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こだわり力
これはY子さんのブログからの引越しです

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ATMとキャッシュカード

 私は「知らぬ間にキャッシュカードとか免許証とか保険証とか、落としたら悪用されてしまうかも知れないような大事な物をうっかり落としたり忘れたりして、さらには、もしかしたらそんなつもりも無いのに無意識にその場に置いてしまったりして、それが誰かに拾われて悪用されてしまい、気づいた時には自分では取り返しもつかない事態に陥ってしまうんじゃないか?」という強迫観念がありました。症状が軽い時にはそんな観念が浮かんだら、財布の中を何度も確認をして「大丈夫」と安心していたのだけど、症状がひどくなるにつれ「今、目に見えているのは本当は幻想で、実際には失ってしまっているんじゃないか?」と、目で見えているものが上手く脳でカチッと認識してくれず、見ても見ても不確かで、別の次元の物を遠くから見ているような感覚になってしまいました。「目で見て確認した事実」をまったく信じる事が出来なくなって怖くなり、しまいには銀行の前を通ったり、テレビで銀行のCMを見てしまうのもとても恐ろしく感じてしまうようになっていたので、ATMに近寄る事すら考えられなくなっていたのに、よりによって出された課題は、「サラ金のATMに入っ

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て、しかもいじること」でした。本当に恐ろしく思いました。

私がブルブル震えて身体を硬直させながら突っ立ってると、「さあ、やってみよう!」と原井先生が追い討ちをかけ、他の患者もじっと見守って立って待っているので、後に引けなくなった私は、「ええいっ!」と思って中に入りました。機械を見ると、ますます怖くなりました。私はその時すでに、何かパッと目に入った物を、全く関係もなく、全く違う色や形をしているのに、「これは私の目にはメモ紙に見えてるけど、そう錯覚しているだけで、本当は私が無意識に置いてしまったキャッシュカードなのでは?」などのように思ってしまうようになっており、その妄想は非現実的だとどこかでわかっているも、「うっかり誰か悪い人に拾われて、たまたま暗証番号が合ってしまい、貯金を全額引き出されて、将来の生活に困るのでは?」とか考えがわきました。「ニュースや新聞で見た、免許証とか保険証などの個人情報を悪用して、他人が勝手に住民票などを書き換え、それを元にサラ金で借金されて、気づいた時には自分の名義で莫大な借金を背負ってしまっており、本人確認の書類が提出されて自分名義になってしまっているので、見ず知らずの借金を返す羽目になることが続く」というのが頭に浮かんでしまいました。自分のちょっとしたミスで、そんな空恐ろしい事になったらどうしよう?とか思えて来てしまい、「もし紛失してたら、銀行に紛失届けを出せばいいだけじゃん」と納得しようとしても、「私の場合は『本当に紛失届けを出したんだろうか?記憶違いで本当は出していないんじゃないか?』と思ってしまうだろうから、それも怖くて出来ない。」と思って、もう背水の陣な気持ちになりました。

 例えば道を歩いていて、目にパッと映った道に落ちている葉っぱでドキリとし、「これ、葉っぱに見えるけど、本当は私が知らぬ間に落としたキャッシュカードなんじゃないか?」と思ってしまい、その場から動けなくなり、「葉っぱ、葉っぱ、葉っぱ、葉っぱ、葉っぱ…」と何度も唱えて頭に叩き込むように確認し、でも、確認してもしても大丈夫、これは確かに葉っぱだ、と思えず、全然ちゃんと見ている気がしなくて、そのうち「葉っぱって、こんなんだったっけ?」と葉っぱ自体の事もよくわからなくなって来て焦り、「色は緑、だから葉っぱ、色は緑、だから葉っぱ、色は緑、だから葉っぱ…」とより精度を増す形で延々と再び確認作業をし、すると「あれ?緑…緑って、何色?今見ているのは本当に緑?」と突然思ってしまい、とても怖くなり、「葉っぱの筋がある、葉っぱの筋がある、葉っぱの筋がある、葉っぱの筋がある…」と違った条件で確認のやり直しをし、それもまったく不確かで、全然頭にちゃんとインプットされていかず、もうどうにもこうにもやりようが無くて怖くなってしまい、目がその葉っぱにクギ付けになって離す事が出来なくなり、道の真ん中で葉っぱを凝視してずっと立ち続けているので、道行く通行人に変な目でジロジロ見られ、「恥ずかしい!早くこの場を去らなきゃ!」と焦って緊張しまくるも、それが確かに葉っぱだという確信が持てず、目を離すと全てがウソになってしまうような気がして、そこに立ちすくんだまま、30分、ひどい時は1時間くらい、ずっと葉っぱを見つめざるを得なくなったりしていました。

