日々悩んでおります。

Quid enim stultius quam incerta pro certis habere, falsa pro ver

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]



「きちんと知りたい妊娠の心得11カ条」 

〜妊婦の教育が、産婦人科医の負担軽減につながる

2009. 5. 30  21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 森 裕

川崎医科大学産婦人科 非常勤講師 宋美玄 氏

 「セックスをしたら妊娠します」「この男の子供を産むためなら死んでもいい!と思うような男の子供しか妊娠してはいけません」・・・・・・など、タイトルだけ読むと、当たり前のことばかり並べた「きちんと知りたい妊娠の心得11カ条」(表1)が話題を呼んでいる。

 書いたのは、川崎医科大学産婦人科非常勤講師・宋美玄氏。今年で産婦人科医になって9年目の女性医師だ。学生時代には、21世紀医療フォーラムの代表世話人である大阪大学副学長・門田守人氏に薫陶を受けたという。

 「きちんと知りたい妊娠11カ条」の体裁は、ご覧のとおり、関西風のサービス精神にあふれているが、内容は表題通り、妊婦の素朴な疑問に女性の視点から適切に答える形になっている。今年3月8日に東京で行われた同氏の講演会には、一般の人とともに産婦人科などの医療関係者も多数詰めかけ、活発な議論が展開された。 宋氏に11カ条の心得を書いた背景、妊婦に知っておいて欲しいこと、そして産婦人科の「今そこにある危機」について取材した。
「11条の心得」執筆のきっかけは、都立墨東病院の報道から
 宋氏がこの心得を書くきっかけとなったのは、都立墨東病院で脳出血の妊婦が死亡した事件だ。医療者の間では妊婦が脳出血の場合、死亡率が非常に高く、すぐに手術しても重度の後遺症が残るという考えが常識だが、一般にはそのような認識がない。

http://medical.nikkeibp.co.jp/all/gdn/report/200905/images/thumb_510824_h1.jpg
表1『きちんと知りたい妊娠の心得11カ条』

 「施設間の連携がうまくいってなかったのは、本来あるべき姿ではありませんが、病院がすぐにみつかれば、妊婦が助かったという報道には異論があります」と宋氏は語気を強める。これでは妊娠中の脳出血は死亡率が高いということを、一般の人は報道から読み取れず、医療者側の責任だけが強調されてしまうからだ。

 「最近の産婦人科に関連する報道を正しく理解するためには、これから母親になる人に妊娠・出産にリスクが伴うことを再認識してもらうことが不可欠。さらに、妊婦さんの中には正しい知識が無いために悩んだり苦しんだりしている人がいるので、それにも応えてあげたい。この2つの理由から11カ条の心得を私のブログにアップしました。すると、妊婦さんだけでなく医療者からも大きな反響があって驚いています」と宋氏は言う。

 おそらく、妊婦に好評だったのは、同じ年頃の女性医師が自分と同じような目線で、押しつけがましくなく説明してくれたからだろう。最近は、妊娠しても妊娠・出産の手引き書さえ読んでいない妊婦も多い。そのため妊娠中に1回カゼ薬を飲んだだけで、中絶しなければと不安にかられる妊婦や、帝王切開の必要がある時に自然分娩にこだわって、説得するのに2時間もかかる妊婦もいるという。

開く トラックバック(1)

 東京の講演会では、難産で緊急の帝王切開を経験した母親から、出産のリスクも知らせて欲しかったという意見、男性の医師から、最近は母親教室で「妊婦に不安を与えるようなリスクの話をするな」と言われるが、きちんとリスクを説明すべきだという意見がよせられた。

 妊婦に出産のリスクを再認識してもらえば、医師との信頼関係も増して、何かあればすぐ訴訟というケースも減るだろう。また、妊婦の悩みや心配事は共通するものがあるので、インターネット上にあれば、毎回答える手間も省ける。ゆくゆくは厚労省や日本産婦人科学会など、信頼できる組織のホームページにデータベース化されれば、もっとアクセス数も増えるにちがいない。


“出産は安全”は、当たり前ではない 
 宋氏の11カ条を元に、妊婦が知っておきたい知識を妊娠・出産のリスクを中心に紹介しよう(なお、括弧内の数字は11カ条の何条目にでているかを示している)。

 わが国の妊婦死亡率は、およそ110年前(明治33年)には出産10万件当たり400人程度だったが、2006年には約5人に低下しており、これは世界でもトップクラスだ(図1)。

 明治初期の妊婦死亡率が、出産10万件当たり400〜150人、現在のアフリカの妊婦死亡率が400〜600人近くあるところから、医療施設でない自然な出産のリスクはこの程度だと考えられている。

現在の妊婦死亡率が出産10万件当たり約5人だから、明治時代の「お産婆さん」が胎児を取り上げていたときに比べ、医療施設での分娩で衛生状態改善や出産のリスク管理ができるようになり、およそ100倍、“出産が安全”になったといえる。

 妊婦の死亡率が10万件当たり5人というのは、身近に出産で死んだ人がいないということだ。母親学級でも妊娠・出産のリスクについてはほとんど教えられないから、今や「出産は安全が当たり前」と考えられている。


 しかし、難産で急に帝王切開になることや、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病という合併症もある。また、高齢化出産の増加で、高血圧や糖尿病、腎臓病などの持病を持った妊婦の割合も増えている。今でも出産にリスクはつきものだ。

 「出産で体を張るのは女性です。また、その女性に、妊娠したらお産にはリスクもあるという自覚を持って欲しいものです(11カ条の(2))」と宋氏は力説する。

 安全神話が世の中を支配しているので、何かあるとそのショックが容易に医療側への攻撃に変わって、訴訟に発展するケースもある。産婦人科医がこれまで頑張って出産を安全にしたことが、訴訟圧力となって、医療現場から立ち去らせているというのは、皮肉な話だ。

