平井俊顕 (ひらい・としあきToshiaki Hirai)ブログ

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日本経済の20年を振り返る

今日の経済危機を招いたのは、経済政策 (金融政策と財政政策)の失敗によるところが大きい。1985年の「プラザ合意」に始まる対米協調路線が躓きの元にあったという説があるが、私見によれば、真の責任は、自国の経済状況に合わせて政策を調整することに失敗した政府に求められる。
「プラザ合意」による協調介入により、円高は急激に進んだ。そのため、「円高不況」の到来が懸念され、政府は低金利政策を中心とした金融緩和策と公共投資を中心とした財政政策をとった。これにより景気は拡大基調を続けることができた(ここまでは順調であった)。しかし、この間にわが国の金融構造は、間接金融から直接金融(および自己金融)に大きくシフトしていた。この変化
に対応した経済政策をとることができなかったために、日本経済は次第にバブル的展開をみせるに至った。とりわけ金融引き締め策をとることなく事態の進展を許したため、バブルの暴走を許すことになってしまった。
他方、これを止めるべく、不動産融資の総量規制に始まる一連の急激な引き締めは、バブルの突然の崩壊をもたらすことになってしまい、デフレが進行することになった。この引き締めを早く解除することが必要であったのだが、政府はそれを怠った。そのため、地価、株価の暴落に始まる一連の資産デフレが進行してしまうことになった。そして経済は金融システムの破綻というところにまで立ち至り、いたずらに時間が過ぎることになったのである。
 経済政策の舵取りに失敗したことで、日本経済は自縛的な状況に追い込まれてしまった。
これらの政策的失敗は、「構造改革論者」が支離滅裂な政策をとることによって、さらに一層悪化した。本来、構造改革はできるだけ経済活動を市場に任せるべしとの思想に立ち、規制を撤廃することで効率的な経済構造を作り出そうとするものである。そのこと自体に問題があるわけではない。しかし、それが同時にマクロ経済政策をないがしろにするというスタンスをあわせもったために、経済政策の運営が合理的に行われなくなってしまった10。財政政策の否定 (公共投資への異常なまでの拒絶反応) 、デフレ期に事実上のデフレ政策の断行などは、その象徴的事例である。
日本経済は市場経済である。しかし、現在の民間経済(市場経済)には、日本経済を自力で回復させる能力を欠いている。起業者がいたとしても、現在の金融機関には資金を供与する能力と意思が欠落している。日本ではヴェンチャー・キャピタルはアメリカと異なり、まったく育っていない。
それに直接金融への道は、株式市場の崩落とでもいうべき状況のもと、完全に断たれている。市場経済を立て直すカギは賢明で大胆な政策をとれる政府にかかっているのである。しかるに、失敗した経済政策のもと、民間経済は暴走(バブル)した後、いまでは沈滞(デフレ)しているなか、当の政府はといえば、マクロ経済政策を無視するというていたらくなのである。
「民間活力、市場の自動的調整メカニズム、市場による企業の参入・退出メカニズムの存在、自己責任による経済行為」等々 ― こうした標語は現在の日本経済の惨状の前では色あせている。経営者は自信を喪失し、未来に身を賭する存在ではなくなっている。現在、目立つのはリストラによる経費削減行為である。これにより企業は財務体質の改善がある程度可能になるが、その結果、大量の失業者が発生している。そしてボーナスの削減、賃金の切り下げが日常化しており、デフレ圧力は一層の高まりをみせている。
市場社会における市場を利用した効率性と、それを保証する国家・政府の役割の双方が重要であることを、ここで改めて強調しておきたい。経済主体がある程度の安心感をもつことは重要である。それを保証する制度的枠組みとその維持は政府の責務である。そのなかでこそ人々は安心して自信に満ちた競争を展開することが可能となる。これにたいし、不安感に駆られ、将来的な見通しもなく、競争の結果、人々が社会から脱落するという社会は、自信を喪失した社会である。「自己責任」は、ある程度の安定した社会システムが維持されて初めて意味をもってくるものであり、ホッブス的な弱肉強食の競争は好ましくない。社会を不安に陥れるだけだからである。

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