そう言った現象は、ありとあらゆる物を対象に起き、壁や床のシミ、道ばたのゴミ、何かの看板の模様、店においてある商品、喫茶店の灰皿、 とにかく何でもかんでも、何かを見た途端にギュンと胸を貫かれるような恐怖感が突然起こり、一回そうやって引っかかってしまうと、それが全くあり得ない場所にあったり、とても大きなサイズの物であっても、「これは私のキャッシュカードでは?」と思ってしまい、自分を安心させるために、何度も何度も確認をし続け、その場を離れられない、というのを繰り返していたので、サラ金のATMに入って、機械のタッチパネルを見ると、そこに書いてある文字が目に入った途端、ドキッとなって引っかかってしまって、「これは文字に見えているけど、私が無意識にここに置いてしまったキャッシュカードだったら…」と怖くなり、「そんなわけはない。私はカバンから財布を出してないし」と言い聞かせるんだけど、 「記憶にないだけで、本当は財布を出したんじゃないか?」と怖くなって来て、何度かその文字を、繰り返し読み返して、本当に文字なのかどうか確認してしまいました。

案の定、確認してもしても不確かで納得出来ず、言いようのない恐ろしさが胸にせり上がってきましたが、原井先生とみんなが外で待っているし、私が確認行為を繰り返した事を知られたくなくて、「治療に来たんだから、確認しちゃいけない!」と思い直して、無理矢理振り切って、外に出ました。サラ金の店から出ても、ずっと心臓がバクバクして、呼吸が荒くなってハアハアし過ぎて頭がクラクラし、こんなクラクラで余裕が無い状態じゃ、もしかしたらうっかり、何か知らぬ間に大きなミスを犯してしまうかも?と思えて来て、ますます怖くなり、そうするととても緊張が増して、ますますバクバク、ハアハア、クラクラなり、頭も身体もどうにかなっちゃいそうな、気が狂いそうな感覚になって来て、とても尋常な気持ちでいられなくなったのですが、「じゃあ、もう一軒、行きましょう」と原井先生は何食わぬ顔で言い、私をまた別のサラ金のATMに連れていって、結局私は、3軒ほど立て続けに、サラ金の店めぐりをさせられました。

サラ金めぐりでいっぱいいっぱいな気持ちでいた私でしたが、私は症状の一つに「火のついたタバコを無意識に持っていて、それを引き出しの中や洋服の間やとにかくどこかにうっかり入れたり置いたりしてしまい、火事を出してしまうのでは無いか?」というのがあり、本当に手にタバコを持っていないか何度も手を見つめて確認してみたり、引き出しや何かのすき間などを何十回も何百回も確認し続けてしまうというのがあったので、タバコの吸い殻を、名古屋の街のあちこちに置いて、確認なしで戻ってくる、というのもやらされました。

地面などの燃えない素材の上に置くのはわりと何とかやれましたが、停めてある自転車のサドルとか、パチンコ屋の店先に飾ってある花輪の花びらの上に置いて来る時はもし火が消えて無くて、私が去った後に火事になったらどうやって責任を取ればいいんだろう?と怖く、本当はそのままその場に置いて立ち去らねばならないのに、ビクビクしながら置いて、そしてすぐに拾って持って帰って来てしまいました。

「持って来たらダメだよ」と先生に言われましたが、何だかいろんな事を立て続けにやり過ぎて気持ちもアップアップで、もうこれ以上不安を抱えると自分が潰れてしまうと思い、言うことを聞かずに持って帰って来てしまいました。あとあとになって考えると、私はやはり先生が言われた通り、怖くても持ち帰るべきでは無かったと思いますが、この時はどうしても怖くてダメでした。

原井先生は次に、私たちを名古屋駅近くの、とある大型ショップに連れて行きました。 私は「うわぁ、嫌だなぁ…」と、本当に嫌に思いました。何故かと言うと、先程も書きましたが、私はありとあらゆる物で「これは本当は私のキャッシュカードでは?」という強迫観念が自動的に沸いてしまい、地元の小さなスーパーに行くのも怖くて出来なくなってしまっており、こんな都会の雑多とした、色とりどりの沢山の商品が、所狭しと置いてある大型ショップなどは、もうその時の私にとっては格好の強迫観念のえじきになる場所で、案の定、入り口付近にあった携帯電話売場では、「どうしよう!これ、もしかしたら私の携帯を無意識に置いたものなんじゃないか?」 と、カバンの中に携帯をちゃんと持っているにも関わらず思ってしまったり、ゲームソフトか何かの四角いパッケージを見ると、「四角い」という事だけで、「これ、私のキャッシュカードだったらどうしよう?」など、とにかく目にするもの目にするもの、次々と強迫観念が浮かんで恐ろしく、だけど確認したくても先生も一緒だから確認するわけにも行かず、そもそも確認ゼロでその場を立ち去る事を治療の一つとして言い渡されていたので、もうガチガチに緊張しながら、なるべく何も目に触れないよう、うっかり意識してしまわないよう、ビクビクしながら、みんなと一緒に原井先生の後について行きました。
他の患者の症状に対する直面治療をいくつかやった後、「じゃあ、刃を出したカッターを持って、おもちゃ売場をうろついて下さい」と、私は原井先生に言われました。

