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「絶対に襖を開けて覗いてはいけません!私のほうから出てくるまでは」 娘は目を一文字に細め、赤い口を尖がらせてきつい言い方をした。 舞と名乗る娘は突然にやってきて恩返しをさせてください と言うなり部屋に閉じこもってしまった。 この家のおじいさんもおばあさんも、わけがわからず、 「おばあさんや、あの娘になにか心当たりがあるかえ?」 「おじいさんこそ、悪さをしたんじゃないかえ?」 ただただ二人互いの顔を見合わせて頭を傾げていた。 ”パッタン・パッタン” 娘の閉じこもった部屋からは昼夜を問わずにはたを織る音が途切れない。 「あのように、根をつめて休まずに働いていては身体が持つまい、 ようし、川に行って魚でも取ってこよう」 じいさんがいうとばあさんも、 「私は、山にいって木の実でも集めてきましょう」 二人は朝晩と取ってきた魚やドジョウ、たまにはウナギ、木の実を 娘のこもっている部屋の前にと置いた。 きちんきちんと空になった皿が戻されるので、すこしは安心できた。 十日もたった時、襖が開き娘が出てきた。 両手で反物をかかえ差し出すと、 「どうぞ、私が丹精こめて織り上げたこの反物お受け取りください」 一目見ただけでわかるほど、それは見事に織られている美しい反物だった。 「おら達がこんなにりっぱな物をもらういわれはないだ」 娘は反物をばあさんの手に渡すと、 「私は以前怪我をして飛べなくなっていたのを助けてもらった鶴です 私の羽根で織ったこの反物を売ればかなりのお金が入るはずです どうかそれで少しは楽をしてください」 おじいさんもおばあさんも思い出しました。 「そうかえ、あの時の鶴が舞さんなのか」 娘はいきなり両手を広げると、娘の姿はたちまちのうちに鶴にと変わります、 「おじいさんもおばあさんもいつまでもお元気で・さようなら〜」 ばたばたと走り出すと表にと飛び出していきます。 ”どたん、バタン、がしゃん” どうしたのかと二人が表に出ると、 垣根に挟まっている鶴がいた。 「いた〜い、やだ〜ん羽根が薄いせいかしら飛び上らな〜い!」 確かに鶴の翼はじいさんの頭のように薄くなっている、反物の糸の代わりに 羽根をつかいすぎたようだ。 鶴は方向をかえると再び走りだした。 ”ばたん、がしゃん” 「だめ〜ん、どうしよう!」 見ているじいさんとばあさんは袖で顔をおおっている、肩がこきざみに震えている。 「まあ、なんてやさしいお二人、別れを悲しんでくれているのね」 そうではない必死に笑いをこらえているのだ。 舞は気づいていないのだが、たっぷりと栄養をとっている鶴は アヒルのようにふとっていたから。 !!えいっ、えいっ!! 朝早くから甲高い声が響く、 舞が筋力トレーニングをしているのだ。 薄くなった翼を回復するために羽ばたきの練習を繰り返している、 「舞さん〜!ごはんよ〜」 囲炉裏にはドジョウ鍋がぐつぐつと湯気を立てている。 「ばあさんよ、スッポンの肉も入れたろうな」 「ばっちり入っているわよ!鶴さんにはたっぷりとふとって飛んでいけない ようになってもらわなくてはね」 「そうさな、おれたちの大事な金づるだからな、はっはっは」 舞の織った反物は都でたいそうな評判となり、さる高貴なお方の目にとまった。 そのお方がぜひ舞を養女にほしいと使者がきたのだ。 養女といっても実際は愛人、つまりは二号さんということだが。 鶴のちいさな頭では人間の巧みなくわだてなどわかるはずはなく。 「うわ〜きょうもごちそうね、ありがとうたびたびのご恩わすれません」 「いいんだよ、さあお食べ力をつけて空にと舞っておくれ」 ニコニコとするおじいさんの背中に回した手のなかには 内金としてすでにもらっている砂金の袋がしっかりと握られていた。 |
ひねくれ童話
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若くてきれいな女性なら、美男でなくてはね〜
