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Quid enim stultius quam incerta pro certis habere, falsa pro ver

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遺棄、保護法

刑法
第二百十七条 【 遺棄 】
老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。

第二百十八条 【 保護責任者遺棄等 】
第一項 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
第二項 削除

第二百十九条 【 遺棄等致死傷 】
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
(三年以上の懲役)






2 遺棄の罪

2-1 保護法益
A. 生命および身体に対する危険犯
* 遺棄罪の規定が傷害罪・過失傷害罪の規定の後に置かれている。
* 219 条は傷害の結果発生の場合も刑を加重している。
* 法定刑が傷害罪のそれより相当に軽い。

B. 生命に対する危険犯
* 218 条は遺棄とともに「生存に必要な保護をしなかった」ことをも処罰している。
* 身体に対する危険をも本罪の対象に含めると処罰範囲が拡大しすぎて不当である。
* 法定刑の問題は、生命に対する危険がある場合にも遺棄罪が成立する以上、保護法益の問題とは無関係であり、それは現行刑法典が法益侵害よりもその危険を相当軽く評価しているからと考えられる。

抽象的危険犯である(判例(22)参照)。

※ 具体的危険犯とする見解もあるが、文言上そのような解釈は困難(危険の発生が条文に明記されていない)。もっとも、抽象的危険犯の場合も危険の発生が必要であると理解されているので、実際上それほど差異はない。

2-2 客体

217 条「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者」
218 条「老年者、幼年者、身体障害者又は病者」
若干文言が異なるが、218 条の場合も217 条と同様「扶助を必要とする」との要件が付されていると理解すべき。

「扶助を必要とする」の意義

A. 他人の扶持助力がなければ自ら日常生活を営むべき動作をできない(そのために生命・身体に危険がある)こと←前掲2-1 でA 説を採用した場合の帰結。判例(22)も同様に解している。(「刑法第二百十七条所定ノ扶助ヲ要スヘキ者トハ老幼不具又ハ疾病ニ因リテ精神上若クハ身体上ノ欠陥ヲ生シ他人ノ扶持助力ヲ待ツニ非サレハ自ラ日常生活ヲ営ムヘキ動作ヲ為ス能ハサル者ヲ指称シ其生活資料ヲ自給シ得ルト否トヲ問ハサルヲ以テ……」。ただし『判例刑法各論』ではこの部分は引用されていない。)

B. 他人の扶助がなければ生命に対する危険から身を守ることができないこと←前掲2-1 でB 説を採用した場合の帰結。A 説では処罰範囲が広すぎて妥当でないとする。
要扶助状態の原因である「老年、幼年、身体障害又は疾病」は限定列挙。

 ただし、高度の酩酊者(判例(23))、交通事故により重傷を負い歩行不能となった者(判例(25))、覚せい剤により錯乱状態にある者(判例(28))を「病者」とするなど、実際には拡張解釈が行われている。

2-3 遺棄の概念
単純遺棄罪[217 条]→遺棄のみを処罰
保護責任者遺棄罪[218 条]→遺棄および「生存に必要な保護をしな」いこと(不保護)を処罰

A. 従来の通説

a. 遺棄=場所的離隔を生じさせることにより要扶助者を保護のない状態に置くこと
a-1. 移置=要扶助者の場所的移転を伴う場合(作為犯)
a-2. 置き去り=要扶助者の場所的移転を伴わない場合(不真正不作為犯)

b. 不保護=場所的離隔によらずに要扶助者を保護しないこと(真正不作為犯)


単純遺棄罪はa-1 のみを処罰し、保護責任者遺棄罪はa-1、a-2 ともに(さらにb も)処罰する。

← a-2 は不真正不作為犯なので作為義務が必要、この作為義務= 218 条のいう保護責任だと理解する。判例(25)参照。

(※ なお、移置と置き去りの区別は作為と不作為の区別に対応していない、として、単純遺棄罪は作為による移置・置き去りを、保護責任者遺棄罪は作為の遺棄のみならず不作為のものも含む、とする見解
もある。)