先日書いた闘病記にあるように、自分の記憶という物について不確かで怖くなっていた私は、「自分では覚えていないだけで、知らぬ間に、無意識に、人を殺していたらどうしよう?」という強迫観念があり、それで外出も出来なくなってしまったのですが、原井先生はそれに対する治療として、カッターの刃を出した状態で持参し、無抵抗な子供が多い、店のおもちゃ売場をうろつくように言ったのでした。さすがに刃をむき出しで歩けば、店員が飛んで来て通報されてしまうので、刃の出たカッターをポケットに入れてうろつくように言われました。

素手で歩いても怖くて外出すら出来なくなっていたのにわざわざカッターの刃を出した状態で、しかももし私が無意識に襲ってしまった場合、 私よりも力が弱くて、うっかりするとすぐに死んでしまうかも知れない子供が沢山いる所をうろつくなんて、もし何か本当に起こったら、先生はどうやって責任を取るんだろう?私はその場合、頭がイカれているとして無罪になるんだろうか?でも強迫観念が浮かんで、バカらしい事が怖くなってしまうとは言え、正常な判断は出来るし、私は判断能力があると言う事で実刑になるんだろうか?など色々考えてしまい、まったくもって、やりたくも無かったのですが、どんなに拒んでも、先生はやるまで待ち続けるから逃れられないと思い、カッターをポケットに入れて、気が遠くなりそうになりながら、おもちゃ売場をうろつきました。

気が遠くなりそうにはなったけど、怖くてたまらなくてぶっ倒れそうにはならなかったので、何とかクリアし、原井先生のもとに戻り「やって来ました」と言いました。「そう、出来たねぇ。じゃ、次に行こう」、原井先生がずんずん歩き出したので、その後をついて行きました。

その後、私がいろんな症状の中で、もっとも怖れる事に対する直面が待っていました。 それは、他の普通の人にして見れば、何がそんなに怖いのか全くわからない、と言った事かも知れませんが、人殺しも放火も火の元の不始末も戸締まりも書類のミスもその他全ての事、例えば電話やメールや、時にはごはんを食べながら、「私は今、口をモグモグさせているけど、これは本当に私は物を食べているんだろうか?」など、自分が本当にそれをちゃんとやったのか、やっているのかという事もとても不確かで怖いし、その時々で、そこで生じる強迫観念が、その場では一番怖いと思うので、いろんな観念のうち、どれが一番怖くてどれがそうでもないか、などの順番を付ける事は出来ないのですが、たぶん今現在も根強く症状が残っているので、私にとって、数ある怖い事のうち、これがきっと今の自分にとって、一番怖い事なのかもな?と思う事に挑戦させられる事になるのです。

初めての行動療法

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 朝10時に病院に集合し、最初は一枚の廃墟の中っぽい景色を写したスライド写真を見せられて、「これは何に見える?」と原井先生から聞かれました。
 「うーん…廃墟」
 「なんか戦争で爆撃に遭ってめちゃめちゃに壊れた建物」
 「壊れたピアノがあるから、学校の音楽室だったのかな?」
 とか、みんな先生に一人一人尋ねられ答えました。

 似たような事を他の写真でも行いました。それは「強迫観念に囚われていると、周りが見えなくなる」 という事を気づかせる訓練でした。写真を見ながら何が見えるか、何を感じるか、という、いろんな事柄にも注意を向けて観察する事で、「強迫観念ばかり注目しているけど、本当はもっといろんな事も同時に感じていて、強迫観念は自分が五感でいろいろ感じている感覚の中の一部に過ぎないんだよ」みたいな事を実感するための時間でした。

 他にもイスに座りながら、身体は何を感じているか、イスに座ったお尻の感じはどうだろう?床についている足の裏はどう感じているだろう?その時ほっぺたに感じる空気はどんなだろう?みたいな事を観察して感じる訓練なども行い、この五感でいろいろ感じている感覚を専門用語で「マインドフルネス」と言うそうなのですが、原井先生と岡嶋先生の指示に従い、このマインドフルネスな状態を実感して行けるような訓練をやりました。

