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縄目国の侍に護衛された桐の姫を乗せた輿は、峠を下り里の道を進んでいた。
輿の中から国境の山を見上げている姫、その姫の瞳に黒い雲が横切る、 ”まてい ” 輿の行列の前を遮り、空から黒い塊が降りてきた。 高下駄をはいた山伏ふうの男が、両手を広げ仁王立ちしている、 長い鼻の赤い恐ろしげの顔、天狗である。 「そなた達、わしが国の姫をわしに無断で連れだすとはなにごと、 姫はわしの所に連れ帰る、このことに不満あらばわしのところにこい わが国の民に仕返しあらば、わが神通力をもって縄目国滅ぼしてくれん」 恐ろしき形相で天狗は行列を睨みまわし、姫の輿に近ずく。 「桐の姫、飛鳥殿が迎えにくる、さあ、いっしょに帰りましょう」 「そなたはあの時の天狗、飛鳥様が来るのか、でも桐の が帰ったら・・」 「後のことは心配ない、全てまかせよ」 再び空よりバタバタと轟音がすると、袋を鷲の羽のように広げた飛鳥が降りてくる、 「姫、迎えにきた共に国に帰るぞ」 驚きでまだうれしさも表せない姫を、天狗抱きかかえるといちじんの風とともに 空に飛び立っていった、飛鳥も後に続く。 縄目国の侍たち、あっけにとられ、おろおろしているばかりであった。 ・・・・・・・・ 飛鳥の館静かにではなく、久々騒がしく、桐の姫いそがしくあちこち動きまわっている。 そんな姫の姿をやさしく目で追いながら、飛鳥は考えていた、 ・・縄目国の中で、縄目国の侍が護衛していたのだから、桐の姫を連れさらわれた 全ての責任は縄目国側にある、この国に害及ぶことはない、まして 天狗のだめ押しの言葉もある。・・ 「ねえ、ねえ 来様 見て、見て〜」 いつのまにか、短めのナース服に着替えている姫 「この服作ってみたの、来様好きでしょう」 ぎこちないポーズを色々と取る姫 「姫、この場はその様な服を着るものではない」 「だって〜、来様にかわいがってもらいたいんだもん」 急に姫涙目になると 「天狗にさらわれた桐の姫のうわさは、すでに近隣諸国に知れ渡り もう姫はどこにも嫁にいけなくなったの、 来様に責任をとってもらわねば、姫は一人身で寂しく歳を重ねることになるわ」 ・・確かにそうかもしれない今回の事の始末の責任は、この飛鳥にある あの時、山に行き天狗に事の次第を話し助けてもらった、 無事に姫は戻れたが姫のこれからの事は責任をもたねばなるまい・・ 「桐の姫のこと、飛鳥が考えておくから心配するな」 途端に元気になる姫 「うれしい、来様に桐のをもらってもらえるのね」 姫、飛鳥に近づくと胸のなかにもたれかかり、すんなりと伸びた白い足が 飛鳥の気持ちを高鳴らせる 「ならばはよう、桐のを安心させておくれ」 胸の中にいる姫から桃の香がしてくる うっとりとしている飛鳥を見極めると姫はその手を取り 「桐のを寝所につれていって」 姫の言葉とは逆に、ルンルンと飛鳥を引っ張っていく 飛鳥、困った顔をしているが、足取りは軽い。 寝所に消えていく二人、こんどこそ姫の思いとげられるのか。 夜はこれから始まるとこである。 *** 完 *** |
幻想たのまれやあやし
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雲一つなく空はどこまでも青く晴れ渡っている。 ・・姫の輿はいまごろ峠の国境に着くころか・・ 飛鳥、桃の木を部屋から横になって眺めながらぼんやりと考えていた。 国境では縄目国の向えの者に、姫の乗った輿が預けられる、国境を超えれば そうなれば桐の姫は縄目国の人となり、姫に対するこの国の責任はなくなる。 そう姫になにが起ころうと・・・ 飛鳥、突然立ち上がると館の裏に向かう、 館の裏は草木が刈られかなりの広さに整備されている、 籠の様な物を背負い、大きな袋を引きずり飛鳥が広場の端に立っている 飛鳥決心したように空を見上げると、 ”バリバリ”と凄まじい轟音、飛鳥が走りだすと羽根を広げた鷲のように袋は 風をはらみ、そしてフワリと飛鳥の体が浮く。 飛鳥の体は空を飛ぶと山に向かいどんどんと小さく見えていく。 しかしそちらは、姫が越えた国境とは逆の方向である。 飛鳥、なにを思ったのか、桐の姫を忘れる旅にでたのか。
