立脚した政策科学的研究の一つの可能性を追求している。 2.本論文の構成と内容
(本論文の構成) 本論文は、「食品公害」と称される代表的事例であるカネミ油症事件を研究対象として、 次のように三部から構成される。第Ⅰ部では、本事例にかかわる先行研究と基本的知見、 用語の基礎概念を整理し、本研究の分析視点等を提示する。次に第Ⅱ部では、本事例にお ける問題発生から一定の決着まで、この間の歴史的経過を三期に分けて分析する。第Ⅲ部 では、問題被害とその補償の実態を解明し、政策過程の要因と問題点を析出して、その考 察結果をふまえて政策提言を取りまとめている。 論文は、以下の目次に示すとおり、本文10 章および序論と結論から構成される。
( 論文 目次 ) 序論 1
1 問題の所在 2 本論の構成 3 調査の概要 第I部 本研究の視点と事例の基礎的知識
第1 章 食品公害問題の分析視点――公害・化学物質汚染問題の分析視点より 9 1 食品公害研究の意義と欠落 9 2 従来の政策過程の分析視点 13 3 従来の被害の分析視点 17 4 食品公害問題の研究課題としての位置づけ 22 第 2 章 食品公害という問題認識の必要性 24
1 「食品公害」の用語史 24 2 食品公害をめぐる2 つの立場 26 3 油症の政策課題としての位置づけ 28 4 油症への政策的対処とその問題点 33 5 「食品公害」の社会問題としての位置づけ 37 第 3 章 油症をめぐる医学的・化学的知見の整理 40
1 病因物質と混入経路 40 2 油症の認定 49 3 診断基準外の油症被害 55 4 治療法研究の到達点 57 5 小括 58 第II部 油症問題の歴史
第4 章 なぜ油症が起きたのか――第1 期:事件発生の前提条件(1881-1968) 59 1 ダーク油事件から油症の被害発覚まで 59 2 行政組織の取り組みにおける問題点 66 3 広義の前提条件――食品の産業化と工業製品化 69
4 油症事件が起こるべく整えられた諸条件 74 5 小括 77 第 5 章 なぜ被害者は訴訟を取り下げたか――第2 期:裁判闘争(1968-1987) 78 1 政府、自治体、企業の動き 78 2 被害者の動き 84 3 訴訟の経過 95 4 政策過程と被害 104 第 6 章 なぜ被害者は沈黙したか――第3 期:特例法成立期(1987-2007) 110
1 問題の位置づけと分析概念 110 2 仮払金返還問題の発生から特例法成立まで 113 3 仮払金返還問題をめぐる「状況の定義」 118 4 仮払金返還問題の決着過程の示唆 122 第III部 被害と政策過程に関する考察
第7 章 救われる被害、救われない被害――森永ヒ素ミルク事件との比較 126 1 森永ヒ素ミルク中毒の補償制度 126 2 現在の補償制度ができるまで 129 3 油症事件との共通点と差異 131 4 食品公害被害に対する現行制度および政策の限界 138 5 小括 140 第 8 章 2007 年時点からみた油症の被害 142
1 油症被害の社会的特徴 142 2 油症の「病いの経験」 148 3 タブー化と告白 152 4 自分史の再構築――医学的知識や事実をめぐる「誤解」 154 5 分かち合いの困難さ 156 6 小括 158 第 9 章 油症「認定制度」の特異性と欠陥 160
1 承認の形式への着目 160 2 油症被害の「認定」と「補償」の現状 163
3 「認定制度」と「補償制度」を支える構造的要因 166 4 被害に対する<法的承認>の必要性 170 第 10 章 食品公害の被害軽減政策の提言 172 1 被害を深刻化させた要因 172 2 看過の政策過程における「合理性」 178 3 食品公害被害を軽減するための政策提言 182 結論 196 参考文献 198
謝辞
付属資料1 本論文と既発表論文の対応 214 付属資料2 調査対象一覧 付属資料3 写真資料 付属資料4 カネミ油症問題年表(1881-2010) 以下の画像は論文と直接関係がありません。
カネカ高砂事業所
PCB汚泥盛立地
北九州市より
大阪
長崎県
山口県
|
全体表示
[ リスト ]





カネカ・カネミ油症は、1年間に限っても約1万4千人が健康被害を届け出た。ひどい吹き出物や全身疾患で多くの被害者がもがき苦しみ、亡くなっていった。
被害は甚大で、治療法はまだない。有害化学物質を経口摂取していない次世代(被害者の子や孫ら)の健康被害も懸念されている。そしてカネミ倉庫は、事件の責任を果たすべき立場にある。
加藤三之輔先代社長は2006年に死去。「おやじはもっと早く収束すると思っていただろうなと思う。原因が解明されて治療薬もできて、患者さんが健康を取り戻してくれてと。その見込みが甘かったんでしょうね」
現在、政府米の保管料など国の支援も受けながら認定患者の医療費や見舞金などを支払っているカネミ倉庫。だが経営は厳しいという。
株式会社カネカは被害者が求める協議にも応じていないが、同社の救済の枠組みへの参加が被害者支援の拡充に不可欠と考える。
「うちの企業体だけではどうしようもないところまで来ている。カネカは法的に無責と言うが、自分たちが作った物で被害者が出ているんだから責任がゼロってことはあり得ない」。加藤カネミ倉庫社長は再び語気を強めた。