 さて、ここまでは、とても穏やかな時間が流れました。治療の進行役の原井先生の語り口も面白くて、これはあくまで私個人の感想ですが、原井先生は、とても理知的で頭が良くてテキパキして、感情に動かされず、私情をはさまず、患者となれ合いになる事も絶対しない、パキッとした医者に徹した先生ですが、何だか言動ににじみ出ている雰囲気が、とても素で、天然な感じのする全く見栄も世間体も無い、飾らぬストレートな姿勢で生きている印象で、とにかく裏表が無くて自然体で、独特なユニークさを兼ね備えた印象を受け、 私は原井先生の事を面白くてステキな先生だなぁ〜と思い、なおかつ強迫性障害が起こるしくみなども知ったりも出来たし、「やっぱ、参加して良かったなぁ〜」とか、うっかり思ってしまっていたのですが、「さあ、じゃあ、外に出て具体的にやって行きましょう」と原井先生が立ち上がった時、そこに地獄が待ち受けている事を思い出して、一気にテンションが下がりまくりました。

 私たち患者は、原井先生や岡嶋先生に連れられて、病院の入っているビルの男子トイレに行きました。そのビルは病院の他に、別の会社や予備校などが入っている雑居ビルで、トイレは共同で、いろんな人が使うトイレでした。原井先生は「見本を見せるからね」と言って、いきなり便器の中に手を突っ込みました。そして便器の中にたまっている水で手を濡らして、その水を自分の顔に塗りたくりました。
 「じゃ、一人一人やってみようか」
 と原井先生はニコニコしながら言われて、一人一人にやらせました。

 これは不潔恐怖で、自分が汚れたり、挙げ句の果てには何かバイ菌に感染する事を怖れて、手洗いが止められず、風呂も何時間も出る事が出来なくなった人に対する行動療法でした。私は確認強迫と加害恐怖が症状で、不潔恐怖の症状は無く、床に落ちたウィンナーも平気で拾って食べちゃうくらいなので、汚れやバイ菌に対する恐怖は無かったけれど、さすがに、どこの誰が糞尿をしたかもわからない便器に手を突っ込み、その水を顔に塗りたくるのは、やっぱり抵抗がありました。でも、やるまで先生もみんなも待ってるし、まあ別にこれくらいなら我慢も出来るし、治療って事ならいいや、と思い、やりました。

 自分の症状では無い事までやらせる理由は、私が思うに、みんながやる事で、それが怖いと思って出来ない症状の人も、「みんなもやったのだから自分もやらなきゃ!」とか「怖いけど早くやらなきゃ、みんなも先生も待ってるし…」と前向きな方向で追いつめられて、今までやれなかった事、怖れていた事に直面するきっかけを与えられる事になるんだろうなって事と、表面に出ている症状は異なっても、何か怖い物に対してがんじがらめになり、不安を解消するために自分であみ出した儀式、例えば手洗いの繰り返しとか確認の繰り返しをしてしまうという根本はみな同じなので、 いろんな究極な不快な事に直面させて、「枝葉は違うけど、根っこは同じだよ。それに対して最悪なストーリーを設定して、それをやる事で、最悪なストーリーよりも怖くはないであろう、今まで怖れていた事をやれるようにするんだよ」って事なんだと思います。

 不潔恐怖の患者さんは「出来ない、出来ない!」と首をずっと横に振っていて、泣きそうだったので、とっても気の毒に思いました。でもそれが治療なのだから、避けてばかりいると何も出来ないままだから、頑張って!頑張ってやって!とも思っていました。その患者さんは、とてもとまどいながら、最終的にはやり遂げました。
 「さあ、じゃあ今日一日は、この手は洗わないで過ごしましょう」と原井先生が言い、先生も含めた全員で昼ご飯を食べに、名古屋の街へと出掛けました。

 とある中華料理屋さんに入って、ごはんを食べました。「ここにあるお手拭きは使わないで、そのままの手で食べましょう」と先生が言い、ちょっと気持ち悪いと思いましたが、そうしました。私はタバコがとても吸いたくて、吸っていいのかどうかオロオロしましたが、タバコは私にとっては水のような存在なので、我慢が出来ず、プカーッと吸い始めました。すると一人の女の子の患者さんが、ザザーッとイスごと後ろに下がり、「私、タバコの煙、大嫌いなんです。髪に臭いがついちゃう!」と言いました。
 「あっ、やばい!」と私は慌ててタバコを消そうとしましたが、「じゃあ、嫌な事をあえて味わおうか。それに慣れましょう」と原井先生が言い、私はお言葉に甘えてタバコを吸い続けました。
 なんかここまでは、他にもいろいろやったけど、直接私の症状に関する事ではなく、恐怖も不安も感じずこなせたので、余裕な態度でおりました。

