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アナフィラキシー
1.アナフィラキシーとは?
医薬品(治療用アレルゲンなどもふくみます)などに対する急
性の過敏反応により、医薬品投与後多くの場合は30 分以内で、
じんま疹などの皮膚症状や、腹痛や嘔吐などの消化器症状、そし
て息苦しさなどの呼吸器症状などを示します。さらに、血圧低下
が急激にあらわれることがあります。これはアナフィラキシー・
ショックと呼ばれ、生命の維持上危険な状態です。医薬品による
ものは年間で数百例が発生していると推測されます。
頻度の多い医薬品には、造影剤、抗がん剤、解熱消炎鎮痛薬、
抗菌薬、血液製剤、生物由来製品などがあります。
小児においては内服薬で、食物アレルギーと関連して卵由来の
成分を含む塩化リゾチーム、牛乳由来蛋白を含むタンニン酸アル
ブミン、乳酸菌製剤、経腸栄養剤によるもの、インフルエンザワ
クチンによるものが主なものです。発症機序は主として即時型(I
型)アレルギー反応によると認識されていますが、一部の薬物で
は初回投与時にもみられるなど、これで説明がつかないものも存
在します。
2.早期発見と早期対応のポイント
医薬品の投与開始直後からときには5 分以内、通常30 分以内
に症状があらわれます。内服薬の場合は症状発現がこれより遅れ
ることがあります。以前に使用したことのある医薬品の再投与時
に発現することが多いのですが、抗がん剤の一部では、この限り
ではありません。
多くの場合、まず最初に「皮膚のかゆみ」、「じんま疹」、「紅斑・
皮膚の発赤」などの皮膚症状がみられ、また「胃痛」、「吐き気」、
などの消化器症状や、「視覚の異常」などがみられ、「声のかすれ」、「くしゃみ」、「のどのかゆみ」、「息苦しさ」などの呼吸器症状が出現してくることもあります。これらの症状がみられる場合であって、医薬品を服用している場合には、緊急に医師・薬剤師に連
絡して、すみやかに受診してください。
「息苦しさ」が発現した段階では、ともかく緊急に医療処置を
要請する必要があります。緊急医療の対象となりますので、医療
機関の外におられた場合には救急車を呼ぶことが大切です。
やがて、循環器系の症状で血圧低下を伴って動悸がしたり、不
安、恐怖感、意識の混濁などの神経関連症状が現れてきます。こ
の段階では、血圧が極端に低下して、アナフィラキシー・ショッ
クに至っている可能性が高いものと考えられ、危険な状態です。
小児の場合には、大人のように症状が明確でない場合や、症状
を正確に自分で訴えることができないために注意が必要です。何
となく不機嫌、元気がない、寝てしまうなどということなどがア
ナフィラキシーの初期症状であることもありますので、大人より
も注意深い観察が必要です。
(参考)その他知っておいた方が良いこと息苦しさなどの呼吸器症状がみられれば、まず、アドレナリン(エピネフリン)という薬の筋肉内注射(通常0.3〜0.5 mL)を行います。一度アナフィラキシーを経験さ
れた患者さんでは、再度の接触を避けるとともに、上記の自己注射薬を携帯していただく場合もあります。心配な方は、アレルギー科、皮膚科などの専門家にご相談ください。
すでにご自分でこの治療薬をお持ちの場合で、医療機関外におられた場合、あるいは医療機関にいても医療者の対応が遅れるような場合には、自己注射を行うことが望まれます。ぜんそくやアレルギー性疾患をお持ちの場合は、お手持ちのお薬、例えば発作止めの気管支拡張薬の吸入や抗アレルギー薬、ステロイド薬の内服をとりあえず行うこともよい手です。
なお、アナフィラキシーでは一見軽症でも状態が変化することがしばしばおこり、急激に状態が悪化することがあります。一定の時間が経過していても、何らかの症状があればできるだけ早急に医療機関に受診してください。
なお、この病態を起こしやすい方は、他の医薬品でアレルギー反応の既往のある方、食物アレルギーで特に卵または牛乳アレルギーの方、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーなどアレルギー性疾患の既往のある方などです。
高血圧や心臓疾患、前立腺肥大の治療に用いられるβ遮断薬やα遮断薬を服用されている場合には、注意が必要ですので、その旨を当該医療関係者にお伝え下さい。
※ 医薬品の販売名、添付文書の内容等を知りたい時は、このホームページにリンク
している独立行政法人医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームペ
ージの、「添付文書情報」から検索することができます。
http://www.info.pmda.go.jp/
B.医療関係者の皆様へ
薬剤性のアナフィラキシー反応とは、医薬品(治療用アレルゲンなども含む)などに対する急性の過敏反応により、医薬品投与後通常5〜30 分以内で、じん麻疹などの皮膚症状、消化器症状、呼吸困難などの呼吸器症状が、同時または引き続いて複数臓器に現れることをいう。さらに、血圧低下が急激に起こり意識障害等を呈することをアナフィラキシー・ショックと呼び、この状態は生命の維持上危険な状態である。