ただし、この見解に対しては、
* 同じ文言である「遺棄」を両規定で異なった内容のものと解する合理的根拠はあるか、
* 作為義務と保護責任とは異なるのではないか(でなければ保護責任者遺棄罪が単純遺棄罪より重い犯罪であることの説明ができない)、との批判がなされている。

B. 単純遺棄罪・保護責任者遺棄罪に共通して、遺棄には作為のものも不作為のものも含む(両罪ともa-1、a-2 が処罰の対象となる)。

←この場合、不作為による遺棄の処罰根拠となる作為義務と218 条の保護責任とは区別される。

C. 単純遺棄罪・保護責任者遺棄罪に共通して、遺棄をa-1 に限定、不作為によるものはすべて不保護として、後者においてのみ処罰する。

←作為義務=保護責任ならば、A 説と同様、不真正不作為犯の方が作為犯より重く処罰されることになる。作為義務≠保護責任ならば、不真正不作為形態の遺棄(a-2 に相当)が不可罰となる。
2-4 単純遺棄罪[217 条]
判例の理解によれば、行為としては作為の遺棄(移置)のみが対象となる。
(具体例: 判例(24)など)

2-5 保護責任者遺棄罪[218 条]

2-5-1 客体および行為
前掲2-2 および2-3 参照。

2-5-2 主体
「保護する責任のある者」=保護責任者(身分犯)

保護責任とは?

前掲2-3 においてA 説を採用する場合は、保護責任=作為義務なので、作為義務の根拠の議論が当てはまる。(★ 不真正不作為犯の作為義務の議論を想起せよ!)

通説・判例は、法令・契約・事務管理・慣習・条理・先行行為にその根拠を求めているとされる。

※ 具体例は各教科書に比較的詳細に挙げられているので、それを参照のこと。『判例刑法各論』収録の判例としては、根拠を法令に求めたものとして判例(25)が、条理に求めたものとして判例(27)が、先行行為に求めたものとして判例(26)が挙げられる。また判例(30)は保護責任の存在を認めなかった事案である。



 しかし、形式的な法令・契約の存在だけで認められるべきでないし、条理・社会通念による倫理的義務とも区別されるべきである。→いわゆる「排他的支配」が必要では?

※ 判例の(16) 事案では医師が自己の意思に基づいて嬰児に対する排他的支配を獲得したといえるし、逆に判例(30)の事案では排他的支配の獲得が行為者の意思に基づいておらず、かつ保護措置を要求しうるだけの社会生活上の継続的な保護関係がないことが保護責任を認めなかった理由であると考えられる。また、判例(25)のようなひき逃げ事案の場合、法令(道交法上の救護義務違反)のほかに先行行為(この場合はひき逃げ)に基づいて保護責任を認める考え方があるが、単
純なひき逃げ事案で保護責任者遺棄罪の成立を認めるべきではなく(実際にもこのような場合に同罪の成立を認める例はない)、排他的支配の獲得があってはじめて同罪の成立が認められると解するべきであろう(判例(25)の場合は引受け(この場合は一旦車に乗せたこと)による排他的支配の獲得があった事案である)。

 なお、作為義務≠保護責任と理解する見解に立つならば、保護責任は作為義務よりも限定的に理解されることになる。(判例(25)のような場合であっても保護責任は認められない?)

共犯と身分の問題――「保護責任者」という身分について

前掲2-3 におけるA 説の場合:

作為による遺棄(a-1 に相当)の場合→加重的身分(65 条2 項)

不作為による遺棄(a-2 に相当)の場合→構成的身分(65 条1 項)

前掲2-3 におけるB 説、C 説の場合:

どちらも遺棄に関しては加重的身分(65 条2 項)

※ いずれの場合も、不保護(b に相当)の場合については、「保護責任者」という身分は構成的身分となる(65 条1 項)。
※ 共犯と身分の問題を「違法身分」と「責任身分」の問題ととらえる場合、「保護責任者」という身分はどう理解すべきか?

