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火星の地下深く、閉じられた太古の海にシーラ人の居住区の建設が始まったころ、
巨大な彗星がシーラ星に衝突した。シーラ星の最大の残骸はその公転軌道をさ迷い地球の引力圏に捕えられ、 巨大な衛星、後に月と呼ばれることになる。 地球の環境は激変し、恐竜は絶滅、長い冬の時代がきた。 雪原に銀色の塊が空から次々に降りてくる。 「とうとう来たわ、火星の地下生活からやっと解放されるのね」 「ああ、地球で僕たちの歴史が始まるんだ」 「ねえ、あの人達にも見せてあげたかったなー」 「あの人って伝説の修羅とタケルのことか?」 「なんでも、愛しあうたびに、時空を跳んで行ってしまい、帰るのに いつも苦労をしていたっていう話か」 「そういえば、蘭 おまえには、二人の血が流れているんだったな」 「ふふ、ためしてみる!」 蘭の瞳がなにやら妖艶に輝く。 「いや、まだやめとくよ」 「ばかね、冗談よ!」 ちらっと舌をだした、蘭なのだが、顔は真剣だったような。 冷たい風が雪を吹きあげ二人を隠していく、 手をつないで宇宙船に向かう二人をじっと見つめているふたつの影があった。 * おわり * |
SF 失われた未来
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星の船の展望室から第四惑星をみつめる修羅と武。 「この惑星で私達の未来が始まるのね」 武の肩に頭を寄せる修羅、ほのかに甘い香りがただよっている。 「しかし、酷な現実だな、一万人のシーラ人しか星の船に乗れないなんて」 市長の言葉が武の耳に残っていた。 「残念だが、私達の力ではこれで精いっぱいなのだよ、 シーラ星と共に私達は滅びる、未来は君たちにまかせるよ」 「修羅はタケルの子供を産むわ、たくさん、地球の環境が落ち着いたら 子供達が地球でシーラ人の未来をつなげるのよ」 修羅の瞳が武を妖艶に見つめる。 「まあ、それもいいか」 武は修羅の肩を抱き寄せた。 修羅の甘い香りにクラクラしながら、武の脳裡に疑問が横切る、 「修羅の歳は本当はいくつなんだ、まさかとはおもうが?」 「ねえ、ディスクを作るんでしょ、早く部屋にいきましょ、二人だけになりたいわ」 「そうそう、未来の俺あてのメッセージをつくらなければな」 修羅が武の腕を取ると、二人いそいそと部屋にむかっていった。 |
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武と少女の修羅の前には白くぼやけたトンネルの入口があった。 「これが龍族の虹の通路の入口なのよ、この通路はシーラ星につながっているの、 いつからどうして存在しているのかはわからないけど、龍族がこれを見つけて、 シーラ星にやって来て、わけもなくシーラ人を殺し街を破壊し始めたんです、 この通路をなくさなくてはならないの」 トンネルは光の帯となって空の中に溶け込んでいた。 「これを入口にセットすればシーラ星の出口側の爆弾とリンクしているから、 虹の通路を塞ぐことが出来るわ」 修羅は赤いタマゴじょうのものを入口に取り付けた。 「これでいいわ、さあ、タケル様シーラ星に帰りましょ」 修羅がうれしそうに武の腕のなかに飛び込んできた。 |
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「おじいさん、申し訳ないけど修羅にはやらなければならないことがあるの、 早くに元の世界にかえって虹の道を破壊しなければ」 仙人は長いひげをなでながら、 「そうだなあ、残念じゃがおまえさんの気持ちは変わりそうもないようだな、 だが、今のおまえさん達の力では、元の世界には帰れんぞ、 どこに跳んでいくか分からんからの50億年は遠すぎるからな」 「どうしよう、タケル様が激しすぎてはるかな時空を跳ぶには集中力が続かないの」 恨めしげな瞳で修羅が武を見る。 「そしたら、元の世界に着くまで何度でもトライしてみようか修羅」 武があっけらからんと修羅の肩をたたく。 「武様のばか、そんなに修羅は・・・」 顔を両手で覆う修羅。 「ほっほっ、うらやましいぞ、若い事はいいのう、 わしは、人間の歴史を終わらせようと思ったが、おまえたちに会って考えがかわった、 もう一度始めてみようかのう人間の歴史を」 「おじさん、私達跳んで見るわ」 修羅は大きく深呼吸すると、武を妖艶な瞳でさそう。 「まてまて、わしの気持ちを若がえらせてもらったお返しに、おまえさん達を 目的地まで跳ばしてやる、 その代りといってはなんだが、おまえさんの髪の毛を一本だけもらうぞ」 仙人の手にはいつのまにかに、修羅の長い髪の毛がにぎられていた。 「さあ、いきなさい、おまえ達の未来のために」 仙人の前から二人の姿が消えた。 「さてと始めるか」 仙人の手から修羅の髪の毛がひらりと落ちる、 地面に着く前にフラッシュのように光ると、 少女が立っていた。 修羅だ、いや髪の毛で再生した修羅なのだ。 「おや、成長は少女までか? やはりな!」 なにやら、なっとくした顔でほほ笑むと、仙人はみるみる若返っていく。 新しく誕生したばかりの若い二人、 少女と少年が顔を見合わせると、どちらともなく手をつなぎ時空の穴に向かって 走っていく、その先には青い空と緑の大地が続いていた。
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修羅は座りこみ肩で息をしている。 顔はあからみ、ほんのりと身体は桜色に染まっている。 「まずいな、ひじょうにまずい、どうも女王にかけられたホルモンが抜け切れていなかったらしい」 妄想の余韻を振り払うように、武は周りを見渡した。 荒涼とした世界がひろがっている、輝きのないどんよりとした太陽が、 空一面を覆っていた。 「修羅、ここはどこなんだ、生命を感じられない寂しい惑星だな」 小さく頭を振り髪がまとまりなく揺れる、 「ううん、わからない、心が乱れて、だってタケル様ったらあんなこと・・・」 「いやあれはだな、俺の本性ではなく本能がむき出しになって・・ いやそうではなくて、トカゲのホルモンが俺のホルモンに影響してそのなんだ・・」 「いいの、修羅はうれしいの」 息を乱しながら恥ずかしげに武を見上げる修羅。 突然に二人の前の空間が歪んだ。 「フォッ、フォッ、若い命はいいのう!見ていて眩しいぞ」 仙人が現れた。 足首まで伸びた白い髪、白く長いひげ、ゆったりとした白い衣装、まさに仙人としか見えない。 「おまえさんたちが跳んでくるのが感じられたのでのう、見にきたわい、 それにしても、あぶなっかしい飛行だったのう、 まあ、あの妄想に包まれていてはしかたがないか、お嬢さん!」 修羅、ますます顔を赤くする。 「おじいさん、あなたは?」 「最後の人間、地球にいるたった一人の人間だよ、おまえさんたちより50億年後の 地球の姿だよ、ここは」 「なんてさみしい世界なの」 仙人は修羅の肩に手を添え、立ち上がらせると、 「お嬢さん、わしはあんたを気に入った、どうかなこの世界でわしと一緒にいてくれないか、 望みは全てかなえてあげよう、永遠の命だってあげよう」 あまりにも唐突な申し出に言葉のでない修羅。 どうする武よ! |




