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8時5分、 ギーときしむ音を発てて電車が止まる。 ローカル鉄道の無人駅が朝と夕方だけホームに人が並ぶ。 「いた!」 少しうつむきかげんに電車に乗り込む、視線ははっきりと捉えている。 向かい側のドアに電車の進行方向に向かって身体をもたれかけているあの人。 <いつからだろう?あの人の姿を気にし始めたのは・・ ・・あのことは私の思い違いだったのかも?> 由美はスーツで小奇麗に身を固めているいかにも新入社員といった感じの青年を意識していた。 青年のいるドアとは反対側の長椅子に座る。 距離7メートル 遠すぎない!近すぎない! 青年の顔がドアの窓の外に向いたとき、由美は素早く、一生懸命に彼を見つめた。 由美は心に青年の顔をやきつけようとするのだが、 後で思い出そうとしても、いつももやっとしたイメージしか浮かばない。 「あ!!」 ほわ〜っと由美の髪が、あわてて電車の進行方向に顔をそらした由美の肩に 遅れてかかる。 <どうしよう!彼は見られたことに気づいたのかしら?> ゆっくりと顔をもどす。 青年と目が合った、 コックリとうなづくような彼の仕草。 由美は右を見て、左を見て、後ろを見た、 後ろには流れる稲穂の景色にガラスに写った青年が飛んでいた。 |
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