2-6 遺棄等致死傷罪[219 条]遺棄致死罪と不作為による殺人罪との区別

(もちろん、客観面としての生命に対する具体的危険の発生が前提。)

A. 殺人罪の故意の有無により決する。
B. 殺人罪成立には(遺棄罪の場合よりも高度な)殺人罪の作為義務が必要とする。

判例(32)(33)(34)はA 説的な立場を採用していると解される。




保護責任者遺棄(218)と遺棄罪(217)

通説は,217条の「遺棄」については,要保護者を場所的に移転する「移置」(作為による遺棄)のみが含まれ,218条の「遺棄」については「移置」のみならず,場所的移転を伴わない「置去り」(不作為による遺棄=保護義務があるのを保護しないという不作為で実行)も含むとしています。
 
わざわざ遠隔地に連れて行って残してきたというのであれば,「移置」になり、ドライブしていた男女が車内でけんかして,男が女を車から追い出し,降雪中の山中に残してきた場合は,「移置」ではなく「置去り」になります。






裁判員制度の対象となるものは、遺棄致死罪と保護責任者遺棄致死罪の2つですが、立件されるものは保護責任者遺棄致死罪が大半です。

 保護責任者遺棄致死罪は、「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護」をせず、その者を死亡させたときに成立します。不作為による殺人と行為の態様が似ていますが、殺意を持って遺棄、または放置したような場合には、殺人罪が成立します。
 立件されているものの多くは、児童虐待または病気の親族を放置して死亡させたケースです。いずれも目をそむけたくなるような事件ですが、過去のケースではそれほど重い刑とはなっておらず、懲役2年から4年程度となっています(法定刑は3年以上の有期懲役です)。

 上記以外のケースとしては、被告人が注射した覚せい剤により錯乱状態となった少女を放置したために、少女が急性心不全で死亡したケースや、泥酔状態にある被害者を家に連れ帰ろうとしたが動かないので、衣類をはぎ取って引きずったもののなお動かず、全裸状態で放置して帰宅したところ、被害者が凍死したというケースで、保護責任者遺棄致死罪の成立を認めています。





質問者:遺棄における作為と不作為

弱有害変異




2008年1月16日

集団生物学 第12回矢原徹一

九州大学大学院・理学研究院





Page 2
弱有害変異の平衡頻度

p=μ/s


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レポート課題• 近交弱勢が生じる遺伝的機構を説明せよ。

• 医学の発達によって人間の寿命がのびると、人間集団における有害遺伝子の保有量は増大すると考えて良いか。

– 増大する
– 増大しない–

いずれかを選び、その理由を述べよ。


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繁殖可能な年齢は変わらない?

• 人間の寿命が伸びても、繁殖可能な年齢は変わらないはずである。だから結局、生まれてくる個体数自体は変わらず、そのため次世代へと有害遺伝子が伝わる頻度は変わらないので、人間集団としては有害遺伝子の保有量は寿命の増加とは関係しないのではないか。よって増大しない。

• 実際には、平均寿命とともに、繁殖開始齢が増加している。また、母親が産む子供の数が減っている。


Page 5
「割合」は変わらないが「量」は増える

• 人間の寿命がのびると、有害遺伝子の保有量は増大すると考える。人間の寿命がのびても、子供を産む数は変わらないし、有害遺伝子をもつ人の人間集団における「割合」は変わらないから、結果として保有「量」は増大すると思う。

• 人間の平均寿命を伸びをもたらした要因のひとつに、若年時の死亡率の低下がある。この低下の背景に遺伝的要因があるなら(遺伝的に弱い人の健康状態が改善された結果なら)、「割合」が変化したはずである。


