絹子の創作物語

事実を参考にした創作です

怖い話

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まつり かん

 おかみさんも、芳江もそのまわりにいる者全て私を見て笑っていた、
底なしの暗い目をして。

「お客さんには一番おいしい目玉から食べれば」

おかみさんの言葉に続いて芳江が、

「さっきはおいしかったでしょ、あなたのお腹の肉のスライスは!」

私は自分の腹に目をやる、
横一文字に赤く筋がはいり切り口からドクドクと血が流れ落ちる、
テーブルの上には私のふやけた顔が湯気を立てていた。
視界がかすみ、意識がだんだんと遠のいていった。

 フワフワと白い物が揺らいでいる、
肺は水で満たされて、浮力を失いゆっくりと僕は暗い水底に沈んでいく。
悪夢だ!
今までの事は全て悪夢なんだ!
香奈なんていない!
香奈は存在していないんだ!
僕はこうしてたっぷりと青臭い川の水を飲んで・・・
 *小学5年生、夏休みの最後の日に川遊びで溺れて亡くなる*
明日の新聞に載るんだ。
助けにくる香奈なんていないから!
僕は溺れて死ぬ!
死ぬ寸前に見た悪夢だったのかな〜・・・
それとも、この状態の方が夢なのか?
・・どっちでもいいや、どうせもう意識がなくなるんだから・・・・
水底の砂に半分埋もれた骨にまだしがみついている肉片は、
白くふやけてゆらゆらと藻のように少年の動かない足に絡みついていた。
骨と肉片はかっては少女の片腕だった物だ!
ボーリングの穴が崩れたときにまきこまれて落ちて亡くなった少女の。
 

 「いたぞ〜!!」

穴の底から少女が引き上げられる。

「可哀想に!こんな可愛い歳で死んじまって、
 穴の淵がくずれたんだな〜、縄は張って近づかんようになってたんだがな〜」

「お狐様の敷地にボーリングなどするからだ、たたりじゃねえのか?」

遠巻きに見ていた村人の一人がふと口にもらす、

「おかしいな〜?」

穴を調べている消防団がざわついている、
警官が近寄って一人の消防団員にわけを聞くと、

「穴ん中をいくらさがしてもあの子の右腕が見つからねえんだ?
 落っこちた時に石のかどで腕がちぎれたんだと思うんだが、
 どうしてもその腕がないんだ!」

血の気のない白い可愛い顔の少女を見ている警官の耳に、
林の中から響く祭ばやしが聞こえてきた。

 「香奈ちゃんっていったっけこの娘」


   **おわり**


 

まつり なな

 そういえば、起きたてなのに、やけに腹が減っている、
なんとなくメタボな自分のお腹をさすってみる、
ペコリと腹がへこんでいる、そんなに激しい夜だったのか?

「さあ、おいしいお肉よ、あんたどきなさいよ!
  もう食べ終わったんでしょ」

おかみさんがテーブルの真ん中に座っている男にどなると、

「グルル・・・」

男は獣のように唸るとのそりと席を立った。

「お客さん、ここに座って」

私の前に皿にのったステーキが出される、
脂身の多いハムのように薄い肉だが香辛料のいい香りが食欲をそそる。
ナイフですなおに切れ、口に入れると、とろけていく。

「うまい!・・です」

「そうでしょ、とれたてで新鮮さがちがうのよね」

はて?肉はしばらく熟成させた方がうまくなるのだが?

「おかあ〜さん〜蒸し上がったわ〜」

奥から娘の芳江さんの、いや香奈ちゃん、いや香奈ちゃんであるはずはない、
の声が響いた、厨房があるのだろう。

「持ってきなさい〜」

おかみさんは娘に返事をすると、もみてをしながら、

「お待たせ!メインディシュよ」

盆の上に湯気の立つセイロを乗せて芳江さんは私の前でテーブルに置いた、
顔は下を向いたままで、私と目をあわせるのが恥ずかしいのか?
私は確かめるように横から娘の顔をのぞいた。
やはり、香奈ちゃんではない、
そう香奈ちゃんであるはずはない、とうの昔になくなっているんだから。
では昨夜の・・私の身体に乗ってはげしく・・あれは香奈ちゃんだった・・?

