絹子の創作物語

事実を参考にした創作です

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悲しくてあたたかい話
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ピエロに笑顔を

 駅に向かう道の途中に小さな公園がある。
公園では、毎日、同じ時間に青年らしき若者がピエロの姿をして、
パホーマンスを演じていた。
道行く人は、チラッと横目で彼を見るが、忙しそうに通り過ぎていく。
公園で遊んでいる母と子の親子連れも遠くから時々彼を見るが近寄ることはなかった。
青年は、観客がいなくても、ただひたすらピエロを演じていた。

 そんな青年に、小さな素敵な時間が訪れる。
若い娘が彼の演技をじっと見て拍手をしてくれた、
ピエロの青年は深ぶかとお辞儀をすると顔を上げ娘を見た。
髪をショウトカットにしている娘は満面の笑顔で微笑み返してくれた。
毎日、彼女は青年のピエロの演技を見に来てくれた。
彼女が公園に居るのはわずかな時間なのだが、
青年は彼女の笑顔を見ることが心の全てになっていく。

「明日は花束を用意して、僕の気持を彼女に伝えよう!」

去っていく娘の後姿を見送りながら青年は決心した。
次の日、青年は待った、いつものように彼女が来てくれるのを、
陽が傾き、公園を闇がおおっても彼女は姿を現わせなかった。

「なにか彼女の身にあったんだろうか?」

心配で青年の心は張り裂けそうになる、だが青年は娘の名前も住んでいるところも知らない。
次の日も娘は来なかった
そして次の日も。
青年はピエロの格好はしても、一日中地べたに座り込んで演技をしない、もうできなかった。
ただ、彼女が明日は来るのではないかとひたすら公園には出かけた。

 夕暮れの公園にピエロの影が伸びていく、
帰りかけている青年は見た、
彼女が!
いつもの娘が青年の方に向かってくるのを!
青年は一生懸命に演じる、ピエロの役を。
彼女の素敵な笑顔がピエロに微笑みかかる!
ピエロは笑顔に応えて大げさな動作を繰り返す、
ピエロの目からは大粒の涙がポロポロとこぼれていた。
涙に溢れかえるピエロの目は
笑顔の娘と
娘にしっかりと手を握り合って寄り添っている若者をとらえていた。





 

東方の使者 3

 「尊師、雨がふってまいりました今宵はあの寺社にて軒下を借りようと思います」

大きな門構え、りっぱな伽藍の寺の脇にきれいな家がある。
カルマが戸を開け、

「修行途上の者でございます、今宵雨露をしのがせてくださりませ」

女性が応対に出てくると、二人を足先から頭まで見定めるように視線を流し、

「あの〜とう寺に縁があるか、同じ宗派の方でいらっしゃいますか?」

「いえ、まったくのご無縁です」

女性は奥に戻っていく、奥の方で男女の話声が一時やがて女性は二人の所に。

「すみません、主人が留守をしていまして私では決めかねますので
 その・・・」

カルマはすぐに女の気持ちを察して、

「これは申し訳ありませんでした、ではまたご縁があることを」

雨はますます強くなってくる。
カルマは急ぎ足で次の寺を見つけて駆け込んだ。
さきほどの豪華な寺とは違い小さなみすぼらしい寺だ。

「尊師、富む者はその富のなかに他人をいれることを嫌うようですね
 たとえ仏に使える者でも」

「カルマ、よく見るのだ!仏の形に使える者は人を大きく豪華な形で
 威圧しようとする、仏の心に使える者は言葉で人を導くのだ」

「失礼しますよ」

襖がすべるとこの寺の住職が二人の居る部屋にはいってくる。

「これは、おせわになります」

二人は初老の住職に頭をさげる。

「いやいや、それよりも今時、行の旅をなされているとはなかなかのこと、
 よろしければお話をきかせてはもらえまいか」

住職は尊師と呼ばれている男を見た、
色白く、女のようにやさしい顔つきである、
歳は・・若く感じるのだが?
どこかその顔に見覚えがあった。


東方の使者 2

尊師はなお話を続ける。

「兎の話をしよう、前世の因果で兎と狐、猿にと輪廻で生まれ代わった者達が、布施の心をもって
 疲れはてている老翁を養おうと食べ物をとりにいった。
 猿は木に登り果実をもってきた、狐は墓所にそえられた餅や魚をもってくる、
 兎はなにも取ってこれなかった。
 兎は軽蔑で見つめている猿と狐にいう、
 木を集め火を起していてくれ、必ず食べ物をもってくる。
 猿は小枝を集め狐が火をつけて待っていると、
 兎は跳んできて炎の中に跳び込んだ
 翁は帝釈天の仮の姿、火の中の兎を抱くと月に飛び去った」

カルマは感涙して尊師に

「自らの身体を施すとはまさに犠牲慈悲の心」

尊師はカルマの目を悲しそうに見ると、

「カルマよ、修行の道は遠いようだ」

カルマにはわからなかった。

「尊師、兎は自らを犠牲にしてまで慈悲を・・・」

そこまでいいかけてカルマは悟った。

「わかったようだなカルマよ、おのれの命をそまつにするものに
 他人に慈悲の布施を施すなどおかしなことだということが」

カルマただただおのれの未熟さを心に留めた。





 
 
 

東方の使者 1

 一見僧侶を思わせる姿の二人。
地方都市の小さな公園の中に入っていく。
木影を求めると、一人が背中から巻いてあったゴザを取り出して地面にひく。

「尊師、ここでよろしいでしょうか?」

尊師と呼ばれた男は小柄な体でやさしい顔をしている、
無言のままゴザの上に座ると鉢を膝の前に出し、瞑想のかたちになった。
座禅とは足の組み方が違うが無理のない自然なすわりかた二人共になっている。
この公園には犬の散歩に通りすがるものや幼い子供を遊ばせている親子ずれが
避けるように僧侶達に距離をあけて見ている。
一人の少女が小走りに僧侶の方に駆けてくる、そのあとをひっしに追ってくる母親。