 店を出た直後、原井先生が私に言いました。
 「サラ金でお金を借りましょう」
 「ええーっ!無茶苦茶やーっ!嫌ですっ!借りたら返さなきゃ行けないし、私、ちゃんと本当に返したんだろうか?って思ってしまって、何度も何度も返したかどうか確認しちゃうと思うから、やりたくないです!」
 「じゃあ、余計にやろう!」と原井先生。

 「でも、自分は返したつもりでいて、本当は返していなくって、知らない間にどんどん金額が大きくなってて、私の貯金じゃ返せなくなるかも知れません!怖いです!やりたくないです!」
 「自分で返済出来なくなったら、お父さんに出してもらいましょ♪やって下さい」と岡嶋先生までもが言いました

 それから原井先生はニコニコしながらも有無を言わせず私をサラ金のATMに連れて行き、 「じゃ、ここからは一人で入って登録して下さい」と言われました。
 「あああっ。怖い…。先生!入るは入るから、実際にお金は借りなくてもいいですか?」
 「うーん。本当は借りた方がより効果があるんだけど、まあ、名古屋で借りると地元に戻って返すのが大変か。じゃあ、あなたは銀行のATMも怖くて使えないから、この中に入って、機械をいろいろいじって来て下さい」

 それもめちゃめちゃ怖い!私の心臓は、口から飛び出そうなくらいバクバクして、足がブルブル震えて来ました。

 前回の闘病記に書きましたが、私は、なごやメンタルクリニックに通い始めて2ヶ月目に、 患者が複数人で行う治療ー集団行動療法治療プログラムに参加しました。金曜日の午後からと、土〜日曜日の朝から晩までの合計3日間を使って行動療法を行いました。私が参加した時は10人の患者がいました。

 年齢は、高校生から40代までと幅広く、参加患者の自己紹介と症状説明があったので、一緒に治療を受ける人達の症状を知りましたが、原井先生より参加患者の具体的な症状やこんな症状のこんな人がいたという事は口外しないよう言われているので、ここでは詳しくは書けませんが、とにかく
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様々な事を怖れていると言った感じで、中には「ええーっ?よくそんな事、思いつくなぁ」とか、「そんなの100万円くらいお金積まれても、全く心配する必要の無い事なのになぁ」などと思うような、とても想像力豊かな恐怖対象を持つ人もいたり、この病気のオーソドックスな症状である、不潔恐怖で手洗いや風呂に何時間も時間が掛かる人や、私のように確認強迫や加害恐怖の人もいました。

 名古屋が地元の人はおらず、みんな日本のあちこちから来ており、話を聞くと、やっぱり私のように、いろんな病院を転々として治らず、その前に通っていた病院に紹介されて来た人が多かったです。みんな「ワラにもすがる気持ちで来た」とおっしゃってました。自分の症状をみんなの前で説明する時も、やっぱり「こんな事が怖いなんて恥ずかしい」という気持ちをみんな持っているので、 とてもトツトツと、口ごもりながらの説明をする人が多かったですが、どんなに突拍子もない事が恐怖対象の方の話も、また自分の症状以外の症状が怖い人の話も、この病気は自分で自分の事がおかしいと思って、ただでさえ自分を恥じているのに、意志に反して恐怖感でいっぱいになって日常生活が出来なくなる事は一緒なので、みんな、本当に辛い目に遭ってるんだなぁ、と、人ごととは思えず、聞きながら胸が痛くなったりしました。

 また、この病気は統計によると人口の2〜3%の人が発症しているとの事で、確率的には低くない病気なのですが、私は自分の身内以外でこの病気を患っている人に会った事が無かったので、こんな病気であるという事をあんまりハッキリ周りに言えず、こんな事が怖くなるなんて私くらいのもんじゃないのか?と、とても世の中から排除されたような気持ちでいましたが、月に1回行われている集団治療に、平均7〜8人の新たな患者が参加している事、そして私が参加した回でもこんな多くの患者がおり、また私と全く同じ事が怖い人もいたりして、「ぬおおおおーーーっっ!!」と、妙な感動を覚えていました。自分だけじゃなく、みんなも一緒にこれから「怖い治療」をやって行くんだ!と思って、 ちょっと心強く思ったりしていました。