「お客さん!あんたがセイロのふたを取るのよ!
 だって、あんたの・・・」

私はまだ熱いセイロの上半分をしずかに持ち上げた。
ポワ〜ッと湯気が巻き上がり、中身が見えてくる。
ふやけきった皮がたるんだ肉を包んでいる、
薄い頭髪がべったりと貼りつき、
黄色く煮えた目が私を睨んでいた。

  !!うう〜わっ〜わ〜!!

椅子ごと後ろに倒れこみ私は言葉にならない叫び声をあげた。

 !!これは!!俺の首だ〜!!



 

まつり ろく

 液体を最後の一滴まで私の口に注ぎ込むと娘の唇が離れていく。
ゆっくりと離れる娘の白い顔に私の目の焦点が合っていく。

「あっ! 香奈!」

失った記憶がフラッシュバックする。

「しぃ〜」

娘は香奈の顔をしている、私の唇に人差し指を押し付けると、

「幹ちゃん、これからすることは誰にも言ってはだめよ!
 いい! 二人だけの ひ! み! つ!
 もっと見ていいのよ」

香奈ちゃんは僕の上に跨ったまま浴衣の裾をゆっくりと左右に広げていく。
僕はようやく首だけを持ち上げて香奈ちゃんの雪のように滑らかで白いふとももから
その先にと視線を伸ばしていく。
やがて香奈ちゃんは僕の上で蛇のようにうねり始めた。

「忘れるのよ! 全部忘れるの! 私のことも!」

パチパチと二つの線香花火が揺れて、揺れながらくっつき
長く閃光を撒き散らしていく、
ひとしきり燃え尽きても、
香奈が僕を解放することはなかった。

 ざわざわと数千の虫が動いてるような音が聞こえる。
重いまぶたを開き、ぐるっと周囲を見渡した、音はこの部屋の隣から漏れてくる。
散らばっている自分の服を着て戸を開ける。

長いテーブルに6人の男や女がとりついてガサガサと食事をしている最中が目に入った。

「あら、うるさかったかしら、ごめんなさいね、
 お腹減ったでしょ、昨夜はお励みだったようだから?」

おかみさんは私をみると意味ありげにニヤリとする。

まつり ご

 香奈の悪戯っぽい目に私は魅入られてしまった。
そのあと、わたしは・・・
記憶が抜けているのだ。
なにがあったのか!
香奈の顔さえ思い出せないのだ。
翌日には香奈に会うこともなく、東京に帰り私の夏休みは終わった。
その年の暮れのことだった、香奈が亡くなったという連絡が父に入り、
あわただしく父は通夜にむかった。
その時でも、私には香奈の顔が浮かばない、
アルバムを開けば、私と香奈が並んで写っている写真があるのだが、
おさげ髪の表情の乏しい香奈がつんとして私の横に立っている。
だが、これは香奈ではない、私の知っている香奈ではないのだ。
では、私の知っている香奈の顔はどんなだったか?・・・
 あっ!しまった!
思いにふけったあいだに娘を見失ってしまった。
あわてて、付近に目をやると、
少し先の大木のかげから白い手が揺れている、
手招きをしていた。
私にきずいていたのか!
気まずい思いがしたが、いい大人が迷子になるよりは、
言い訳はどうにでもなると考え、大木にかけよる、
娘はいなかった、いや、いた!
また先に娘の後ろ姿が見え、娘の進む先にはボ〜と赤い灯が浮かび上がっている。
薄暗い赤い電球の下にのれんが下がっている、
のれんには「食べ物どころ」のくずれた文字が読めた。
ここが娘の家かな・・
突然にガラっとガラス戸が開いた。

「あれ!お客さん、ごめんなさい、もう店じまいなのよ!」

愛想のいいおかみさんと目があった。

「あっ、いえ、道にまよったもんで!」

娘にあやしい男に後をつけられたなど言いつけられたらまずいと、
とっさに考えた。

「いや、人が見えたのでついてきたらここを見つけたんでほっとしました、
 宿に連絡したいので、電話を貸してもらえませんか?」

「熊宿のお客さんだね、連絡してやるから店の中に入って待っていればいい」

「熊宿ってよくわかりますね」

おかみさんはホホって笑うと、

「この山ん中には宿は一軒しかないから」

のれんと一緒に店に入ると、
店の真ん中に無垢の木でつくられた長いテーブルが一つだけおかれていた。

「のどが渇いたでしょ、芳江〜!」

奥から浴衣の娘が出てきた、あの子だ!下を向いているが顔の白さはわかる。
テーブルの前に私は座り、黙ってそこに置かれたコップの水を?
いや、酒だった。
いっきに飲み干した。
途端、くらっと目まいがして私はテーブルに突っ伏した。
気づくと、せまい部屋に私は寝かされ、そばには芳江と呼ばれた娘が上から
私の顔を覗き込んでいる。

