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緑に覆われた道が山間を縫って続いている。 快適に一台のオートバイが走り抜ける、隆夫は今オートバイと一体となって 風のように道を吹き抜けていた。 ・・俺には、宇宙を飛ぶことより、このほうが合っている すごい体験だったが、俺の脳みそにはキャパシティを超えた世界だ こうして、新しいオートバイも買えた・・ 宇宙人達は、隆夫の願をかなえた。 オートバイを買う位の金塊を創り出すことなど彼らにとっては造作もないこと。 隆夫の妻は新しいオートバイをみても、それがどんなにかすごいマシンであるか すこしも、気がつかなかった。 「ずいぶんと、修理に時間がかかったのね、なんかすこし、前とかたちが違うみたい 故障して、ゆがんだのねきっと」 妻のマシンに対する関心のなさには、あきれるが、これでいいのかもしれない。 隆夫が一体化したオートバイが山道を走り去る、かなり後をもう一台のオートバイが、 続いていた。 「ちくしょう、海の中なら こんなに離されることはないんだがなー」 くやしがっているのに、無表情なイルカ男である。 深い緑が二台のマシンを飲み込んでいった。 |
SF はるかなる宙に
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隆夫の目の前に巨大な目があった。 隆夫の頭に直に声が届いた。 ・・驚かせてすまない、君が見詰めているのが私ナビゲイション生物のムーです・・ 液体の中で、神経らしきものに囲まれてムーが揺れていた。 「こりゃー驚いた、そのでっかい目で宇宙を見ているのか」 隆夫の二倍くらいある大きさであった。 ・・正確に言うと、この体のほとんどは脳で、形体が君の目に似ているにすぎない・・ ・・この宇宙船は鉱物生物ゴアで出来てる・・ 挨拶をするように船内の壁がオレンジ色に点滅した。 ・・そして船内に張り巡らされている神経網は触覚生物トロン・・ 床から、触覚がのび隆夫の体を包むと隆夫の頭に先端が張りついた。 「うわ、な、なんだ」 ・・だいじょうぶ、心配ない、君は今、我々と一体化した・・ ・・怖がらずに心を開いてみて」・・ 隆夫、恐る恐る警戒をとく。 「見える、星が、銀河が、重力に歪んだ空間の悲鳴が聞こえる」 隆夫は宇宙をじかに見ていた、宇宙の冷たさと熱さを感じていた。 「おう、地球が青く輝いている」 「感じるぞ、口を広げろ、惑星を飲み込むまで広げろ、思いきり星間物質を吸収しろ」 「イオン化して噴出しろ、もっと早く、モット早く」 ・・見えるか、隆夫、我々の故郷への道筋が・・ 「よくわかる、精密に計算された道筋が」 ・・念じろ隆夫・思いを込めろ・・ ゴアの ムーの トロンの みんなの声が隆夫をはげます。 「わからない、どうすればいいんだ、」 ・・隆夫の一番大切なものを思え、大切なものが、示した道筋の先にあるんだ 思いを込めろ・・思いを込めろ・・ 星が流れていく、宇宙船の前方の空間が歪み始め 影のように、宇宙がすき透ると歪んだ空間に飛び込み消えた。
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「隆夫さん、我々を助けてほしい、あなたの力がなければ我々は故郷の星系に帰れない 失礼とは思うが、いまイルカ男の口を借りてあなたに話しています」 イルカ男、眼は遠くを見つめ硬直している。 「しかし、あれは俺の力ではない、俺は家に帰りたくて、死んだばあちゃんに祈った ばあちゃんは生前、有名な霊媒師だったんだ」 「ばあちゃんが助けてくれたんだ、俺にはそんな力はない」 宇宙人に乗り移られたイルカ男、表情もなく口だけがパクパク動く。 「その事なら大丈夫、君のサイコエネルギーは本物だ、外部から君に挿入された エネルギーではない、おばあさんへの祈りは君の眠っていた能力を 目覚めさせるきっかけにすぎない」 「君の遺伝子にはサイコ力が受け継がれている」 「だが、俺になんかに、宇宙人を助けるなんて大それた事が出来るのか」 「我々が君を導く、我々を信じてほしい」 隆夫、腕組みをして考え込む。 しばらく考えていた隆夫だが、決心がついたらしく、宙を見上げると 「どのくらいの、あいだ地球を離れていなければいけないのだ」 「君たちの時間で二か月位だ」 「片道一か月、帰りは我々の仲間に君を地球まで送り届けさせる」 「わかった、協力しようただし、一つだけ条件がある」 「ありがとう、我々にできることなら君の望みどうりにしよう」 隆夫の頭の上で空間に黒い穴があいた、すぐに隆夫とイルカ男は吸い込まれていく。