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今は昔のこと 大変にものぐさな娘がおじいさん、おばあさんと暮らしておりました。 娘は日が昇ってから暮れるまで毎日部屋から出ることなく ただただ外を眺めているばかり。 「あ〜あ退屈退屈、あの山の向こうには海というものがあるという 一度見てみたいもの、だけども歩くことを考えたらおそろしや、おそろしや」 空を飛ぶ鳥を見て、 「鳥のような翼があれば歩かずとも山も越えられるのに」 いつしか日も暮れ娘は食事をすますと早々と寝てしまいました。 次の日のこと なにやら背中がむずむずとして娘は目を覚まします、 「背中がなんか落ち着かない!どうしたのかしら」 娘は布団から起き上がると自分の背中に首をめいいっぱい回した。 「えっ!なにこれ?」 モハッと羽根が見える、背中のいままで感じたことのない筋肉に力をいれると バサリと動いた。 ホコリが舞い上がり娘はごほごほとむせながら、我慢できずに部屋の外にと出る。 ひとかき、ふたかき、背中の翼が羽ばたくとフワリと娘の身体が浮いて、 見る見る屋根より高く飛んだ。 「すご〜い私空を飛んでいるんだわ、ようしあの山を飛びこえて海にいこっと」 娘は家の上をぐるりと回るとすぐに降りてきた。 「飛ぶって、歩くのより疲れるもうやめたっと」 布団に入り込むと娘はつぶやく、 「体を使わないで海に行けないかしら、そうお魚なら水の流れに乗っているだけで 行けるわよ!お魚になりたい・・」 娘はいつのまにか寝てしまいました。 次の日になりました。 布団の上でピチピチとはねている大きな魚が一匹。 おじいさんが娘の様子を見にやってきます、 「おや?娘はどこにいったのだ、出かけるなんて珍しいことがあるもんだ、 なんだこの魚は?」 魚は口をパクパクさせて苦しげにしている、布団の上では魚は息ができない。 「よっこらしょ!こりゃ〜ごちそうだ生きのいいうちに調理しちまわねえとな、 ばあさん!包丁を砥いでくれ」 じいさんは大きな魚を抱きかかえると台所にとふらつきながら部屋を出た。 めでたし、めでたしかな? |
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檀家から届けられた、あまそうな菓子を仏様の前に供え、ひとしきり拝むと いそいそと、この寺の和尚は檀家回りに出掛けていった。 「おい、うまそうな菓子があるぞ、おれと、おまえ、二つ位いただいても 和尚にはわかるまい」 寺で修行中の小坊主二人、仏様に手を合わせると、 そっと菓子をとり、パクリ、ムシャ、ムシャ! うまい、もう一つだけ、パクリ、ムシャ、ムシャ! パクリ、、ムシャ、ムシャ! とうとう供えてあった菓子全てを食べきってしまった。 「どうしよう、和尚さんが見たら怒られる」 おろおろしながら、空になったお供え台から逃げる小坊主二人。 珍ねん! 木ねん! 寺中に和尚の乾いた声が響いた。 神妙に仏様の前で正座している小坊主二人。 「仏様にお供えした菓子を食べたな、いいわけはできぬぞ白状せい!」 「あの、それは、・・仏様がたべました」 「うそを言うでない! 木像の仏様が物を食うか!」 「でも和尚様、それなら木像に手を合わせ、拝むのは変です」 「う〜ん」 しばし和尚考えこみ、 「よいか、わしは木像を崇めているのではない、 木像をとうして、わしの心、胸のうちに存在する仏様を拝んでいるのじゃ」 和尚、とっさの思いつきの返答だが、 ・なかなか、うまい返答ができたわい・ 珍ねん、仁王立ちの和尚を見上げながら、 「本当です、私達は修行が足りないので、仏様がまだ腹のへんで留まっています、 修行を重ねていずれは、和尚様のように胸に上がっていただきたいのです」 木ねんが、後のいいわけを引き継ぎ、 「腹の仏様が早く食わせろと、おっしゃったので!!」 にがり顔の和尚と下を向きチロッと舌を出した小坊主二人。 差し込む光の影が仏様の木像を笑わせていた。 |
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昔の話でございます。 妙義山という標高千メートルにもならない山の麓に、 里という娘が病に伏せっている母親と共に暮らしておりました。 女二人、狭い畑をたがやして、貧しい生活をおくっております。 母は病になり、日々重く、貧しくて医者に見せることも、ましてや高価な 薬を買うこともなりませんでした。 里は、一生懸命看病しますが、母は粗末な床から起き上がることさえできず、 体はますます、やせ細り、いつ命がとぎれてもおかしくない状態でした。 里は決心します、 ・妙義山の奥深く、山の頂近くに仙人がいて願をかなえてくれるという、 だだし、仙人の試練を通らなければならない、かって 豪傑、時の権力者、知恵者がいどんだが、だれも試練を乗りこえられなかったと・ 「母さん、少しのあいだ出かけるけど、それまでしんぼうして、待っていてね」 里は、頂をめざして、岩山を登り始めます。 妙義山は低いとはいえ、岩肌はもろく、山になれている里といえども、 何度も足をすべらせ、手も足も傷だらけです。 やっと頂につくと、里は叫びました。 ” 仙人さま!