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鴉丸、ぼそぼそと事の次第を話し始めた。 「しばらく前の事、隣国の縄目国より我が国に、桐の姫を嫁に欲しいとの申し入れがあり、 飛鳥殿も承知のこととおもうが、縄目国は強大で侵略されたなら我が国などひとたまりもござらぬ。 桐の姫の気持ちは殿も十分承知のうえで、この話断ることができなかった。 姫も我が国の事情はとくと承知していて、けなげにも嫁に行くことを承諾なさいました」 「桐の姫様は、それいらい部屋に閉じこもり嫁ぐ日まで、飛鳥殿に会わずにいることを 決心なさいました」 鴉丸、声を詰まらせながら 「それゆえ、飛鳥殿にも姫様のお心をさっしこのままそっと別れていただきたい」 飛鳥の心が砕けていく、桐の姫のけなげな気持ちに胸がしめつけられる。 「わかりました、そのとうりにいたしましょう」 「かたじけない、拙者これにて、おいとまいたしますが、桐の姫さまにことづけなどありましたら お伝え申す」 飛鳥、なにか言おうとしたが姫の心を惑わすことになると思い 「いや、とくにない」 「では、さらばでござる」 飛鳥、力なく部屋に戻るとぼんやり庭を見つめている。 草樹の配置を計算された手入れのいきとどいた庭の真ん中に 一本だけ庭の調和を乱す不似合いな桃の木が植えられている。 「姫は良い香りがする、桃の花のような」 一度、桐の姫に思わず言ったことがあった 数日後、姫は植木職人を連れて、配置に首をひねる職人をしったし、強引に桃の木を植えさせた。 「桐の はいつでも居るから、さびしくなったらここに来て」 風に木の葉がそよぎ、はしゃぎまわる姫の揺れる黒髪を思い起こさせる。 飛鳥の腕が、手が、姫の温かくやわらかな体を覚えている。 飛鳥の胸のなかでせいいっぱい、似合わぬ色気を出そうとしていた姫。 ・・・違う時の世界に生まれた二人は、添い遂げられぬよう時の神が決めたのか・・・ しばらく後、城の館より使いの者が飛鳥の館にきた。 桐の姫が婚礼のため旅発つ日取りと、姫からの文を持って、 飛鳥、文を開くと、添えられた桃の花がひらりと舞い落ちる。 < 恋する思いを露となし・花に乗せて届けども・朝には消えし寂しさは・ せめて届よ花の香よ > つたない詩だが、姫の心が飛鳥の心をキュンとさせ温かいものがほほを流れ落ちた。
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竹藪の奥、雀のさえずりに囲まれて飛鳥の館が騒々しく、 ではなく、静かにたたずんでいる。 あれほど頻繁に館を訪れていた桐の姫が、ここしばらく来なくなった。 飛鳥、さすがに心配になり、病で寝込んでいるのではないかと 使いの者を出し様子を聞かせたが、桐の姫は部屋に閉じこもってはいるが病ではないとのこと それ以上の事は要領をえぬ返答ばかり。 なにがあったのかと、飛鳥の不安は増すばかりであった。 もともとは静かな館が元に戻っただけのこと、しかし、桐の姫が来ない飛鳥の館は 火の消えた釜戸のごとくにさびしいものになった。 なにをするでなく、ただぼんやりと日々をすごす飛鳥だった。 「ごめん、飛鳥殿 ご在宅か」 「おう、からすか、桐の姫は来ていないぞ、探しても無駄だ」 「いや、その、桐の姫様のことで、今日は飛鳥殿に是非に聞き届けてもらいたい事があり 伺い申した」 いきなり、鴉丸、飛鳥につめよると、飛びかかるほどの勢いをもって話はじめた。 「姫の事、全てなかったものと忘れていただきたい」 飛鳥、いきなりの申し出に驚き 「なにがあったのだ、からす、姫に好きな男でもできたのか」 「めっそうもござらぬ、姫様は飛鳥殿の事忘れようと部屋に閉じこもり、それはもうけなげで」 「なぜ、忘れなければならぬ、私も、姫も」 「それが、その・・」 鴉丸、いつもの強気が薄れ口ごもるばかり、 飛鳥の館に冷たい風が吹きこんできた。