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個体の生涯において変異量が増える

• 長く生きれば生きるほど多くの有害突然変異が体内の細胞で発生する。そして、昔ならば生き続けるのが困難になるような突然変異が生じても、医学の発達によってその問題が解消されれば、その人は生き続けいくので、人間集団における有害遺伝子の保有量は増大すると考えられる。そして、今の医学では限界になるほど有害突然変異が蓄積した結果死に至るのが、ガンであると考える。

• この考えは、基本的に正しい。昔は感染症が主要な死亡要因だったが、現在はガンが主要な死亡要因。ただし、問題にしたいのは、次世代に伝わる有害変異が増えるかどうか。


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日本人の死亡要因の変化

イメージ 1




イメージ 2

ガン31.0%

2002年の日本人の死亡要因
http://fp-murasaki.whoa.jp/fp/data/03.html



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寿命が延びたことによる2つの結果

ヒトの適応戦略としての寿命  〜20歳 〜30歳〜 手前 40歳 

    
健康にとって有害な遺伝子の発現DNA損傷などの修復能力の低下
手前〜40歳〜

ガンをもたらす突然変異の新生
40歳 〜超えるころ〜50歳 〜60歳〜


これらは体細胞突然変異なので次世代には伝わらない



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男性由来の突然変異が増える

• 閉経した女性では変異を受けた有害遺伝子が子孫に伝わることはないが、男性の場合は精子形成能がなくなる年齢が高いため、有害な遺伝子数はやはり増えてしまうと考えられる。
• 女性では、出産年齢の高齢化とともにダウン症(21トリソミー)の発症率が高まるが、これまでの研究では父親の年齢とは無関係である。
• 遺伝子の突然変異による小人症(軟骨形成不全症)の発症率は、男性が1年歳をとるごとに2%ずつ増加することが報告されている。



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出産年齢とトリソミー

• 21トリソミー
– 数十年前までは平均寿命が20歳前後であったが、これはダウン症者に多くみられる循環器合併症の外科的治療が当時はできなかったためであり、合併奇形を治療すれば健康状態は改善することができ、現在では平均寿命も50年程度に延びている(Wikipedia)。

• 18トリソミー
– 生後1年以内に90%が死亡

• 13トリソミー
– 生後1年以内に90%が死亡

Crow (2000) Nature Rev. Genet. 1: 40-47


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軟骨形成不全症

・アペール症候群の発生率と父親の年齢の関係

いずれも単一遺伝子の優性突然変

Crow (2000) Nature Rev. Genet. 1: 40-47

弱有害変異



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深刻な遺伝子欠陥では結婚率が低い

• 医学の発達によって人の死亡率が低下したということは、自然界ならば淘汰されるような有害な遺伝子を持った個体が生き残るということで、これによって集団内に有害な遺伝子が蓄積されるのではないかということだが、私はこのことはたいして心配のおよぶところではないと思う。なぜなら、深刻な遺伝子欠陥を持っている人は、いくら医学の力が向上したとしても、その結婚率が低下するため、次世代に子孫を残すことが難しいからだ。

• 確かに、繁殖プロセスにおいて、有害度の高い遺伝子の子孫への伝達は抑えられている。• しかし、弱有害変異の場合には次世代に伝達される。


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両親の年齢と統合失調症のリスク

Malaspina 2008 Arch Gen Psychiatry 58: 361-367.


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Malaspina 2008 Arch Gen Psychiatry 58: 361-367.父親の年齢と統合失調症発症リスク


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ガンが治ればガン遺伝子が増える

• 私は増大すると考える。本来は、有害形質というのは自然淘汰されるものである。しかし、現代は医学的処置により淘汰を防ぎ、生存可能になることがある。例えばガン遺伝子をもつ家系でも、治療により子孫を残すことができる。しかし、子孫はその有害な遺伝子を代々受け継いでいくことになる。