 実際、同じ病気の患者さんと一緒に治療をやったから、みんなが頑張って挑戦する姿を見て「私もやらなくちゃ!」という気分になったし、同じ病気で闘っている人に実際に会えた事も励みになり、この集団治療プログラムに参加して良かったと思っています。また、みんな散々いろいろな所に相談しても&グチを言い合っても無駄という事を経験してるせいか、それとも「とにかく治すんだ!」という切羽詰まった強い意志を持って参加していたせいか、お互いの病気の事について話して「いやだよねぇ〜」「怖いよねぇ〜」「そういうの、私もあるあるっ!」みたいな風には話したのですが、お互いしつこく「どうしよう?」とか「ほんと苦しくてダメだ…」とかグチグチと傷のなめ合いになる事は無く、病気って事を除けば、皆、普通のそこらの兄ちゃん姉ちゃんで、病気以外の事を話したりして、みんな性格のいい人で、あの時一緒に参加した人達の事は、私は一緒に辛い体験をした人、というよりも、ほんの一瞬出会っただけでしたが、結構気さくに話した楽しい人達、という感じで思い出します。

 また最初の日は、精神科医の原井先生がメインで行う病気と治療法についての講義の日で、ここでは家族の人も参加が自由で、家族の対応についても講義がなされるので、患者のご両親や結婚相手、彼氏が来ている人もいました。私はその頃、一人では外に出掛けるのが怖くて出来ず、病院までも父と母に車で連れて行ってもらっており、この家族も参加出来る日も一人で行くのが怖くて、両親にも一緒に参加して欲しかったのですが、「めんどくさっ!嫌やっ!私は高島屋で洋服見たいもんっ!」と母に言われて、父には「先生から親は手伝ってはいけないと言われてるし、自分で治すために参加するんだろうっ!一人で行けっ!」と怒鳴られて、そりゃ、わかってるけどさ…と思いながらも、すごくビクビクして一人で病院のドアをくぐりました。

 その最初の講義の日は、私が受ける今回の前の回の、集団プログラム治療を受けた人達も参加しており、その前回受けた患者も7〜8人ほどいましたが、この集中治療プログラムで実際にどんな事を行ったか、そしてそれをやって一ヶ月後の現在、症状はどうなっているかの発表が、この前回の患者によって語られました。みなさん、まだ完治では無い方ばかりでしたが、いくつか症状は残っているものの、出来るようになって来た事も増えて来ていると語られており、「そっかー、やっぱ行動療法は効くんだなぁ」と、とても希望に満ちあふれました。

 しかし、実際にどんな事をやったか、という具体的な治療の内容を聞いた時には、もう、シッポを巻いてズラかりたい、と、恐怖にうち震えました。行動療法としてどんな内容の事をこの病院で行っているかは、この治療を受けた強迫性障害患者やその家族がボランティアで体験談をつづった本を発行しており、私は事前にそれを購入して読んでいたので、ある程度の事は把握していましたが、それでも実際に具体的に聞いてみると、「げーっ!無理っ!想像しただけで怖いっ!やるなんて無理っ!どうしよう?」と、激しく動揺して、明日からの治療本番を、私は本当にこなす事が出来るのか?と、 講義が終わってホテルの部屋に帰った後も、ずっとずっと心配で怖くて、明日行くの、嫌だなぁ〜と、なかなか寝付けませんでした。

 以前、友人知人の方々から、「どこの病院に掛かったら強迫性障害が良くなったのか?」と、よく聞かれました。強迫性障害の治療自体はどこの精神科でも行なってはいますが、しかしながら、専門的な治療をしているのは日本ではごくわずかで、大体の場合は、どこに掛かっても薬をどんどん増やされていって、それでも治らず、長患いになってしまう人が多いのではないかと推測します。

強迫性障害に対してはいくつかの治療法がありますが、我々が共通して行なった治療、なおかつ回復に至った治療は「行動療法」でした。そして、日本でもほとんどいない強迫性障害の専門医、なおかつ行動療法の専門医である医師の治療を受けて、我々は回復に至りました。

どこの病院に行けば良いか、本当に迷うものです。そこで今回、我々が通う、あるいは通った病院の先生の許可をいただいて、ここに、その病院の情報を記載いたします。

☆我々が通っている病院について☆
「なごやメンタルクリニック」

JR名古屋駅、高島屋とは反対側の出口を出て(ビックカメラのある側)、右手斜め前に見える「IMON」と書かれた黒光りするビルの6Fにあります。名古屋駅から歩いて2〜3分。

★なごやメンタルクリニックのサイト★
http://www.fuanclinic.com/nagoya/

精神科の病院なので、全ての精神疾患の診療を行ってらっしゃいますが、特に「強迫性障害」「パニック障害」など不安障害系の治療を専門に行っていらっしゃいます。完全予約制なので、事前の予約が必要です。初診は30分で保険がききます。再診は10分くらいで保険がききます。セカンドオピニオン診療は30分で、こちらは自費(15000円+税)になります。カウンセリングは50分で、こちらも自費(10000円+税)になります。

