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フィリピンで静かな場所を見つけるのは難しい。極言すれば、どこもかしこもやかましい。僕は不快な雑音があると落ち着かないたちである。だから、フィリピンで現地人の間で働いていたときも集中力を維持することが困難だった。そこでは仕事中のおしゃべりや鼻歌が絶えず、ポップやロック音楽も流れていた。本当に音をたてるのが好きな人たちだと思う。でも、彼らにとってそれが普通である。喧騒にあふれた日常に育った彼らにとって、騒音は空気あるいはリズムそのものなのかも知れない。現地にいる限り慣れなければならないのだが、僕にとってはただ迷惑以外の何ものでもなかった。
当時、同僚のキャリアウーマンにそのことをぼやいたところ、「本当にここ(職場)は騒々しいよね。だから、私は大事な仕事は家で片付けるの」と言っていた。ちなみに彼女は職場で最も騒がしいうちの1人だった。彼女は自分の従姉が管理するアパートに住んでいて、そこはとても静かだからと言い、僕に空き部屋を借りるよう勧めてくれたことがある。部屋を見に行ったところ、確かに物音すらしないほど静かで、美しく落ち着きがあり、願ってもない好条件だった。僕は即借りたいと申し出たが、家賃の額を聞いて唖然とした。僕が日本で住むワンルーム・マンションの3倍であった。ここでは、静けさも金で買わなければならないのかと肩を落とした。
フィリピン人の同僚たちの仕事ぶりは決して生産的でなかったが、のびのびとストレスなどまるで感じさせないものだった。彼らのような感覚で仕事ができたらどれだけ楽なことだろう。彼らを見るにつけ、僕自身の現状に疑問を感じることもある。でも、常に前進したいという気持ちに変わりない。今後、これまで馴染んでこれなかったフィリピンの騒音文化とどう新たに折り合いをつけていこうか。
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