絹子の創作物語

事実を参考にした創作です

SF みずも

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みずも 5

 生命活動が低下している。

この小さな柔らかい物、そう、早紀を死なせるわけにはいかない。

 ”” 死 ””

やすらぎ、恐れ、暗黒

なん万回二つの太陽が天空を回っただろう。

そんな概念はなかった、

変化のない世界でたいくつな情報しか手にはいらなかった。

このちいさな早紀はなんと沢山の情報をもっているのか、かなり危険な情報だが。

感情という情報は深刻な困惑をもたらしている。

急がなくては活性酵素を注入、微小震動エネルギーで温める、次には・・

・・

 青いまとまりのない影が、次第に形をなしてくる。

早紀の瞳に男の顔が写った。

どこか見覚えのある顔、若い、青年のようだ。

早紀の体を記憶がゆっくりと満たしていく。

「私、生きてるのね」

上半身を起こすと周りを見渡す、青々とした湖面が足元に広がっている。

「あなたは ! 」

「命を続けた、早紀、ここに運んだ」

抑揚のない話し方青年の顔に表情が感じられない。

早紀の横でカプセルが銀色に輝いていた。

「よかった、カプセルも無事みたい、」

・・

カプセルには人類の歴史、科学技術、医療、生命、社会・・・・

過去の全てがデータとして入っていた。

一から人類の歴史をやり直さないように。

・・

「あなたはこの惑星の人、他の人は・・どうして私の名前を」

「早紀の情報全て吸収した、一人で太陽と星をみてきたずっとずっと昔から」

早紀は空を仰いだ、二つのちいさな太陽がかがやいている。

「助けてくれてありがとう、あの〜、なんて呼んだらいいのかしら、名前はあるの」

「”みずも”、”みずも”」

瞬間情報を検索した。

今、人に似せて体を固定化しているが、水の中にいた姿は早紀の目からどのように見えるか、

水中に漂うゲル状の体は、”藻”

ゆらゆらとあてもなく、ゆうきゅうの時を漂う“ 藻 ”だ。

「おかしな名前ね、あっ、ごめんなさい、地球の感覚で判断して、私ってあわてんぼうだから」

「おかしな、おかしい」

おかしい時はどうするか人の情報を探った。

「はははっはは」

感情のない奇妙な笑い声

早紀、つられてかすかにほほ笑んだ。

早紀を見つめていた みずも の体が温まって来る。

立ち上がるとゆっくりと自分の体を確かめながら水辺に歩いて行く早紀。

水面が二つの太陽の光を反射して早紀を輝かせる。

・早紀の笑顔を守っていこう、これからずっと・

みずも は思った、この不思議な気持ちはなんだろう、


  ”” 愛  ””


水面に二つの姿がゆれていた。


   *** おわり ***


みずも 4

 「こわいの、とても」

春海の肩を抱き寄せるとかすかに震えが早紀に伝わってきた、気持ちは早紀も同じだ。

ルームにはモーツアルトの音楽が流れている、ゆったりとしたソファーに座り

少女達はそれぞれの思いで待機していた。

第三ステージは宇宙に飛び出す前の最後のステップである。

コールドスリープに入るための控えのステージだ。

「ううん、スリープに入るのが怖いのじゃないの、目が覚めた時の事を考えると怖いの」

早紀は春海の長い髪を静かになでていた。

「目を開けたらどんな世界が見えるのか、一人ぼっちで生きていくなんて」

春海の瞳の奥に不安と脅えが見える。

「私、目が覚めないでほしいと願っているの、恒星に突入でも惑星の大気圏でもいいわ、

 そこで燃え尽きてしまいたい」

カプセルは惑星に着陸すると人間が生存可能か調査し、可能ならコールドスリープを解凍する、

適さない条件なら静かな死をあたえる。

人類が少女達にあたえる最後の思いやりだった。

「私も同じ気持ちよ」

不安を共有するかのように二人は、ほほを寄せ合い巨大なモニターを見つめた。

またたかない星の海の中に、早紀達1000個のカプセルが向う星が小さく光っていた。




 

みずも 3

 やわらかな物から情報を吸いだしていく。

新しい情報に飢えていた、どのくらいの時を退屈に過ごしてきた事か、

やわらかな小さな物からは今まで味わった事のない情報が大量に入って来る。

時系列を追わずに消化していく。

不思議な情報を飲んだ。

感情というらしい、じわじわと心地よく広がり満たされていく。

・・

展望室を青い地球が覆っていた。

「こんなきれいな惑星がなくなってしまうなんて」

マザーステイションには1000人の少女が、旅立ちの時を待っていた。

少女達は不安とさびしさでいちように口数がすくなかった。

「悲しい景色ね」

早紀が振り返ると腰まで届く長い黒髪の少女が立っていた。

「私、春海、じゃましてごめんなさい日本の方でしょう」

「早紀です、こんな形で宇宙旅行をすることになるなんて」

笑顔を作ろうとしたが早紀は泣き顔になっていた。

・・

さびしい !