アレルギー領域のマニュアルは、「アナフィラキシー」、「NSAIDs による蕁麻疹」、「喉頭浮腫」、「血管性浮腫」を取り上げ、個々の病態に関するマニュアルで構成されているが、同時に各々が相補的に機能するように構成されていることを理解して活用することが望ましい。
1. 早期発見と早期対応のポイント
(1)副作用の好発時期
好発時期:薬剤の投与開始直後から5 分以内に生じることがあり、
通常30 分以内に症状があらわれることが多い。一般には医薬品の再
投与時に発現することが多い。経口薬の場合は吸収されてからアレル
ギー反応が生じるため症状発現がやや遅延することがある。
(2)患者側のリスク因子
他の医薬品での副作用、とくにアレルギー反応の既往、アレルギー
歴(食物アレルギー(特に小児で卵または牛乳アレルギー)、喘息、
アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーなど)、疲
労など。米国での統計では女性に多いとされる。
喘息では重篤化しやすいといわれる。
(3)投薬上のリスク因子
非ステロイド性解熱消炎鎮痛薬(NSAIDs)、抗菌薬、抗がん剤、造
影剤、アレルギー性疾患治療用アレルゲン、生物由来製品などで多い。
抗がん剤などでは初回投与時から発症することがあり、注意が必要で
ある。
β遮断薬の服用者では出現しやすくなることが想定され、さらに
治療に用いるアドレナリン(エピネフリン)の効果が減弱し、重篤化
の恐れがある。前立腺肥大などに用いられるα遮断薬との併用では、
アドレナリンにより血圧が低下することがあるので、注意が必要であ
る。
(4)患者や家族等、並びに医療関係者が早期に認識しうる症状
・ 医薬品の投与数分から通常は30 分以内に、じんま疹や掻痒感、
紅斑・皮膚の発赤などの全身的な皮膚症状がみられ、これが初発症
状のことが多く、最も重要な早期の症状である。
・ 一部の症例では皮膚症状は先行せず、下記の症状から出現するこ
とがあるので注意が必要である。
・胃痛、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状
・視覚異常、視野狭窄などの眼症状
・嗄声、鼻閉塞、くしゃみ、咽喉頭の掻痒感、胸部の絞やく感、
犬吠様咳そう、呼吸困難、喘鳴、チアノーゼなどの呼吸器症状
※ これらが出現したときは直ちに治療が開始されねばなら
ない。
・頻脈、不整脈、血圧低下などの循環器症状
・不安、恐怖感、意識の混濁などの神経関連症状
(5)早期発見と早期対応
・ 医薬品の投与後に上記の兆候が現れた場合、当該医薬品の投与を
継続中であればただちに中止する。血圧測定、動脈血酸素分圧濃度
測定を行いつつ、血管確保、心電図モニター装着、酸素投与、気道
確保の準備を行う。
・ 犬吠様咳そう、呼吸困難、喘鳴、チアノーゼなどの呼吸器症状が
みられれば、0.1%アドレナリンの筋肉内注射(通常0.3〜0.5 mL、小
児:0.01 mL/kg、最大0.3 mL))を行う。
・ 筋肉注射後15 分たっても改善しない場合、また途中で悪化する
場合などは追加投与を考慮する。
・ 抗ヒスタミン薬、副腎皮質ステロイド薬、気管支拡張薬の投与を
考慮する。
・ 反復するリスクの高いケースでは医療機関に到着する前にこれら
を自己投与できるよう指導する。
2. 副作用の概要
医薬品(治療用アレルゲンなども含む)などに対する急性の過敏反応に
より、医薬品投与通常5〜30 分以内で、じんま疹などの皮膚症状や、消化器症状、呼吸困難などの呼吸器症状、そして意識障害等を呈する。さらに、
血圧低下が急激にあらわれるとアナフィラキシー・ショックと呼び生命の維持上危険な状態である。医薬品によるものは年間で数百例が発生して
いると推測される。頻度の多い医薬品は造影剤、抗がん剤、非ステロイド性抗炎症薬、抗菌薬、血液製剤、生物由来製品などである。発症機序は主として即時型(I 型)アレルギーによるが、一部の医薬品では初回投与時にもみられるなど、これで説明がつかないものも存在する。
(1)自覚的症状
掻痒感、じんま疹、全身の紅潮等の皮膚症状が、はじめにみられる
ことが多い。一部のケースでは皮膚症状が認められないが、この場合
はしばしば重症化する傾向があるとされる。
皮膚症状に続き、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状がし
ばしばみられる。視覚障害や視野の異常がみられることがある。呼吸
器症状として鼻閉塞、くしゃみ、嗄声、咽喉等の掻痒感、胸部の絞や
く感、などは比較的早期からみられることがある。進展すると咳そう、呼吸困難、喘鳴、などがみられる。やがて動悸、頻脈、などの循環器症状や、不安、恐怖感、意識の混濁などの神経関連症状がみられる。
そのほか、発汗、めまい、震え、気分不快などがみられることがある。
(2)他覚的症状(所見)
じんま疹や紅班などの皮膚所見がまずみられることが多い(図1〜
3)。口蓋垂の水疱形成がみられることもある(図4)。呼吸器系の所
見として嗄声、犬吠様咳そう、喘鳴、呼気延長、連続性ラ音の聴取、
また重篤化した場合にはチアノーゼがみられる。頻脈、不整脈がみら
れ、ショックへ進展すれば血圧の低下、また意識の混濁などを呈する。
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