2018/8/12(日) 午前 7:22 [ 環境汚染・違法行為情報交換会 ]
米ぬか油にPCB(ポリ塩化ビフェニール)が混入した国内最大の食品公害「カネミ油症」の発覚から50年となる10月を前に、長崎ブリックホール(長崎市茂里町)で2日から、写真展「油症事件とPCB汚染を考える」(実行委主催)が開かれる。15日までで入場無料。【浅野翔太郎】
油症発覚8年後に写真集「カネミ油症−河野裕昭写真報告」を出版した横浜市の写真家、河野裕昭さん(67)が、未公開作品含む写真54点を出品する。
2018/9/13(木) 午前 7:13 [ 大地の清潔を守れ ]
(本論文の意義)
本論文は、その課題設定と研究遂行の仕方において、以下のような積極的意義を有する。
第一に、その被害の広がり等から非常に重要な社会問題であるにもかかわらず、これまで長期にわたって、「研究史上の空白」と「政策的対処の空白」という形で、二重の意味放置されてきたカネミ油症問題についての本格的な実証研究であることである。
カネミ油症問題は、被害規模の大きさと被害の深刻さにもかかわらず、これまでの研究史におい空白であったところであるが、本研究は、先例のない本格的な社会学的調査にもとづいて事実経過を解明し、その空白を埋めたという積極的な意義を有している。
第二に、本論文は、カネミ油症問題という未解明で複雑な問題を、複数の理論的視点を組み合わせることによって解明しようと試みている。本論文の理論的視座は、環境社会学における被害構造論を主要な理論的関心として継承するものであるが、同時に、生活史についての質的データ分析や、政策過程についての「組織の戦略分析」を継承している。
2018/10/11(木) 午前 6:24 [ 環境汚染・違法行為情報交換会 ]
Q111 PCBが漏洩してPCBが付着したがれき類が発生したが、PCB廃棄物となる基準はあるのか?
A111
PCB廃棄物のうちPCB汚染物としては、「がれき類のうちPCBが付着したもの」等が定められていますが、付着の程度について判定する基準(いわゆる「入口基準」)及び測定方法は定められておりません。そのため、大阪府では、「PCBが付着したおそれのあるものについては全てPCB汚染物となる」との運用をしております。
2018/11/23(金) 午後 0:19 [ 万博に向け不法投棄撲滅 ]
カネミ油症に関し宇田教授に聞く
――油症発覚から50年。国の対応をどう見るか。
場当たり的な対処の積み重ねが制度のようになってしまい、その制度が破綻(はたん)しているのに、放置され続けてきた。被害者の要求は顧みられず、問題は解決されずにいる。
――破綻した制度とは。
一つは患者の認定のあり方だ。発覚当時の厚生省職員によると、診断基準は当初、患者が自分が油症だと気付く目安となる「おたずねポスター」の役割でつくられた。
限られた症状にもかかわらず、それが患者の認定、棄却を振り分ける基準に使われるようになった。国は患者を一元的に判断する認定機関を設ける方針も示したが、既にあった(九州大の医師を中心とした)油症研究班に任せたまま、今に至っている。
2018/12/2(日) 午前 10:31 [ 弱く正しい者の刑事裁判 ]
カネミ油症認定に関し宇田教授にきく
――今の認定の問題は。
ダイオキシン類の被害はまだ全容が分かっておらず、国際的な知見を総動員するべきテーマだ。国は患者認定の責任を研究班だけに負わせているが、すべて任せることはできない。医学的な認定から漏れても、状況から明らかに被害者だという人を患者と認める行政認定や司法認定のような制度が必要だ。弁護士らを加えるなどして、事実上、医者だけが認定している状況を止めないといけない。
――現在の事態を招いた原因は。
油症のような食品による大規模な被害に対応する制度がないためだ。食中毒を扱う食品衛生法にはそもそも救済の概念がない。公害には国も関与した認定・補償制度があるが、食品に由来する被害は公害にあたらない。食中毒と公害の制度の空白に落ち込んでいる。
発覚の後、厚生相は「公害に準じた扱い」の必要に言及した。国も普通の食中毒事件の扱いでは不十分との認識があったはずだが、結局、手を打たなかった。
2018/12/2(日) 午前 10:36 [ 違法行為による被害者の会 ]
カネミ油症認定に関し宇田教授にきく
――今の認定の問題は。
ダイオキシン類の被害はまだ全容が分かっておらず、国際的な知見を総動員するべきテーマだ。国は患者認定の責任を研究班だけに負わせているが、すべて任せることはできない。医学的な認定から漏れても、状況から明らかに被害者だという人を患者と認める行政認定や司法認定のような制度が必要だ。弁護士らを加えるなどして、事実上、医者だけが認定している状況を止めないといけない。
――現在の事態を招いた原因は。
油症のような食品による大規模な被害に対応する制度がないためだ。食中毒を扱う食品衛生法にはそもそも救済の概念がない。公害には国も関与した認定・補償制度があるが、食品に由来する被害は公害にあたらない。食中毒と公害の制度の空白に落ち込んでいる。
発覚の後、厚生相は「公害に準じた扱い」の必要に言及した。国も普通の食中毒事件の扱いでは不十分との認識があったはずだが、結局、手を打たなかった。
2018/12/2(日) 午前 10:37 [ 弱く正しい者の刑事裁判 ]