どうか私の願をお聴きください ” 何度も何度も寒空に向かって叫びました。 ひゅ〜と風が里の黒髪をなでます、 「娘、おまえの心はすでに見通した、だが、おまえに試練がのりこえられるか」 「わかりません、でも母を助けたいのです、おねがいします」 仙人、白いヒゲをひとなでし、 「試練を始めるぞ、これからは、何が起ころうと、決して目を開けて見てはならぬ」 里は仙人に脊を向けると、おもいきり息を吸い込み両手で顔をおおった。 たちまちのうちに空は暗黒に包まれ、大地は腐った臭いに満たされた。 大地を揺るがし、恐ろしげに足音が近づいてくる、 ”女、おまえを食べてやる、どこからいこうか、その白い足か、 それとも、二つに乳房をちぎってやろう、 恐ろしければ、目を開け、わしより走って逃げればよい、 目をつぶっていれば走れぬぞ!” 獣の生臭い息が、里の顔にかかる。 恐ろしくて、がたがたと震え、しゃがみ込む。 す〜と気配がなくなった。 里を強風がおそう、よろける里。 ”見ろ!里おまえは、岩山の頂に居るんだぞ、一歩踏み出せば 奈落に落ちる!” 下から、凍るような風が里の着物の裾を巻きあげる、 体を丸め、ただただ、必死に飛ばされまいと絶える里、手は顔をおおったままである。 やがて風はやみ、ポカポカと温かくなり、若い男と女のはしゃぐ声が近ずいてくる。 「お嬢さん、私達と今しかできない若さを楽しみましょう、 さあ、心も体も解放して」 里の体をいくつもの柔らかな手がささえ、立ちあがった体をやさしくなでまわしていく うっとりとしていく里、いつのまにか、着ているものは脱がされ、 からだの芯から、いままで経験したことのない感覚がにじみでてくる。 白い肌が桜色に染まっていき、かわいらしいくちびるが 小さく開く、 「うっ!」 えも知れぬ快感に腕の力が抜けていく、 「そうよ!私達を見るのよ、はずかしいことなんかないわ、その手で私達をさわるのよ」 里はそれでも手を顔からはずさなかった。 はしゃぐ声が遠ざかっていく。 ”里!ありがとう、もういいのよ、もう終わったのよ” 「おかあさん」 まちがえもない、母の声だ、 「病気はなおったのね!」 ”おまえの、おかげだよ仙人様になおしてもらったよ、 さあ、顔を上げて、元気なお母さんを見ておくれ” 「ごめんなさい、私、お母さんを見れないの」 ”おっ、おまえ!” 母の声が仙人の声に変わっていく、 顔を上げ、両手は下にさげた里、二つの目からは赤い血が流れていた。 ”里、おまえは自分でその目を!” 「私には、男の人のような勇気はありません、百姓ですから知恵も知識もありません、 仙人様の試練にきっと負けてしまいます、 ですから、これしか私にできる方法はなかったのです」 仙人、じっと里をみつめると、 ”約束だ、おまえの望みはかなえよう、帰るがよい、母の胸のもとえ!” 仙人、手を大きく振ると、里は輝きとなって山をくだっていった。 岩の頂に立ち、天をみあげる仙人の顔には悲しみが一瞬よぎった、 空からは、チラチラと白い雪の花が仙人の肩にのる、 山は、いよいよ冬のしたくに入る。 |
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森の中で迷子になった子供達。 進めば進むほど、森は木々が深く生い茂り暗くなっていく。 「お兄さんが悪いのよ、カブトムシを夢中で追いかけてくるから」 大きな瞳をして心細くて泣きそうな声で兄を非難する少女。 「何言ってるんだ、おまえがカブトムシほしがったくせに」 兄弟げんかでもしていないと、二人とも怖くてしかたがないのだろう。 「あ、お兄さんあそこに明かりがみえる」 「ほんとだ家がある、よかった、いこう」 二人家にちかずくと、その家は二人の背丈ほどの小さな家だった。 「かわいい、それに」 「うわー、甘い良い匂い」 少女、壁に、屋根に鼻を近づけクンクンと嗅ぐ、べろっとひとなめ。 「あまい、お菓子よ、お菓子でできているわ」 男の子、こぶしを上げ壁をひとたたき。 ボロボロと崩れおちる。 落ちたかけらを口にすると、 「うまいよ、これはお菓子の家だ」 柱や窓にかじりつく二人、食べることに夢中になっていると、 「だれだ、私達の家を壊しているのは」 家の中からお人形さんのような小さな人間が出てきた、男も女もいた。 二人、それを見ると 「うわー、かわいい、それにとても・・・・」 ・・・・・・・・・ 五日後、森の奥で寄り添って眠っているかわいい子供達が、捜索にきた人々に発見された。 二人の周りには、大量のお菓子の食べカスが散らばっていて、 泥のついた、かわいらしい小さなお菓子の靴が子供達の服に張り付いていた。 |




