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Quid enim stultius quam incerta pro certis habere, falsa pro ver

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中西準子氏の


A.遺伝毒性についての誤解

化学物質の有害性試験項目の中に、遺伝毒性という項目がある。かつては、変異原性と言われたものだが、最近になって遺伝毒性と言われるようになった。遺伝毒性という名前になってから、この意味について誤解が広がってしまった。

“遺伝毒性とは、毒物による障害が本人に留まらず、後に生まれた子孫にも発生させる(その可能性を高める危険のある)毒性である”という説明をしばしば見る。この定義は正しい部分もあるが、現状での我が国での遺伝毒性試験の使われ方を考えると、間違いと言っていいだろう。

遺伝とあるが、一般的には、親から子に伝わる(経世代的伝達)という意味ではない。遺伝子に変異が起き、それが原因でDNAに変化が起き、RNAにそれが伝わり、通常と異なるタンパク質などが生成されることにより、病気が誘発される有害性を指しているのである。つまり、自分の体の中で、悪い性質が伝わること。
 
遺伝毒性と変異原性

では、なぜ、変異原性ではなく、遺伝毒性というようになったのか。それは、変異原性以外の、遺伝子毒性が測れるようになったからである。こういう式で、理解して戴くのが一番早いだろう。

 遺伝毒性=変異原性+突然変異ではないDNA損傷やDNA付加対体の生成など


経世代的な変化

経世代的な変化があるとすれば、それは、生殖細胞の遺伝子に何らかの変化が起きた時である。

REACH(欧州での化学物質規制法)や、GHS(国際的な有害性表示法)で変異原性ありという場合には、人の生殖細胞を使った変異原性試験で陽性だった場合で、我が国の法律での変異原性試験とは異なる。

我が国では、in vitroでは、微生物や動物培養細胞を用いた変異原性試験が用いられている。人の生殖細胞の突然変異と聞くと、催奇形性を想像しがちだが、一般的には、生殖細胞のDNAの突然変異により何らかの病気が伝わることである。

厳密には、催奇形性を否定するものではないが、催奇形性や、発達障害は、また、それとして試験することになっている。

遺伝ということばがつくと、経世代的な変化を誰もが想像する。これが、間違いを起こしやすいので、何か良い用語はないものだろうか。genotoxicityという用語の誤訳ではないか、遺伝子毒性というべきだと言う専門家もいる。

発がん性と遺伝子毒性

かつては、変異原性があれば、発がん性ありだと考えられた時期があったが、今は、それほど単純ではないことが分かっている。ただ、発がんの最初の段階、イニシエーションが、遺伝子に傷がつくことだということが言われていて、それは、かなり広い範囲で支持されている。

しかし、それががんにまで成長するかどうかは分からない。多くは、生体反応で修復されたり、死んだりする。

死にも、自殺と他殺があると、AIST安全科学研究部門主任研究員の納屋聖人さんは、言っている。アポトーシスが自殺で、ネクローシスは他殺だと、言っているが、実にうまい表現だし、覚えやすい。

がん細胞の成長を促進する作用が、プロモーションである。

何回も書いているが、発がん性のある化学物質には、イニシエーション作用を持つものと、プロモーション作用を持つものがあり、用量反応関係が異なるとされている。

前者の場合、閾値がなく、後者は閾値があると考える(これはあくまでも仮定だが、広く使われている)。いつも使う図だが、これを見てもらうと分かって頂けると思う。

イメージ 1


イニシエータなら、何故、閾値なしか?

イニシエーションが、遺伝子に異常が起きるところから始まるとすれば、そのメカニズムは変異原性の働きと同じと考えていいだろう。変異原の強さと用量との関係は、理論的にも、実験的にも閾値がないから、これを適用できると考える・・これが、その理由である。この仮定は、あまりにも簡単で、現実と合わない例はいくらでもあるが、一応、皆がこの仮定を使っている。

B. クライメイトゲート事件

2009年11月26日、朝日新聞夕刊に載った気候変動に関して、データに手が加えられたかと思わせる報道に驚いた。人為起源の二酸化炭素の影響で、気候が大きく変化し、さらには様々な影響が出ると主張する非常に有名な科学者グループ9人のmailが盗まれ公開され、そういうことを示唆した。また、温暖化に懐疑的な人を中傷するような内容が沢山あった。