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ムーの巨大な脳は再生を終わっていた、一部の意識は失われたものの、 分散した意識の一つでも、残っていれば元に戻ることは、容易であった。 その巨大な脳にトロンの叫びが入ってきた。 「トロン どうした、なにがあった」 「飛んで、出て行った、ゴアの体に穴をあけ」 「あの個体は信じられないサイコエネルギーを使ったんだ」 ムーはけげんな思いがした。 「おまえは、サイコ能力を感知しなかったのではないのか」 「そうだ、確かになかった、調べた時には」 「つかえる、あの個体は我々を、救ってくれます」 トロンの驚きの感情の後に、喜びの温かい気持ちが全員に伝わってきた。 ・・・ 子供の寝顔を見ながら隆夫は戻れた実感を確認していた。 妻には、オートバイが山道で故障して押してきたため、遅くなったと話したが 「へんね、あなたの整備は完璧なのに壊れるなんて」 隆夫の自尊心は傷ついたが、事実を妻に話したとしても、しんじてはもらえまい と考えていた。 「あなた、疲れているんだから、はやくねなさいよ」 「ああ、わかった」 ・しかし、オートバイをなくした事は妻にどう説明しょうか・ 翌日、隆夫の所に見知らぬ男が訪ねてきた。 「はじめまして、ではなく、また会えて嬉しいです」 「すみません、以前お会いしてますか」 「ええ、白い部屋でいっしよに遊びました」 「はて、おっしゃってることが分からないのですが」 隆夫、いやな予感がしてきた。 「私は、イルカです」 「うわ、そうきたか」 「進化促進をされ、このような不便なからだになりました」 「海の中をゆうゆうと泳げなくなり、あなたがたのように二本脚で歩かなければなりません」 隆夫、すこし、ムッとし 「その不便な人間になんのようだ」 「私ではなく、宙に居る宇宙人たちがあなたに、助けを求めています」 よく見ると、この男、のっぺり顔で魚顔だ。 「なんで、宇宙人ではなく、おまえが来た、人に頼みごとをするのに 代理人をよこすのは失礼じゃないか」 「それは、彼らがあまりにも、地球上の生物と形状が異なるため あなたに、その、嫌われたくなかったのです」 ・なんと都合のよい、必要ならまたさらえばいいのに・ 隆夫の思いを読むようにイルカ男話を続ける。 「彼らは、あなたの助けを必要としてます、無理じいでは協力をえられないので」 ・そうだ、さらわれたら、絶対に協力なんてしない・ 「俺に何が出来るんだ、宇宙人を助けるなんて大それたこと、 俺はただの人間だ」 イルカ男、瞳のない目を隆夫にじっと向け。 「あなたは、自分の力で宇宙船から脱出した、強力なサイコエネルギーを使って」 「あれは、俺の力ではない、あれは」 隆夫の困惑した言葉がイルカ男と宙にいる宇宙人達に響いていた。
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「このイルカと呼ばれる生物はどうなんだ」 ムーの催促にトロンが分析結果を報告する。 「イルカの能力はあまりにも幼稚すぎて、我々の役には立ちそうにありません」 「進化促進酵素をつかったらどうだ」 「効果はないようです」 「そうか、この惑星で見つけるのはあきらめよう」 「あの、2つの個体は元に戻そうと思うがみんなはどうか」 全員から、落胆の気持ちと賛同の気持ちがトロンをとうして、 ムーに伝わってきた。 ・・・ 隆夫は、すっかり、イルカと打ち解けていた。 「なあー、おまえも俺も囚われの身だ、このままどうなるのかな」 イルカの頭をなでながら、隆夫は家族のことを考えはじめた。 「ちくしょう、こんなとこに閉じ込めやがって、俺は死なんぞ、 絶対に逃げてやる、ばあちゃん俺に手を貸してくれ」 隆夫、壁に両手をつけ祈るように額もつけた。 ・・・ 「うお ! なんだ、体に穴が開いていく」 ゴアの悲鳴に似た声があがった。 「上がっていく、上がっていく」 トロンの叫びはムーの液体に包まれた眼球状の巨大な脳を震わせていた。
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