悲しい !

これが感情という情報か

とまどっていた、危険だ、感情という情報は、

しかし未知な危険な情報はうまかった。

みずも 2

 不思議な味のする情報だ。

・・

「おとうさんどうしたの、なんの連絡もなしに家に帰ってるなんてびっくりよ」

NASAで働いてる早紀の父は一年に10日ほどしか日本にいない。

「早紀、聞いてくれ人類は滅びる、地球も月も火星も金星も砕け散る、

 太陽系が滅茶くちゃになる」

無口な父であるじょうだんなど言ったことはない、早紀が物心ついた時には母はいなかった、

男手一つ厳しく育てられた、怖い父である。

「やだ、戦争でも起きるの」

「そのほうが、まだ人類が生き延びる可能性があったかもしれない」

深刻な話が続く、

・太陽系に向かっている隕石群を調べ逆にたどって行くと、

 太陽系に近い宇宙で、二つの恒星系が衝突し、

 恒星が引連れている巨大惑星も破壊され、その破片の大部分が太陽系を直撃する事がわかった。

 隕石群はその前振りにすぎない。

 残された時間は100年、人類を救う宇宙船を作る間はなかった。

 わずかな時間で出来る事は、地球の全ての資源を使い、技術をあつめ、

 地球の周回軌道から一人乗りの小さなカプセルを目標に向け打ち出すことだった。

 周回軌道上のマザーステイション集められた少女は、カプセルでコールドスリープに入り

 戻る事のない旅に出る。

 カプセルには減速用のエンジンとパラシュートがあるだけ、自ら加速するエンジンはついてない。

 姿勢制御のエンジンは付いてる、目的地に向かって細かな軌道修正をするためだ、

 全て自動で行われる、ただし数百年後に間違いなく動作するかはわからなかった。

 地獄に着くか天国に着くか過酷な運命にまかせるしかなかった。
 
 それでも、わずかな生き残るチャンスはある、かよわい少女に人類の最後の希望が託されるのだ。

 カプセルが完成するたびに順次、選ばれた15歳以上の少女が星の海に打ち出されていく。

「早紀、おまえが一回目のエデン計画に選ばれた」

苦悩に満ちた顔の父が早紀の前にあった。





 

 

 

みずも 1

 鋭い衝撃が体を貫いた。

それに接したところが、瞬時に蒸発していく。

初めての痛みだ。

大地からわき出した熱い塊が体を溶かしたことはある。

だがこれは違う。

慎重にそれをなめていく、ブクブクと接したところが泡立ち、ゆっくりとそれは冷えてきた。

滑らかな表面、不思議な味がした。

内部から、規則正しい振動が伝わってくる。

興味をひかれる、なんとか振動元に入りこもうとするが、どこにも穴もとっかかりもない。

どの位の間いじくっていただろう、突然だった。

それは真ん中から割れた。

一気に入り込む、振動元を見つけた。

これだ、内部は複雑に入り組んでいたが熱源があった。

熱源から規則正しい情報が流れていた。

情報の行先はやわらかな物体だ。

やわらかな物を包みこむと侵入できる穴という穴から内部に入り込んだ。

情報が流れ込んでくる。

 おいしい情報だ、いままで味わった事のない。

・・

「早紀、このカプセルが新しい世界に君をつれていく、凍結した精子も積み込んである

 着いた世界が生存可能なら自分の意志で人工授精してくれ、

 人類の再生の一歩がはじまる」

「おとうさん、さようなら、早紀は一人で宇宙を航海してもさびしくはないわ、

 だって、ひと眠りで新しい世界が待っていてくれるんですもの」

「すまない、人類には光速を超える宇宙船も、何億の人間を運べる宇宙船も作れなかった」

 ・・天文学者が太陽系に向かっている巨大隕石群を発見し軌道を計算したところ、

   隕石は太陽系を直撃し地球も火星も衝突によって破壊されることがわかった。

   時間がなかった、残された時間で人類にできたことは小さなカプセルに人間を

   ひとり凍結して乗せ、宇宙の全ての方向に打ち出すことだった。

   100万個のカプセルが太陽系の外をめざし長い旅にでた。

   カプセル全て女性である、男には子供は産めない

   簡単な選択だ。・・


 

 

 

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