日本では、朝日新聞のこの記事しか見ていないが、日本を除く先進国で、相当大きく報道されている(7日の産経新聞で報道あり)。

外国の報道内容を見ると、具体的で相当ひどいことをしているという印象である。この告発は,盗んだmailを基にしているとのことだが、本当にこういうことができるのか、半信半疑だったが、mail自体は本物らしい。IPCCは、これによって結論が覆ることはないというコメントを出している。勿論、そうだろうと思う。

二酸化炭素による温暖化を主張するグループには、世界中の政治家や事業者、世論がついていて強大な力を持っている。それに対して、懐疑派と言われる人たちは、実に弱小勢力である。

こういう不確かな現象に対して,科学的には反対論が出るのは当然で、懐疑派がいるのは、むしろ健全だと私は思う。プロ温暖化の人も、懐疑派を意見の異なる人たちということで、認めてもいいではないかと思うが、そうなってはいない。

ただ、自然現象なので、あと10年もすれば、どちらが正しいかの決着がある程度着くことだろう。傾向は分かってくると思う。そこが、通常の思想論争と違っているところで、救いがある。皆、寿命が長くなっているので、自分の言ったことの結果を見ることができるようになっている。これもまた、面白い。気長に待つか。




日本環境変異原学会の用語解説


英語 genetic toxicity
日本語 遺伝毒性,遺伝子毒性
読み仮名 いでんどくせい,いでんしどくせい
説明 Genotoxicityと同義語として使われている.


英語 genotoxicity
日本語 遺伝毒性,遺伝子毒性
読み仮名 いでんどくせい,いでんしどくせい
説明 遺伝物質に対する毒性の総称.最近ではDNA損傷性から突然変異誘発(mutagenesis)性,染色体(chromosome)異常誘発性までを包含する広い意味に用いられている.変異原性(mutagenicity)参照

英語 mutagenicity
日本語 変異原性
読み仮名 へんいげんせい
説明 一般的には,化学物質による突然変異誘発作用をいう.しかし最近,遺伝毒性,遺伝子毒性(genotoxicity)よりも限定的に用いられることがあり,その場合には,遺伝子突然変異誘発性をさす.


英語 mutagen
日本語 変異原
読み仮名 へんいげん
説明 自然突然変異(mutation)よりも高い割合で,突然変異を誘発する物理的,化学的,生物的要因の総称.環境中に存在するこれらの要因を環境変異原という.われわれの環境中には多種多様な化学物質があり,突然変異を誘発する化学変異原(chemical mutagen)も少なくないことから,一般に変異原というと化学変異原をさす場合が多い.変異原が用いられた当初は,遺伝毒性物質と同意であった.すなわち遺伝子突然変異(gene mutation),染色体(chromosome)異常,DNA損傷の誘発物質を全て意味していた.その後,変異原は DNA 損傷性を除く,遺伝子突然変異あるいは染色体異常を誘発する物質に対して用いられている.最近では,変異原を遺伝子突然変異を誘発する場合に限定して使用することがある.解説参照.


GHSによる健康有害性分類にかかる技術上の指針
〜 生殖細胞変異原性 編 〜
http://www.safe.nite.go.jp/ghs/ghs_shishin_5.pdf

2) GHS では、「変異原性試験」と「遺伝毒性試験」を使い分けており、変異原性試験は遺伝子突然変異、染色体の構造あるいは数的異常を指標としたものが該当し、遺伝毒性試験はそれら以外の、例えば、DNA 損傷やDNA 修復を指標としたものが該当する。変異原性試験あるいは遺伝毒性試験には非常に多くの種類があるが、ヒトに対する経世代変異原性物質かどうかを分類する基準となる試験をGHS では例示している。

医薬品の遺伝毒性試験に関するガイドラインについて
http://www.nihs.go.jp/mhlw/tuuchi/1999/991101-1604/991101-1604.html

従来の呼称である「変異原性試験」を「遺伝毒性試験」に改めている。



これは、気長に、まつとしますか。

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