「こんどは、お水がいいわね」

娘は自分の口にコップの水を含むと、
私の両肩に手をつき、私の身体の上にまたがった、
えっと私はびっくりしたが身体が動かなかった、声も出ない、
しかも私の唯一動く目は私がなにも服を身につけず裸なのを見つけた。
娘の口が私の唇に重なり、
どろりと藻のような味の液体が私の口のなかに入り込んでくる、
吐き出そうとしたが、液体は蛭のように喉に張り付き、下って行った。

まつり よん

 私は娘の顔がぜひとも見たかった、それには子供のころの体験にわけがあった。
どうしても思い出したい顔があるのだ、私の記憶からその人の顔がなくなってしまっていた。
娘の顔を見ることで記憶が戻るのではないかと期待したのだ。
 私が小学5年生の時、毎年夏休みには、田舎に住んでいるおやじの兄貴の家に
泊りで遊びにいくのが楽しみな行事になっていた。
おやじとその兄貴とは腹違いの母らしいのだが、仲は実の兄弟以上に良かった。
田舎の家の近くには小さな川があって、私はよく水遊びをした。
その日も私は川に行って水に浸かって遊んでいた、
私は泳げなかったがそれでも水に入るのは楽しくてしょうがなかった、
いつもは子供達でにぎやかな水辺だったが、その日は子供会で集会場に
子供達は集まっており私しかその水辺にはいなかった。
悪いことというのはそういう時に起きるもので、
深みにはまって私は溺れてしまったのだ。
水の中でじたばたしながら、これで死ぬのかという思いが頭をめぐり、その時
ぎゅっと私の首になにかが巻き付いた。
私は後ろから腕で羽交い絞めされたような形になっていた、
溺れる者は藁をもつかむという言葉の通り、
合い向かいで助けようとすると夢中にしがみつかれて、
泳ぎの達人でも一緒に溺れてしまうこともあるという、
水を飲みながら私は自分の首に巻かれた白い、水面で水滴をはじいてきらきらしている
腕を見ていた。
私を助けたのはおやじの兄貴の一人娘だった、
小学6年生の彼女は私を心配して見にきてくれたらしい、女の一歳年上というのは
私には大人びたお姉さんという感じであまり話はしていなかったのだが。
岸でゲロゲロとしながら私は香奈が親達に話すだろうと気持ちが穏やかではなかった。
彼女は香奈といい、透き透る白さの肌をしている、
病的なほどに白い肌に私は気味悪さを感じていっしょに遊ぶということもしていなかった。
だが、香奈はいっさい家でその話をださず、私はただきまずい思いで
夕食の時も下を向いてむっとしていた。そんな私を親達は気遣ったのか、

「幹夫、花火があるから香奈と二人で庭で遊ぶといい、
 香奈!バケツに水をくんでそばにもっていきなさい」

私達は暗くなった庭の真ん中で二人並んで花火の飛び散る光を楽しみ、
私は香奈が話さなかった事の安心で肩や膝が浴衣ごしに触れ合っても
気にならなかった。
賑やかな花火がなくなり、線香花火に火をつけた時には、
私と香奈は合い向かいに座り込んで互いの火をかわるがわるに
移しっこをして遊んだりもしていた。
パチパチとちっこい赤い玉から火花が飛び散る、
香奈の浴衣の裾は横に開いて流れ、細い線香花火の光の糸が足首から上にと、
白い太もものをかすかに浮かび上がらせていた。
私の視線は線香花火の先のももの白さにつかまっていた。
ポトリと花火の赤い玉が地面に落ちた時、
視線を上げた私と香奈の目が合った。
香奈は気づいていた、私が香奈の開いた浴衣の中を見ていたことを、
すっと香奈は立ち上がるとわたしの手をとった。

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