太宰が住んだ大宮 情報ブログ

太宰治が大宮に住んだ二週間を濃ゆ〜く調査しています。

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名古屋で太宰、唸るように呟いてみても、名古屋と太宰、接点などまったく無い。無い!
そんな中、ひとり悶々と、名古屋へ持ってきた膨大な大宮太宰研究資料を眺め、読み進め、でも名古屋に接点は無い!

ある日、名古屋一番の繁華街、栄に近い久屋大通公園を訪れた。名古屋で大きなイベントと言えば、間違いなくここ。だから私は、思い立つとママチャリを走らせ、この場所に来る。
たくさんののぼり、何かを焼いているモウモウとした煙、おっ!何か祭りだな!
「ふるさと県人会まつり」に遭遇。名古屋に事務所を持つ各都道府県の県人会の面々が、そのふるさとの味や観光案内をひっさげて終結!な、グルメな私が食いつくお祭りだった。

沖縄のオリオン生ビールと愛媛のじゃこ天、鹿児島の芋焼酎と山形の玉こんにゃく、秋田の銘酒と大分中津のから揚げなんていう、単なる旅行ではありえない取り合わせでの味が楽しめるとあって、何度もその組み合わせを変えて楽しんだ。
ステージでは、各方面の郷土芸能。狭い舞台に徳島の阿波踊りの踊り手が舞う。沖縄のエイサーの太鼓が響く。も〜たまらん!

青森県のブースを見つけた。ブースを仕切っているおじさま、ねぶたのハネトの格好をして、声を掛けてきた。
「青森へは行った事はあるかい?」
ほら来た。酒も入っているので、私の太宰話が始まる。
埼玉で太宰の研究をしていたこと、名作『人間失格』が実は埼玉県の大宮で脱稿という話は太宰ファンでもあまり知らないだろうということ、その時に太宰の世話をした人が今も都内で健在だということ等々、普段のうっぷんを断ち切るような私の爆弾トークに、合いの手も入れられずただただ聞いていたおじさま(東海地区青森県人会の会長さんだった!)が、
「あんた、一杯飲んでけ」
そう言って、ブースに出ていた地ビールである奥入瀬ビールを一杯ご馳走して下さった。
「今度何かの機会で今日の事を話してくれ」
そう言って、青森県人会のパンフレットを渡してくれ、県人会の方を紹介頂いた。
「明日は知事が来るからサ、また来ればいいサ」
青森県知事、そんな凄い方と、この名古屋で対面できる機会などめったにないな、というわけで、次の日も会場へ。

まず会長さんにご挨拶。そこに三村知事登場、りんご柄のアロハシャツ、下には“青森ほたて”と書かれたTシャツ姿。明るい、とにかく明るい人だ。会長さんは、私を知事に紹介して下さった。「太宰研究家」ですと言葉を添えて。
私は知事に、太宰を知るキーマンで、どんな研究家も知らない人が都内にご健在なのを知っています、とお話した。知事は目を丸くして食いついて下さった。あまりの人ごみで多くは語れなかったのだが、知事と太宰話で繋がった。
あとで津島克正さんからお聞きしたが、東大文学部卒業、学生時代は小説家も目指した方、そして新潮社に就職という、知事の肩書きとしては異例中の異例、さらに彼、太宰ファンだという。さすが青森の知事になる人は違うなぁ。

この2日間のイベントの最後を締め括るのは、青森県PR。青森県のゆるキャラ、決め手くんといくべぇがスタンバイし、県人会の皆さんもねぶた祭りのハネトの格好で準備万端。私も椅子席の前列で、その時を待つ。
三村青森県知事とミスりんご、決め手くんといくべぇが登場。三村知事は、スコップと栓抜きを持って、津軽三味線を模して掻き鳴らす!なんて明るい知事なんだ。埼玉の上田知事とは全然違う。
青森の踊り、三味線と続き、最後はねぶた囃子。県人会の人たちが、会場にいる若者を強引にステージに引きずり出し、踊りに加わせる。イベントの最後を飾るには最高のフィナーレとなった。

イベント終了後、ねぶた囃子の余韻にしばし呆然としていた私、我に返り、会場をあとにする。
名古屋に太宰との接点など無い!と言った私だったが、県人会という青森県の窓口が名古屋にあるじゃないか!
ひと筋の光、見つけたり!
ここから、名古屋太宰化計画は始まろうとしている。

※ 三村青森県知事、東海地区青森県人会会長との奇跡の3ショット!