薬は医師が処方を行い、院外処方箋が渡されるので、任意の薬局で薬をもらうしくみですが、このビルの3Fに薬局があるので、そこを使うのが便利かと思います。

どの診療を受けるかは人によって違うと思いますが、私の場合はセカンドオピニオン診療で初めて受診後、あとは毎回、精神科医の診察と薬の処方(10分程度、再診にあたる)と、心理療法士の先生のカウンセリング(50分)を受けています。またこの病院の医師と心理療法士の先生は、特に「行動療法」治療の専門医であり、診察やカウンセリングの中において、その指導がなされます。(病気の種類によっては、薬やカウンセリングだけの治療になる事もあると思います。)

行動療法は強迫性障害やパニック障害に主に有効な治療ですが、病院の先生に確認したところ、他の精神疾患(欝病、統合失調症、他の不安障害)にも有効な部分があり、そう言った患者さんにも、行動療法を行う事もあるそうです。

具体的な行動療法のサポートは、カウンセリング時に行われますが、必要と判断された患者さんには「集団行動療法治療プログラム」で医師と患者が一緒になって症状に合わせた行動療法を行い、やり方を学びます。またこの集団治療プログラム時に、病気が起こるしくみの講義や、不安にとらわれずに物事を見たり考えたりするための訓練のやり方の指導も合わせて行われます。集団治療プログラムを受けず、カウンセリングでの指導のみで改善された患者さんもいるとの事ですが、1/3くらいの患者さん(特に強迫性障害の患者)は、この集中治療プログラムに参加されているようです。

ちなみに私もこのプログラムを受診しました。この集団行動療法治療プログラムは、毎月1回、金曜日〜日曜日(※現在は土〜月)の3日間をかけて行われています。基本的には、どこかの月で1回だけ受ければいい感じです。
1日目:午後15時〜18時
2日目:午前10時〜18時
3日目:午前10時〜18時

上の時間で、3日間続けて行います。診療代は3日間+翌月の治療後のフォローアップの分を合わせて、110,000円+税です。
また集団とある通り、患者数名(5〜10名程度)と一緒に行います。この3日間で行われる具体的な内容は、1日目は、前回この集団治療プログラムを受けた患者達の治療体験談と治療後の病状についての発表と、今回受ける患者の自己紹介と症状の説明、あとは医師による病気のしくみや行動療法についての講義が行われます。


 2-3日目は、医師とカウンセリングの先生と共に、実際に行動療法を行います。行動療法については、先日書いた闘病記に少し書きましたが、患者が不安や恐怖を感じて出来なくなってしまった事、出来るけど不安を感じて苦しくなってしまう事に、あえてわざと直面させ、それをやらせる治療です。またその恐怖の対象に直面した事による不安を取り除こうと患者が行ってしまう強迫行為(例えば手洗いが何時間も止められない、確認を何度もしてしまう、など)をいっさい禁じ、患者が強迫行為をしようとしても、そのままその場を去らせます。

これは、避ければ避ける程、それに対する恐怖が増してしまう事、強迫行為をすればするほど恐怖対象が余計に怖いものだと脳が認識してしまう、と言う事を踏まえ、わざと苦手な状況に患者をさらして、恐れていた事に慣らしていく治療になります。また不安や恐怖が生じても、その感情はそのままに、日常のやらねばならない事をやれるよう、恐怖や不安に対する耐性をつける訓練にもなっています。

ただ、患者はやりたくても出来ないから悩んでおり、いきなり「さあ、やれ」と言われても、出来るハズはありません。なので最初に医師が手本を見せます。患者数名で行うため、いろんな違う症状の患者がいますが、自分の症状に対する直面を中心に行う一方、自分の症状では無い事に対しても直面を一緒に行います。不安になる対象物は違っても、根っこは同じだからです。また自分が怖がって出来ない事を、医師や他の患者がやるので、自分も頑張らなきゃ、と言う気になれて、1人では出来ない事に挑戦するきっかけにもなります。2日間かけて、病院内のみならず、名古屋の街、店などに出掛けて行います。お昼ごはんも皆で一緒に食べに行きます。

この病院には日本全国から患者が来ており、同じ病気で苦しむ他の人と出会えて励みにもなります。また、他の大学病院や精神科病院の医師が見学に来て、このプログラムに同行する事もあります。
この行動療法プログラムを指導しているのが、院長で精神科医の原井宏明先生と、心理療法士でカウンセリング担当の岡嶋美代先生です。私の主治医でもあります。なごやメンタルクリニックには何人かの医師がいらっしゃいますが、このお二人がメインで診療を行い、行動療法の専門医、専門家です。お二人ともバイタリティーがあり、熱心で、とても心のある先生です。テキパキされた先生方です。とても優しい先生ですが、患者に変に同情したり、甘やかす事はしません。穏やかな先生方ですが、治療においては毅然とした態度で、時には厳しいです。しかしそれは治療のためであり、とても客観的な態度で、私情をいっさい挟まれません。とても信頼出来る先生方です。特に行動療法、強迫の治療に対しては有名な先生方らしく、名医の紹介本にも紹介されています。