稀な疾患だが、“死亡率の高い疾患”をどうするかが課題
 かつて、妊婦の死亡率が一番高いのは、出産後の出血だった(経腟分娩で1,500mL、帝王切開で2,500mLの出血を危機的出血という)。今でも発症数は多いが、輸血が発達しているので、死亡率は0.4%とわずかだ。出産時には出血以外にも母体や胎児の状態が急変することがあるので、緊急事態にも対応できる産院を選ぶことが大切だ。(11カ条の(9))

 現在は、発症数は少ないが死亡率が高い疾患や突然発症して経過が急な疾患---脳出血、羊水塞栓症*注1、常位胎盤早期剥離*注2など---が問題になっている (表2)。


http://medical.nikkeibp.co.jp/all/gdn/report/200905/images/thumb_510824_h2.jpg
表2 重症産科疾患とそれによる死亡(浜松医科大学学長・寺尾俊彦氏講演スライドより

http://medical.nikkeibp.co.jp/all/gdn/report/200905/images/thumb_510824_z2.jpg
図2 「周産期医療体制の充実」(浜松医科大学学長・寺尾俊彦氏講演スライド)

これらの疾患は産婦人科医だけでなく、脳神経外科や他科の医師の応援が欠かせない。最善を尽くしても力が及ばないこともあり、妊婦の死亡率をゼロにできない原因にもなっている。家族にとっては母体・胎児ともに失うことも多いので、救命救急センターと連携した周産期医療体制の充実が叫ばれている(図2)。

 東京都は、墨東病院の事件を教訓に、救命救急センターと総合周産期母子医療センターを密接に連携させ、救命処置が必要な重症の妊婦を必ず受け入れる「母体救命対応総合周産期母子医療センター」(いわゆる「スーパー総合周産期センター」)の稼働を3月25日から開始した。

 しかし開始早々、指定病院の1つである、日赤医療センターが、労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受け、波乱の幕開けとなってしまった。救急医からは、ただでさえ大変な救命救急センターの負担が増えるのではないかとの声も聞かれ、今後の動向が注目される。



妊婦と胎児の安全を守るため、必ずかかりつけ医を持つことが大切(11カ条の(6))
 妊婦検診は保険が効かないので、余計な出費を嫌って、かかりつけ医を持たずに出産ぎりぎりに病院に駆け込む「飛び込み出産」が増えている。病院にとっては、母体や胎児の状態が不明な妊婦の受け入れは、他の妊婦へのリスクも大きいので救急搬送の受け入れを断る理由にもなる。

 妊婦検診は全部で14回ある。妊娠に異常がある場合には、早期に発見して適切な処置をするため、妊婦と胎児の双方のチェックが欠かせない。緊急時には、妊娠週数と胎児の推定体重などのデータが必須となる。妊婦と胎児の身を守るため、早くからかかりつけ医を持って妊婦検診を受けておくことが大切だ。

 自治体によって異なるが、妊婦検診の受診率を上げるため、これまでも5回の補助券や2回の無料券を配布して公的補助を行ってきた。今年4月からは、公費負担が拡充されて14回の無料券あるいは補助券が配布されるようになった。3月までに受けた分も申請すると、検診料が戻ってくる所もあるので、市町村の担当窓口に問い合わせるとよいだろう。


http://medical.nikkeibp.co.jp/all/gdn/report/200905/images/thumb_510824_h3.jpg
表3 「周産期医療崩壊の実態」 (浜松医科大学学長・寺尾俊彦氏講演スライドより 一部改変)

産婦人科の「今そこにある危機」
 産婦人科は、医療崩壊がもっとも深刻な診療科だといわれている(表3)。妊婦側から見れば、分娩施設が減って出産する場所の無い「お産難民」が発生。医療側では、人手不足、過重労働、訴訟圧力など簡単には解決しない問題が山積している。

 「産婦人科というのは、お産や妊娠中のトラブルがあるので、365日24時間体制をとっている病院以外診ることができません。すると、人手不足でも対応せざるを得ず、ベテランの先生でも、家庭を顧みずに月10〜20回の当直や夜間の呼び出しで疲弊しきっています。

 医局の先輩で何人も鬱病でやめた人もいるし、やる気があって頑張っていた先生が燃え尽きて小さなクリニックに行ってしまったという例もあります。人が減るともっと少ない人数で診療を支えなければならないので、悪循環です」と宋氏は危機感をつのらせる。

 もはや、問題解決には政治・行政といった大きな力が必要だが、現場の地道な努力も不可欠だ。宋氏が始めた取り組みは小さな一歩かもしれないが、それが大きな飛躍につながることを期待したい。



*注1.羊水塞栓症
 羊水が母親の血流に入ることがまれにあり、羊水は肺に到達して肺の動脈を収縮させる。分娩中や分娩直後に、突然、急激な血圧低下や呼吸・循環状態が悪化してショック状態となる。死亡率は60〜80%。頻度は8,000 〜30,000件の分娩に1回とごくまれな疾患。

*注2. 常位胎盤早期剥離
 子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、妊娠後半期や分娩中に、胎児が生まれる前に子宮壁から部分的または完全に剥離する疾患。胎児への酸素と栄養の供給が突然絶たれるので、広範囲の剥離は胎児死亡となる。母体がDIC(播種性血管内血液凝固)という状態になると、血が止まらなくなって、出血のため母体の生命にも危険が及ぶ。母体死亡率は4〜10%、胎児死亡率は30〜50%、頻度は全妊娠の0.4〜1.3%程度といわれている。直ちに高度医療施設へ搬送すべき、緊急を要する疾患。

全1ページ

[1]


.
おみぞ
おみぞ
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!
CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事