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飛鳥の館からは、雀のさえずりにまけじとばかりに桐の姫の声が響き渡っていた。 「わあきれい !ねえ、ねえ来様ったら、この透き通った箱はなにに使うの」 「ほれ、その蓋を開けてごらん」 姫、そおっと蓋を開く、中から琴の音に似た調べが聞こえてきた。 「素敵な音うっとりするわ、あらこれは」 箱から姫が取り出したのは宝石の付いたネックレスである。 「それは、首にかけて胸元を飾るものだ」 姫、手に取り頭からとうして着けようとしたが出来ずに、 「あ〜ん、つけ方がわからない、来様 つけて、つけて」 姫、長い黒髪を手でかきあげると白いうなじが悩ましく表れる、 飛鳥、ネックレスを両手で広げ 桐の姫 の首に腕を回すと、すかさずに 「あっ”来様ったら、姫の魅力にがまんできないのね、いいのよ好きにして!」 やはり、そうきたか 飛鳥、姫を抱く様な形になると、姫はそうそうに体を密着させてくる。 「姫、つけ難くなるのでクネクネ動くでない」 甘えた声で、 「だって〜、来様に姫を感じてもらいたいんだもん」 かわいく、舌をちょこっとだす。 「さあ、ついたぞ、そこの姿見でみてごらん」 桐の姫、鏡の前で近づいたり離れたりしてネックレスと自分を見比べていた。 少々うるさい娘だが、なかなか可愛いものだな、などと思い姫を見つめる飛鳥。 「姫、スカートとブラウスという女の身につける服も持ってきた、きてみるか」 「飛鳥の国の娘が着てるものか、着たい、着たい」 姫、さっそくスルスルと自ら帯を解くと、 「さあ、来様の望むままにこの着物脱がせていいの、裾からいく、それとも胸元からかしら 来様が好きな声は、ああ〜ん かな いや〜ん かな、姫どきどきするの」 飛鳥無視して、 「姫、着替え方はそこに控えている侍女達にすでに教えてあるから」 「ささ、桐の姫様こちらへまいりましょう」 侍女達 姫の手を取るとズルズルと隣の部屋に引っ張っていく。 「だめ〜! 姫は来様の手で着替えるのじゃ、おまえたち邪魔するでない」 3人がかりで連れて行かれれば、いかにじゃじゃ馬な姫とて逆らうことはならなかった。 騒々しく着替えが終わると、侍女達が飛鳥の前に出てくる、意味ありげな顔をして 「とても、姫様はよくお似合いですよ、飛鳥様も惚れ直すのでは、さあ、姫様」 桐の姫、すこし恥ずかしそうに出てくる、姫の姿を見ると飛鳥しばし呆然と見とれる。 ・・これほど似合うとは・・ 長い髪は後ろにポニーテール風に束ねられ、着物で絞めつけられていた胸は 解放された喜びで若さを主張している、 スカートから伸びやかにでた足は、色こそ白いが 乗馬もこなす活発さに鍛えられすんなりと発育している、 腰もくびれスタイルはグラビアアイドルも真っ青というところだ。 「恥ずかしい、でもうれしいの、来様にそんなに見つめられるなんて、来様ったら 姫を目で犯してるのね、いいわ、どうこの姿態は」 桐の姫、飛鳥の前で色々なポーズをとる。 この時代には考えられぬ洋服だから出来るポーズである、 ・・やはり、そうか、俺の書庫にあるグラビア写真集を見てるな・・ 姫、飛鳥に近づくと 「来様にもらった香水も胸元につけてみたの、この香り来様に気にいってもらえるかしら」 姫、いきなり飛鳥の胸のなかにとび込むと腕を飛鳥の首にまわし妖艶な顔を見せながら 「桐の とても幸せなの」 飛鳥、ほんのりと香る良い匂いと密着してくる姫の温かくやわらかな体の感触に 理性のたがが外れていく。 飛鳥、姫にかけた指先に力がはいる、精一杯妖艶さをかもしだしている姫の 可愛らしい唇をじっと見つめるとだんだんと・・ 「飛鳥様、今日はこれにて、姫様共々おいとまさせていただきます、姫様帰りますぞ」 「もうすこしのところなのに、姫は帰らぬぞ、今宵こそ来様と思いを遂げるのじゃ」 またもや、3人の侍女達に腕をつかまれるとズルズルと飛鳥から引き離されていく。 「だめよ〜、来様、さきほどの姫の姿を胸にやきつけて〜、今宵はそれでがまんをしてね」 「ああ〜ん、姫はいじけるぞよ」 だんだんとうざかる姫の言葉 今宵のみの別れではなくなる事にまだ誰もきずいていなかった。
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