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東京の講演会では、難産で緊急の帝王切開を経験した母親から、出産のリスクも知らせて欲しかったという意見、男性の医師から、最近は母親教室で「妊婦に不安を与えるようなリスクの話をするな」と言われるが、きちんとリスクを説明すべきだという意見がよせられた。 妊婦に出産のリスクを再認識してもらえば、医師との信頼関係も増して、何かあればすぐ訴訟というケースも減るだろう。また、妊婦の悩みや心配事は共通するものがあるので、インターネット上にあれば、毎回答える手間も省ける。ゆくゆくは厚労省や日本産婦人科学会など、信頼できる組織のホームページにデータベース化されれば、もっとアクセス数も増えるにちがいない。 “出産は安全”は、当たり前ではない 宋氏の11カ条を元に、妊婦が知っておきたい知識を妊娠・出産のリスクを中心に紹介しよう(なお、括弧内の数字は11カ条の何条目にでているかを示している)。 わが国の妊婦死亡率は、およそ110年前(明治33年)には出産10万件当たり400人程度だったが、2006年には約5人に低下しており、これは世界でもトップクラスだ(図1)。 明治初期の妊婦死亡率が、出産10万件当たり400〜150人、現在のアフリカの妊婦死亡率が400〜600人近くあるところから、医療施設でない自然な出産のリスクはこの程度だと考えられている。 現在の妊婦死亡率が出産10万件当たり約5人だから、明治時代の「お産婆さん」が胎児を取り上げていたときに比べ、医療施設での分娩で衛生状態改善や出産のリスク管理ができるようになり、およそ100倍、“出産が安全”になったといえる。 妊婦の死亡率が10万件当たり5人というのは、身近に出産で死んだ人がいないということだ。母親学級でも妊娠・出産のリスクについてはほとんど教えられないから、今や「出産は安全が当たり前」と考えられている。 しかし、難産で急に帝王切開になることや、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病という合併症もある。また、高齢化出産の増加で、高血圧や糖尿病、腎臓病などの持病を持った妊婦の割合も増えている。今でも出産にリスクはつきものだ。 「出産で体を張るのは女性です。また、その女性に、妊娠したらお産にはリスクもあるという自覚を持って欲しいものです(11カ条の(2))」と宋氏は力説する。 安全神話が世の中を支配しているので、何かあるとそのショックが容易に医療側への攻撃に変わって、訴訟に発展するケースもある。産婦人科医がこれまで頑張って出産を安全にしたことが、訴訟圧力となって、医療現場から立ち去らせているというのは、皮肉な話だ。 稀な疾患だが、“死亡率の高い疾患”をどうするかが課題 かつて、妊婦の死亡率が一番高いのは、出産後の出血だった(経腟分娩で1,500mL、帝王切開で2,500mLの出血を危機的出血という)。今でも発症数は多いが、輸血が発達しているので、死亡率は0.4%とわずかだ。出産時には出血以外にも母体や胎児の状態が急変することがあるので、緊急事態にも対応できる産院を選ぶことが大切だ。(11カ条の(9)) 現在は、発症数は少ないが死亡率が高い疾患や突然発症して経過が急な疾患---脳出血、羊水塞栓症*注1、常位胎盤早期剥離*注2など---が問題になっている (表2)。 http://medical.nikkeibp.co.jp/all/gdn/report/200905/images/thumb_510824_h2.jpg 表2 重症産科疾患とそれによる死亡(浜松医科大学学長・寺尾俊彦氏講演スライドより http://medical.nikkeibp.co.jp/all/gdn/report/200905/images/thumb_510824_z2.jpg 図2 「周産期医療体制の充実」(浜松医科大学学長・寺尾俊彦氏講演スライド) これらの疾患は産婦人科医だけでなく、脳神経外科や他科の医師の応援が欠かせない。最善を尽くしても力が及ばないこともあり、妊婦の死亡率をゼロにできない原因にもなっている。家族にとっては母体・胎児ともに失うことも多いので、救命救急センターと連携した周産期医療体制の充実が叫ばれている(図2)。 東京都は、墨東病院の事件を教訓に、救命救急センターと総合周産期母子医療センターを密接に連携させ、救命処置が必要な重症の妊婦を必ず受け入れる「母体救命対応総合周産期母子医療センター」(いわゆる「スーパー総合周産期センター」)の稼働を3月25日から開始した。 しかし開始早々、指定病院の1つである、日赤医療センターが、労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受け、波乱の幕開けとなってしまった。救急医からは、ただでさえ大変な救命救急センターの負担が増えるのではないかとの声も聞かれ、今後の動向が注目される。 妊婦と胎児の安全を守るため、必ずかかりつけ医を持つことが大切(11カ条の(6)) 妊婦検診は保険が効かないので、余計な出費を嫌って、かかりつけ医を持たずに出産ぎりぎりに病院に駆け込む「飛び込み出産」が増えている。病院にとっては、母体や胎児の状態が不明な妊婦の受け入れは、他の妊婦へのリスクも大きいので救急搬送の受け入れを断る理由にもなる。 妊婦検診は全部で14回ある。妊娠に異常がある場合には、早期に発見して適切な処置をするため、妊婦と胎児の双方のチェックが欠かせない。緊急時には、妊娠週数と胎児の推定体重などのデータが必須となる。妊婦と胎児の身を守るため、早くからかかりつけ医を持って妊婦検診を受けておくことが大切だ。 