三島の面影を探して

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私が昨年より、名古屋へ転勤となった事業は色々訳あり、この11月で消滅となった。埼玉へ帰れる理由も無く、結局は片道切符になってしまったようだ。大宮とも次第に遠くなってしまった感があり、このまま「太宰が住んだ大宮」も先に進めないのかと思うと辛い。

名古屋の事業所は、静岡県も範疇となっている。お世話になった取引先に、この消滅する事業の引継ぎご説明と御礼をするために、静岡市、沼津市を訪れた。午前中に静岡市、そこから鈍行列車に乗って沼津市。途中の車窓からは、富士山が大きく姿を現した。

以前、富士市から甲府市へ、JR身延線でぐるりと富士山の麓を回った事があった。どうみても、富士山は甲府側のほうが美男子である。静岡側からの富士山はドン臭い、っていうか田舎者に見える。太宰も、美智子夫人と逢った甲府市側と、下曽我に行った静岡側と、両方の富士山を見ている。どちらの方が素敵に感じたろうか。甲府側の富士山については、富嶽百景にあるように絶賛しているが、静岡側からのそれはまったくない。彼もそう思ったに違いない。

沼津市で用件を済まし、まだ3時少し前、帰りの新幹線に乗り換えるにはと調べると、三島駅だという。三島?なにか覚えがあるぞ!
そうだ、太宰が帝大時代にひと夏を過ごした街、ララ洋菓子店の女店員に思いを寄せた街、のちに『満額』のモデルとなるお医者様が住んだ街、そうだ、三島だ。
太宰の住んだ街を、青森、三鷹、鎌倉、水上、下曽我、そして大宮と巡った私が唯一、行ってなかった街、三島。もうこんな遠地出張などないかもしれない最後の旅が三島とは、いやはや太宰さんもニクい演出じゃないか。

名古屋行きの最終新幹線こだまに乗るにはまだまだ時間がある。とはいえ、太宰の見た景色を巡るには明るいうちが限る。思わず足の運びが早くなる。

三島駅、開業当時のままの駅舎はどこかモダンな佇まいを見せていたが、改修工事が進んでいるのか、囲い塀が周囲を覆っていた。
駅前には、いきなり森。太宰が住んだ街は、楽寿園と呼ばれる大きな公園の向こう側のようだ。時間が無い。一気に突っ切るか。ところが、この森を抜けるには入園料が要るらしい。わずか300円だが、通過のために払うにはもったいないな。迂回しよう...

そうなると、方向音痴な私には、大冒険が始まる。なにしろ今回の旅には、東京紅團に載っていた地図しか持ち合わせていないのだから。遊園地の猿電車のような伊豆箱根鉄道の電車が、わずかな家々の隙間を縫うように走る。ちょっと“鉄”な私には、なんともこの風景は楽しい。と言ってる場合じゃない。時間が無いんだ、今日は。

この電車と並行するように走る1本の道路をようやく見つけた。この先に太宰の住んだ街がある。遠くに、青い大きな家が見えた。「松根印刷所」と大きな文字。昭和9年、佐吉の家に居候していた頃に、寝泊りしていた所だそうだ。「私は男はきらいじゃ」『老ハイデルベルヒ』で、佐吉の妹、さいちゃんとの楽しい会話が聞こえて来そうだ。そしてその先、現在は和菓子屋になっている、この辺りが坂部武郎酒店だった。この間を、毎日太宰は歩いていたのだ。気持ちはいっぺんに昭和初期に戻る。

後ろ髪引かれる思いで次に向かったのは、ララ洋菓子店。太宰はここのママさんが好きでよく訪れていたという。そのママ、千代子さんは当時23歳、一番危険な頃の太宰がよく手を出さずに済んだものだ。奇跡!(もしや?)
その千代子さんも平成21年に96歳で亡くなられた。またひとつ、生き証人が姿を消した。
1階が洋菓子店、そして2階が喫茶店になっていた。木の壁の店内ははやりその昔のままなのか。ショートケーキと珈琲を注文。千代子さんの娘さんと思われる女性と若干歓談。その方はひとりで1階も見ていたので、あまり多くは話せなかった。

次、『満願』の舞台であると言われる今井産婦人科病院があったとされる場所は、現在は駐車場になっていた。そのすぐ前には、昔ながらのタバコ屋、そして元看板娘(?)のおばあちゃんが店の番をしていた。このおばあちゃんであれば、その昔の事をいろいろ知っているかもと、しばらく張り込んでみた。おばあちゃんは、誰かとずっと電話中で、いつまで待っても切ろうとはしない。どれだけその前で待ったろうか、かなり粘ったのだが、いっこうに状況は変わらず。ついには薄暗くなってしまい、私はその突撃取材を諦めた。

街の間には、きれいな水が流れる小川の清流が私の心を和ましてくれた。理由は要らない。居心地のいい街であることは間違いない。
さあ、暗くなってきた。どこかでいっぱいやって、名古屋に帰るか。

※ ララ洋菓子店で頂いたケーキと珈琲。落ち着いた時間がゆっくり流れた。

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