絹子の創作物語

事実を参考にした創作です

絹子のまゆ

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 * 始めはここから http://blogs.yahoo.co.jp/okaikosanmau/405083.html




 日曜日に富岡製糸所の門が開かれた。

絹子が工場の責任者にかけあって町の人々に一日見学会を開けるよう交渉したのだ。

工場としても、町の人々の理解をえるためには良い機会と考え

全面的に協力する約束をしてくれた。

 上州の田舎町である、巨大で近代的な官営工場は

今日の我々が、NASA のロケット発射場を見る思いだったろう。

事前の宣伝も効果が有り、門の周辺は祭りのような騒ぎだった。

着飾った老若男女が、整然と工場の中に入っていく。

中を見学し終えると、広場で絹子や工女たちが、クッキーとワインを長テーブルの

上に並べて待っていた。

「どうぞ一口めしあがれ、フランスのお菓子でクッキーと言います」

香ばしい香りのするクッキーは大好評だった。

ところが、ワインに手を出す者はいなかった。

「どうぞ、一口飲んでみてください、ブドウという果物で作ったお酒です」

絹子たちが、手にそえて勧めるのだが、赤い人の血の色をしたワインには

誰も気味悪がって手をださなかった。

「おいしさを、どう説明したらいいのかしら」

思わず絹子が口走った。

それを聞いていて、よね がクッキーを一口ほうばり、ワインをグビッと飲んだ

「まあ、とってもおいしい、ワインの香りがクッキーをほんのりつつんで、」

よね を見ていた工女達も、つぎつぎと、よね のまねをして、

「ほんと、ほんと おいしいわ」

若い工女達のかわいらしい仕種が、効果があったのだからか、

一人、二人と、恐る恐るとワインに手をだす人が出始めた。

「なるほど、これはうまい」

飲んだ人の感想を聞くと、とうまきに見ていた人たちも次々とワインを飲み出した。

しまいには、グラスの交換がまにあわないくらいであった。

いそがしい一日が終わった。

クッキーもワインも大好評で、中には

「次はいつ見学会をやるのかね」

と聞いてくる人もいるくらいだった。

この見学会は思わぬうれしい効果を、生み出した。

あれほど、集まらなかった地元からの工女希望の人手がどんどんと集まりだしたのである。

フランス人は、若い女の生き血を飲むという、うわさ が消えたのである。

これには人集めに苦労していた、ミール達も大喜びであった。 



 よね は 絹子の所にいた。

「絹子さん、先ほどのお菓子、私達にも作り方を教えてもらえないかねえ」

「休みに暇でしかたないから、フランス式のお菓子の作り方を覚えて、

 故郷に帰った時、親や友達に食べさせてやりたいんだ」

それを聞いて絹子は喜んだ。

よね達、工女と日頃なにか距離を感じていたからだ、

・・このきっかけで、うちとけることができるかも・・

絹子は よね に笑顔いっぱいで答えた。

「では、次のお休みから、いっしょにつくりましょう、

 それまでに、責任者の許可と材料をそろえておきますから」

 一週間たち、フランス人の奥様がたもまじえて、20人ほどで

クッキーの料理教室が始まった。

もともと器用な工女達である、たちまちの内に、大量のクッキーが出来上がった。

よね 山盛りのクッキーを見て

「このお菓子、門の外の日頃おせわになっているご近所さんにもお配りしていいかしら」

官営富岡製糸所は、工場、倉庫、フランス人宿舎、工女寮、病院、全てが高い塀で囲まれていた。

「それは、とてもいいわ、」

「ねえ、私にすこし考えがあるの、協力してもらえるかしら」

絹子、よね に近ずくと何やら相談し始めた。

絹子のまゆ 2部・・2

 完成した工場の中では、工女たちがピカピカのしんちゅう製大釜から、絹糸を繰り出していた。

大釜の中では、まゆが煮られ湯気とまゆの独特の匂いでむせかえるようだった。

まゆは、煮ることで糸が解れやすくなる。

いかに切らずに連続して、まゆから絹糸を繰り出せるか工女の腕の見せ所であった。

 工女の中でも よね は抜群の腕をみせ、見る間にリーダー的存在になった。

工場長でも、よね にいちもく置くようになった。

 工場と同じ敷地内に寮があり、工女は4人で一部屋をつかっていた。

当然のことながら、よね はたびたびフランス人と行動を共にしている絹子をみていた。

通訳の仕事とはいえ、長いスカートをはいたフランスかぶれな絹子を よね は快く思っていなかった。

 ある日のことである、官営工場だけあって、日曜はきちんと休めるので、

よね をはじめ工女たちは、寮でのんびりと過ごしていた。

なにぶん、田舎である、工場を出ると何もなかつた、遊びに行くとこなどまるでない。

洗濯をしたり、故郷に手紙を書いたり、工女達は朝から寮にいた。

絹子が、よね の居る寮を突然たずねてきた、

「おはようございます、今日は作りたてのフランスのお菓子 クッキーを持ってきました
 
 フランスの奥様がたと一緒に焼きました、よろしかったら、食べてみてください」

香ばしい匂いがしている、よね 断る理由もないので、いただくことにした。

「ありがとう、ちょうだいします」

絹子が帰ると、さっそく よね みんなと分け合い クッキーをほうばる。

日本の和菓子とは違う香ばしいおいしさがする。

よね なにか思いついたらしく、にっこりすると、一人寮を出て行く。


 
   