原井先生は、ご自身のサイトも開いており、各疾患に対する治療の説明や病院での治療内容、料金なども記載されています。また掲示板があり、病気や症状について疑問に思っている事などを誰でも質問出来るようになっています。

原井宏明の情報公開(サイト名) http://harai.main.jp/
(原井先生の顔写真は、なごやメンタルクリニックのサイトに載っています。)

それからカウンセリング担当の岡嶋美代先生は、治療を受けた患者にご自身のメールアドレスを公開されており、何か困った事、わからない事をいつでもメールで無料で相談出来るようになっています。

原井先生の基本姿勢として、なごやメンタルクリニックを受診後、地元などの他の病院でも受け入れが可能なら、治療法や投薬について紹介状を書いてくれ、地元などの自分が通いやすい病院に転院出来るよう、取り計らって下さいます。

それから、なごやメンタルクリニックと同じ系列の病院が東京・赤坂と横浜にもあります。「医療法人和楽会」で検索し、そのサイトに行くと、赤坂と横浜の病院のサイトがリンクされています。

ちなみに私が診てもらっているカウンセリングの岡嶋先生のサイトはこちら。

 Miyo Okajima counseling (http://www.hearts-and-minds.net/)

 ざっとこんな感じなのですが、詳しくは各サイトをご覧下さい。パソコンでも携帯でも見れます。
=======
※あくまでも参考までにご紹介いたしました。特に強く勧めるものでもありませんし、病院の宣伝として掲載しているものでもありません。このサイトはあくまで、われわれ患者達の独立した立場により運営しております。病院に行かれるかどうかは、ご自身でご判断されますようお願い致します。

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このブログの執筆者である私達は、とある同じ病院で、強迫性障害のための行動療法治療を受けた者です。その病院の医師が、患者同士が病気や治療の情報をやりとり出来るための掲示板を設置しており、そこへの書き込みを通してお互いを知り合うこととなりました。そして以来、親交を深めることとなったのです。私達はみんな、完治はしておりませんが、行動療法を受けた結果、日常生活をほぼ普通に送れるまでに回復しました。ですので症状はいまだに残ってはおりますが、それによって苦悩することは、もはやほとんど無くなりました。

強迫性障害はかなり古くからある病気で、なおかつ患う人の割合も多いポピュラーな精神疾患ですが、難治性の病気として扱われており、現在も、この病気のきちんとした治療を行える病院が少ないのが現実です。そのため、長い期間、何年も何十年も苦しんでいる人が多いのが特徴です。またもう一つの特徴として、自分が囚われている強迫観念が、自分でもバカらしい、こんな事に囚われて不安がるなんておかしいと自分でも自覚しているため、余計に苦しみを感じることにあります。

かく言う私達も、何年も、そして何十年も、この病気を抱えて苦しんできました。幸いにも適切な治療を受け、またそれを自らも遂行して病気の改善に至りましたが、限りのある人生の時間の多くを、この病気による苦しみで費やしてしまったことは、やはりとても悲しいことです。しかしながら、そこにたどり着くまでに失った膨大な時間は、もはや取り戻すことは出来ません。失った過去に執着せず、残りの人生を実り多きものにするために、「今」を懸命に生きようとやっております。

そしてそんな中にあって私達が共通の思いで話し合ったことは、我々の闘病体験、また治療体験が、同じ病気の苦しみを現在抱えていらっしゃるどなたかの役に立てたなら、という事でした。本当に役に立つかどうかは正直わかりませんし、全部が全部、役に立つとも思えませんが、私達が知り合うきっかけとなった、その病院の医師が立ち上げている掲示板上で、さまざまな患者さん達が治療に励み、努力している様子、悩みながら、不安におののきながらも前に進もうとしている書き込みを読んで私達もおおいに励まされ、勇気が出たものでした。
役に立たないかも知れない、だけど、もしかしたら役に立つこともあるのかも知れない…結果はやってみないとわかりません。結果を恐れて行動が出来なくなるのも強迫患者の特徴です。とりあえず、私達は、私達の闘病手記という形で、我々の経験から知り得たこと、味わったことを発信して行くことにしてみました。

もし、このブログが目に留まったとしたら、参考になるかどうかわかりませんが、お読みいただけたらと思います。そして、もし、ここを読んで、ほんの少しでも、読まれた方が前に進める一助となれたら、本当に幸いに思います。この病気で苦しむ方々が、少しでもその苦しみから解放されることを願ってやみません。決して更新頻度が高くないブログですが、よろしくお願い致します。イメージ 1

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