|
名古屋にも太宰ファンはいるはず、そう信じ、ネットで調べてみる。無い、全くと言って良いほど無い。桜桃忌の間近にし、私はどこに身を寄せたら良いものか、うろたえるばかりだった。
埼玉にいた頃は、没後60年の年に、三鷹に「フォスフォレッセンス」という古本カフェを見つけた。もちろんこの名は太宰治の作品から取ったものである。
( http://page.freett.com/phosphorescence/ )
女性のご主人が、太宰に寄り添いと京都から三鷹市に移り住みお店を開いたという、筋金入りの太宰ファンが集う店でもある。ここで私は、太宰が住んだ大宮の事実をお店のイベントで発表したこともあった。
であれば、フォスフォレッセンスと同じような、朗読のイベントを開催したり、ひとつの作品について論じ合ったりできる、そんなアクティブな古本カフェなるものがあるのではないかと、検索を続けた。
あった、1件。その名は「リチル」。名古屋大学の近くに構えるそのお店は、古本、少々の雑貨、そしてカフェといったスタイル。
( http://www.litir-books.com/ )
ホームページがやたらとお洒落なあたり、はっぱり女性を当て込んだ感じなのだろうか。その中のダイアリ、ご主人の日々の出来事、思いが綴られている。こだわり(ある意味偏屈?)な所、わたし的には好感が持てる。話せば分かる、かもしれない。
という事で、ある日、この店を訪れた。
お客は、おそらく名古屋大生ではと思われる若者たち。それから、それらよりも少し年上の、落ち着いた女性がひとりで。そして若いカップル。ご主人とも、馴染みな雰囲気で言葉を交わしている。
アイスコーヒーを注文し、本棚を眺めてみる。太宰治の弟子、小山清の文庫本が平置きされている。なぜだ?
「新潮日本文学アルバム」の太宰治の本が置いてあった。あるじゃないか、こういう店。脈がありそうだぞ。
席に戻り、コーヒーを片手に、これらの本を読み進める(中身は知っているのだけれども、一応)。
「新潮日本文学アルバム」を読み進めて、私は、はっと思った。有名な銀座のバールパンでの写真、そう、林忠彦のあの写真のページに、同じこの写真のポストカードが挟まれていたのである。
裏を見ると、ずいぶん昔の展示会の題目があった。元の持ち主が、そこで配られたか、あるいは購入したか。なんだか、太宰が「やぁ!」と無邪気に笑いながら顔を出したように見えて、私も思わず笑ってしまった。
ご主人と何か話ができないものかとその機会をうかがうも、常連さんたちとの楽しい会話に終始し、こちらへ目を向けてくれることはついになかった。
1時間ほど費やし、お勘定。
先ほどの小山清の文庫本と、新潮日本文学アルバムを手にカウンタへ出向いた。
「この本のここに、太宰のポストカードが挟まっていました。
私はこの本を持っているので、このポストカードだけ、本の額面の300円で売って下さい。
本は太宰が好きな人のために残して置きます。」
「そ、そうですか。」
ご主人は不思議そうな顔をしながらレジを打つ。
「ここではイベントなどはあるのですか?」
「えぇ。作品の読み合わせや、朗読会なども。あとは和菓子を作りながら日本酒を呑む会などもやってます。」
「桜桃忌に、名古屋の太宰ファンはどうしてるのかと思いましてね。」
ご主人ともう少し話を進めたかったが、何か忙しげな様子だったので、今日の所はここまで。また来てみようかな。
ここで、原きよさんや中村雅子さんの太宰作品の朗読会を開いてくれないものか。または、太宰が住んだ大宮ネタならば、私がコメンテーターに回ってもいいかな。そんな事を思いながら、家路に向かった。
※ お店で見つけた「新潮日本文学アルバム」
|
お久しぶりです。まだまだ太宰を追ってくださっていて、嬉しいです。東京に来る前は岐阜に住んでいた私、名古屋はすぐ近くでした。「リチル」魅力的だわ。
2013/11/18(月) 午後 10:42 [ 原 きよ ]