絹子のまゆ 2部・・1

  明治政府の全面的な後押しもあって、工場と周辺設備は二年もたたずに完成した。

まゆを煮るための大ガマや、糸つむぎの機械なども、フランスから続々と入り、

工場に設置されていく。

動力として蒸気機関をつかうため、高崎近くに泥炭を見つけそれを燃料として大きな煙突も立てた。

当時の地元の人々には、高い煙突は今日の東京タワーを見る思いだったのである

近くにいっては見上げて、

「ほう、これが文明開化か」と感心するのである。

明治政府としては、富岡をモデル工場として人材を養成し全国に広めるつもりであり、

そうそうに、人集めを始めたのだが、これがなかなかうまく集まらない。

工場で働く主力は工女と呼ばれる女性を大規模に必要としていた。

日本全国から工女を募集し、地元からも募集した。

 地元では、フランス人は若い女の血を飲んでいる、と言ううわさが流れ

親が、娘を働きに行かせることをこばんでいた。

地元でなかなか、工女のなりてが集まらないなか信州松本から集団で少女がやってきた。

彼女たちは、村長の娘や士族の娘であり、政府の呼びかけに対し使命感をもっていた。

富岡で、技術を覚え信州でも製糸工業を興そうとしているのである。

 なかでも、松本から来た よね は、父が村長と言うこともあるうえ

自ら志願してきたほど使命感にもえていた。








 

 

絹子のまゆ 8

  地元で焼き上がった煉瓦が、連日ぞくぞくと建設現場に運ばれてくる。

最初、フランスから来た煉瓦職人に作り方を教さわると、さすが腕の良い瓦職人達、

みるみる覚え、フランス製の煉瓦より上質な物が出来上がった。

これには、ミールもびっくり

煉瓦をつなぐセメントはなかつたので、かわりに漆喰を目地として代用することにした。

瓦職人たちのアイデアである。

 工場の窓は総ガラス製であり枠サッシとともにフランスから持ってきた。

さすがに、これだけ大量のガラスは日本では作れなかったようである。

 ニール昼間は建設現場、暗くなり始めると事務所で図面とにらめっこの毎日であった。

仕事で疲れているミールを、さらに疲れさせる事件がおきた。

 埃の舞い上がる建設現場、ミールと日本の大工の棟梁が大声で言い合っている。

その間で、絹子は両者をなだめるような話し方で通訳をしている。

ミール腰に両手を添え大工の棟梁に向かいどなるように話す、

「倉庫は煉瓦積みだけでたてます、私の設計になんら問題はありません、

 私の設計を信用してください。」

ミールにはフランスでの、実績となにより建築技師としてのプライドがあり、

日本の大工達にも経験と誇りがあった。

「ミールさん、フランスでいくつ建物を作ろうが日本には日本式の建て方がある、

 煉瓦の壁だけで、建物を支えるなんてこの国には通用しねえ。」

「地震でつぶれるような建物を建てたとなりゃ、後世の笑いものにならあ。」

「木柱のない建物なんか、絶対作れねえ。」

両者、技師としての自信と大工としての誇りがぶつかりあい、折り合いはいっこうに

つかなかった。

間で話を通訳している絹子も困惑していた。

 翌日、大工達は一人も現場に出てこなかった、ストライキである。

総責任者であるブリュナもこれには困りはてていた。

 絹子、久し振りに朝から事務をしているミールの部屋をたずねる。

「おはようございます、明日はお休みの日なので、もしよろしかったら

 私を連れて、いっしょに行ってもらいたい所があるのですが。」

ミール、ひさびさに笑顔を見せ、

「わかりました、喜んで、絹さんのさそい断るわけありません。」

 翌日、一宮貫先神社に上がる参道に二人はいた。

絹子は動く日本人形のようであり、

ミールは、着物を着た絹子をこのとき初めてみた。

普段髪を頭の後ろで束ねてあるのだが、今は、長く黒い髪を背中まで垂らしている。

絹子の美しさが、木立に囲まれた参道に映えていた。

参道は途中まで登り坂の砂利道で、やがて広場につく。

広場から、広く長い階段が上に続いていた。

ミール、絹子に手を貸し二人仲良くゆっくりとのぼっていく。

階段の最上段を登り切ると、大きな鳥居があり、さらに砂利道が続く。

威厳のある門をくぐりミールは驚いた。

深い木立の中に埋もれるよう本殿はあった。

神を祭ってある本殿は急な階段をかなり下って行った先、二人の足元にある。

「フランスでは考えられない、神が見下される場所に社があるなんて。」

日本人の宗教観はまったく理解できなかった。

 絹子 本殿の前で参拝する、ミールすこし後ろから絹子の手を合わせて拝む姿を見ている、

キリスト教徒であるミールには他の神を拝むことはできない。

絹子 ミールのそばに戻ると、本殿の軒下を指で指し、

「建物の造りをみてください、木を組み合わせた、この国伝統の建て方です、

 地震や台風による多少のゆれなら、吸収してしまうそうです。」

東洋の見事な建築様式だった、西洋とは違う,

木を巧みに使った神の住まい.

この国の宗教も文化も、フランスとは違っていることがかなりあり、

ミールは戸惑うことがたびたびあった。

「この国には、この国に合った文化がある。」

考えながら、ミール はっと思った。

この国の長い歴史がこの国に最適なものを残してきた。

最新の技術は決して古い伝統に対立するものではない、

絹さんはそれを見せるためここに案内してくれた。

「絹さん、分かりました 今日はとても素晴らしい日です、ここにきて良かったです。」

絹子、ミールの顔が晴ればれとしていくのを、嬉しそうに見つめていた。

















 



 

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