「おじさん!あたしこれが全部なの、あげる」

チャリンと鉢に乾いた音がする、銅の硬貨が鉢の中で回って倒れる。
追いついた母親が少女の腕をとると、チョコンとお辞儀をして去って行った。

「尊師、お喜びのご様子」

尊師と呼ばれる男の顔は優しさにあふれている。

「カルマ聞きなさい、この銅貨は先ほどの少女が今持っている全ての富」

尊師は鉢から銅貨を掴むと自分の胸にあてた。

「カルマよ、人は持てるもの多ければ減ることを嫌う、
 持てる全てを施す人は幼子といえど私を豊にするのだ」

カルマは悟った。
多くの富の一部を施しても慈善とはならないことを。


かかしロック 九話

 演奏が終わった、静まり返る会場、しばらくするとパラパラと拍手が起き、
やがて拍手の大合唱が始まった。
二コリと笑みがこぼれる山羊、

「すてきな歌と演奏でした、次はオカイコーズのオリジナル曲
 かかしロックです、おねがいします」

司会にそくされると三人は目配せをする。
秋野は練習の時以上に身体で大きくリズムをとる、
前の静かな曲を歌った秋野と同人物とは信じられないまゆみがそこにいた。

・かかしはいつでも夢をみる
 遠い世界の夢をみる
 目の前の青い鳥に気付かずに
 隣のおまえに手を差し伸べずに・

まゆみの歌に会場の子供から年寄りまでが知らず知らずに身体でリズムにのりだした。
三人と会場が歌と演奏で一つになっていく。
全てが終わった、鳴りやまない拍手の中で三人が何度もお辞儀を繰り返している。
ころあいをみて、司会者が出てくると、

「オカイコーズさんすごいですね〜、私もおもわずにのりのりでした、
 ここでサプライズがあります」

舞台からそでに帰ろうとする三人に司会者が声をかける。

「あっ、まだ待ってくださいオカイコーズさん、それではどーぞ!」

司会者が舞台のそでに手を上げると、
どやどやと派手な格好をした若者が中央に寄ってくる。

「あっ!兄ちゃん」

秋野まゆみがその中の一人を指差して叫んだ。
咲子がびっくりして二人を見比べながら、

「えっ、まゆみのお兄さんって死んだんじゃ?」

「また殺されていたんか!まあいいけどな」

「ごめんなさい、それってうそなの」

まゆみがちらっと舌をだした。

「まゆみ、かあさんに聞いたんだ、まゆみの引きこもりが治ったと、
 ひさしぶりに聞いたよまゆみの声を
 ロックは初めてだよな〜、よかったぜ」

咲子も良く知っているその若者は、

「お嬢さん、ごめんな、まゆみは俺が原因でいじめにあっていたんだそれでうそを・・」

「あっ、いえ、全然気になんかしてませんからどうしよう私」

(そうか、兄弟だったから声がにていたのね)

まゆみの歌を聞いた時の咲子の不思議な疑問が今解けた。
まゆみの兄は今をときめくロックバンド
日本中知らない人はいない。
顔にいっきに血が昇って行く咲子。
ざわざわざわざわと会場がどんどん騒がしくなる、
うそ〜、ほんもの〜、ドッキリかしら?
会場のどよめきを両手で静めるようにして司会者が、

「紹介します! ”ドルフィン ”です」

!!キャー!! 女の娘の悲鳴でこの世のすべての音が消えた。

ドルフィンのリーダー、まゆみの兄タツが会場に向って口に人さし指をあてると、
ピタッと悲鳴が止まる。

「今日は、ドルフィンで〜す、あんまりいい音が聞こえたんで、よらしてもらいました
 長野でのライブの帰りなので、俺たちのヒット曲をここで演奏することはできないけど」

隣のメンバーが口をはさむ、

「そう、事務所との契約でな〜勝手なことはできねえんだ」

ええ〜!!会場からブウイング、

「だがー!」

アマチュアの曲とのセッションならOKさ、なあ〜」

舞台の袖にいるマネージャーにドルフィンメンバーが顔をむけると
コクリと返事が返った。

「よし!咲子さん!お嬢さんの曲でオカイコーズとドルフィンのセッションをやろうぜ」

信じられない展開、山羊も咲子も足が震えている。
真ん中にいるまゆみが二人の肩に手を添えると、

「やろうよ、私達、羽ばたくのよ」

咲子が困ったような顔をして、

「でも譜面が足りないわ、コピーしてくる時間はないし」

タツが咲子の話を聞くと、

「ドルフィンはプロだぜ、こんないい曲は一回聞けばセッション出来る、
 ちょつと俺達のアレンジがはいるがいいだろ」

「ええ、もちろんいやなはずないわ!」

山羊の声がすこし震えている。
いつのまにかに後ろの方ではアンプや楽器がセットされており
ドルフィンメンバーはスタンバイしている。

「よし、じゃいくぜ〜!」

タツが右手を上に振り上げる、

「いえ〜い!かかしロック」

ジャ〜ンと音が始まった。
前奏の間にドルフィンとオカイコーズの演奏が一つになっていく
もちろんプロのドルフィンがリードしてオカイコーズをひっぱっている。
緊張していた咲子と山羊は笑顔になっている
ビートにのったまゆみがパンチをきかせて歌いはじめた。

!ふるいギターをうちこわし!

青い空に歌声が広がっていく
どこまでも・・

**おわり**

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