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俺の弁当を盗み食いした奴が頓死した

11/20(月) 12:00配信
BEST TIMES
『江戸の性事情』(ベスト新書)が好評を博す、永井義男氏による寄稿。

 仕事師とは、土木工事に従事する者のことである。 寛政年間の見聞を記した『梅翁随筆』に、つぎのような話が出ている。

 神田に住む仕事師の親方が、多くの手下を従えて現場に出た。
 いざ昼飯を食う段になって、弁当箱がない。誰かがいたずらをして隠したのではないかと思ってさがしたが、見つからない。
 ほかの者はみな弁当に取りかかっているのに、自分だけ弁当がないので、
「ちっ、くそ面白くもねえ。俺は、きょうは仕事は休みだ」
 と言い捨て、近くの知り合いの酒屋にはいって酒を呑み始めた。

 ふと見ると、酒屋のそばの道端に腰をおろして弁当を食べている若い男がいたが、その弁当箱はまさに自分のものである。親方はつかつかとそばに行くや、胸倉をつかんだ。
「てめえ、ふてえ野郎だ。それは俺の弁当箱じゃねえか。盗みやがったな」
 若い男は平身低頭して謝った。
「親に勘当されて、行き先のない者でございます。きのうから何も食べておらず飢えておりましたが、たまたまこの弁当箱が落ちていたので、拾ったのでございます」
 盗んだのは明白だったが、いかにもやつれた様子を見ると、かわいそうになってきた。それに、いまさら、食べかけの弁当を返せともいえない。
「しょうがねえ、その弁当はてめえにくれてやらぁ」

 親方はいまさら仕事に戻る気もしないので、そのまま家に帰った。
「おい、帰ったぜ」
 家にはいろうとすると、内側から戸締りがしてあり、まるで留守のようにシンとしている。

 
 親方が強引に戸をこじ開けてなかにはいると、女房が間男を引き込んでいた。
「てめえ、ふてえ野郎だ」
 逃げようとする間男を親方がつかまえる。そばで女房がおろおろして泣き叫ぶ。
 騒ぎを聞きつけ、近所の人が集まってきた。

 そのとき、さきほどの酒屋の奉公人が駆けつけてきた。
「親方、すぐに来てください」
「こちらは見ての通り取り込み中だ。いったい、何の用だ」
「さっき弁当を食っていた男が頓死しました。このままでは済まされないので、お役人に届け出なければなりません。親方は弁当箱の持ち主ですから、いちおう来て、口を合わせてください」
 こちらでは間男、あちらでは死人であり、親方は呆然となった。

 女房が弁当に毒を仕込んでいたのか、飢えていたところに急に食べたので死んでしまったのか、また間男と女房はどうなったのか、そのあたりははっきりしない。
 ともあれ、親方は運がよかったといえるであろうが、無関係な男が犠牲になっているだけに、寝覚めは悪かったであろう。
文/永井 義男

転載元転載元: nk8**6eのブログ

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