自治体によって異なるが、妊婦検診の受診率を上げるため、これまでも5回の補助券や2回の無料券を配布して公的補助を行ってきた。今年4月からは、公費負担が拡充されて14回の無料券あるいは補助券が配布されるようになった。3月までに受けた分も申請すると、検診料が戻ってくる所もあるので、市町村の担当窓口に問い合わせるとよいだろう。 http://medical.nikkeibp.co.jp/all/gdn/report/200905/images/thumb_510824_h3.jpg 表3 「周産期医療崩壊の実態」 (浜松医科大学学長・寺尾俊彦氏講演スライドより 一部改変) 産婦人科の「今そこにある危機」 産婦人科は、医療崩壊がもっとも深刻な診療科だといわれている(表3)。妊婦側から見れば、分娩施設が減って出産する場所の無い「お産難民」が発生。医療側では、人手不足、過重労働、訴訟圧力など簡単には解決しない問題が山積している。 「産婦人科というのは、お産や妊娠中のトラブルがあるので、365日24時間体制をとっている病院以外診ることができません。すると、人手不足でも対応せざるを得ず、ベテランの先生でも、家庭を顧みずに月10〜20回の当直や夜間の呼び出しで疲弊しきっています。 医局の先輩で何人も鬱病でやめた人もいるし、やる気があって頑張っていた先生が燃え尽きて小さなクリニックに行ってしまったという例もあります。人が減るともっと少ない人数で診療を支えなければならないので、悪循環です」と宋氏は危機感をつのらせる。 もはや、問題解決には政治・行政といった大きな力が必要だが、現場の地道な努力も不可欠だ。宋氏が始めた取り組みは小さな一歩かもしれないが、それが大きな飛躍につながることを期待したい。 *注1.羊水塞栓症 羊水が母親の血流に入ることがまれにあり、羊水は肺に到達して肺の動脈を収縮させる。分娩中や分娩直後に、突然、急激な血圧低下や呼吸・循環状態が悪化してショック状態となる。死亡率は60〜80%。頻度は8,000 〜30,000件の分娩に1回とごくまれな疾患。 *注2. 常位胎盤早期剥離
子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、妊娠後半期や分娩中に、胎児が生まれる前に子宮壁から部分的または完全に剥離する疾患。胎児への酸素と栄養の供給が突然絶たれるので、広範囲の剥離は胎児死亡となる。母体がDIC(播種性血管内血液凝固)という状態になると、血が止まらなくなって、出血のため母体の生命にも危険が及ぶ。母体死亡率は4〜10%、胎児死亡率は30〜50%、頻度は全妊娠の0.4〜1.3%程度といわれている。直ちに高度医療施設へ搬送すべき、緊急を要する疾患。 |
妊娠の心得11か条 産科
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妊娠して、安定期さえ越えれば子供は生まれてくるものだと思っていました。2人目の子供が母体の中で息を引き取るまでは。
無事に生まれてきてくれた1人目の子と、無事に生んでくれた妻、無事に取り上げてくれた先生及び看護師さんに心から感謝します。
2009/6/2(火) 午前 10:28 [ もんちゃん ]
りろりん さま、
悲しい思いをされたのですね。 お悔やみを申し上げます。 一子の方は大事にお育てくださいますますよう。
産科の現在の状況は、逼迫しております。いろいろな状況があって、産科医の心を折る状況が続いたもので、使命感だけでは、続けていく状況が困難になってしまいました。
日本の産科医は、ごく少数が、最後の力を振り絞って、立ち向かっている状況です。この方たちが、心が折れてしまったら、一挙に破壊になる状況です。 医師の心を守れるのは、患者さんと地域だけですし。 少しでも、現在の産科の状況をご理解いただきますように。 のせております。
2009/6/2(火) 午前 11:27 [ おみぞ ]
私は妊娠出産を2回経験しました。どの子も「超」が付くほどの安産でした。
でも、医療関係者であるために最悪の事態を耳にする事が多かったので、常に不安でした。
周産死亡率が低いからって命がけなんだぞとお気楽な周囲にいってましたね
だってね、全く違う「個体」が腹の中にいるんですよ!DNA半分同じでも性別違うこともあるし。しかも、目で見られない。普段の管理は自分の感覚のみ。責任も重いですよ。
幸せなことだし「闇」の部分なんか見たくないだろうけど
正しい知識を与えられると思われるのも困る。「リスクを言っておいてほしかった」ではなく「リスクは?」と積極性もほしいですよね。
分娩も選択肢がたくさんあってよくなったけど、「希望」と「状態に合っている」は違いますしね。
なんにしても、みんなが笑顔で終えられる妊娠、分娩であってほしいですね
2009/6/2(火) 午後 1:10 [ mic ]
mic さま
おひさしぶりです。 DNAが自己の半分しか持たないものを、自己の体の中で育てているわけですから、拒否反応が出ても不思議でない状況なのですね。 それに、年齢とともに、母体の血管、臓器、筋肉の収縮等に劣化が訪れます。以前より栄養、公衆衛生環境は改善されていますが、それでも、劣化は少し先にずれただけです。 それだけ子孫を残すのは、生物にとって、自己の命を掛けた行為ですから。 医学の進歩と国力がそれを支えてきましたが、医学もマンパワーなしで存続できないのは、あまり変わっていませんし。
うまく行く方もいれば、そうでない方も出てきます、そうでない方になる可能性は、誰にでもある事を、ご了解いただきたく存じます。
私の様な守銭奴が、言うせりふでもないのですが。 悪徳シ商売人ですので。
2009/6/2(火) 午後 1:49 [ おみぞ ]