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ヘテロ接合で隠れて増える

• 人間の寿命が延びることによって、それだけ有害な効果を持つ突然変異が起こる確率は増大する。したがって、その分、人間集団に含まれる有害遺伝子の保有量も増大する。しかし、有害遺伝子がホモ接合となって発現する確率は非常に小さいので、ヘテロ接合の状態で隠れて存在している。


Page 17
弱有害変異の平衡頻度


s=μ/p

μ=突然変異率:寿命が延びることで増加

p=淘汰の強さ:寿命が延びることで減少



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Crow(2000)の結論

• Our high standard of living, improved sanitation andbetter medical care mean that a number of mutant genesthat would have been selectively eliminated in the pastare now perpetuated. We are certainly accumulatingmutations faster than they are being eliminated.Furthermore, the possibility of new kinds of mutagens,external and internal, may increase the imbalance. Thereis every reason to think that the bulk of mutations, if notneutral, are deleterious. There is also reason for thinkingthat mild mutations are disproportionately frequent, andthat the disproportion increases as they approachneutrality. How serious is the problem, and how soon willbecome important?

Nature Review Genetics 1: 40-47.


Page 19
優生学:「人類改良」の悪夢

• フランシス・ゴールトンの提唱(1883)
– 人類の進歩を決めているのはヒトの品種改良だ。社会政策が進歩的かどうかは、人類集団の中から優れた資質を選び抜き、未来の世代にうまく「遺し伝える」ことができるかどうかにかかっている。
– 世界30カ国以上で「科学」として流行し、政策に影響を与えた。– 医師・医学者が指導的な役割を果たした。

• フランス優生学– ラマルク「獲得形質の遺伝」説の影響
– 正の優生学→人口減とナチス脅威の下で負の優生学へ

• ドイツ優生学– ヴァイスマン「生殖質」説の影響
– 「民族衛生学」からナチスへ• アメリカ・イギリス優生学– 1929年の世界恐慌により衰退


Page 20
フランスの優生学運動

• フランス優生学会(1912)
– 「欠陥」を有する個体に対して断種・不妊化措置や結婚制限を講じるのは、自由を希求し、洗練された個人主義を重んじる我々から見れば、忌まわしいの一言に尽きる(Landry 1913)

• 1920年代– 第一次世界大戦で130万人をこえる死者(人口減)
– 「社会衛生学」:結核・アル中・性病などの悪疫と戦う科学

• 1930年代– 世界恐慌が貧困を拡大→米・英と異なり負の優生学へ
– 反移民感情の拡大(血液型による人種判定)

• O型とA型は残す。AB型は心理テストで合格点が出れば、残す(Martial,1934)
– ナチスドイツ:政権獲得半年後に断種法制定、1年間で1万6000人を断種。→「合理的な手段」として支持する論調が一定の支持を得た。
– 共産党の「家族政策」:貧困層への妊娠中絶合法化、「母性保護」



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ドイツの優生学

• 1890年代:プレッツとシャルマイヤー
– プレッツの「民族衛生学」:「弱者救済」vs「民族利益」→計画的な生殖質淘汰によるユートピア
– シャルマイヤー(精神科医):医療努力は逆淘汰的な働きをする。国家の力量は国民の生物学的活力で決まる。「国民という資源」の管理が必要。「遺伝と淘汰が民族の運命に果たす役割」(1903)

• ヴィルヘルム帝政(1904-1918)– 民族衛生学会(1905-):出生率低下への行動指針など

• ヴァイマール共和制(1918-33)– 1929年の大恐慌→断種・不妊化政策への傾斜(背景に国家の壊滅的な財政危機)

• ナチス独裁期(1933-1945)
– 断種法(1933)
– 「帝国公民法」・「ドイツ人の血統と名誉を保護するための法律」(1935)・・・人種鑑定書の作成、家計調査の義務化。
– ユダヤ人大虐殺(1941-1945)


弱有害変異

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Crow(2000)の結論2

• We are certainly accumulating mutations faster than theyare being eliminated. (前掲)

• Most of the mutations have a very small effect and are toa large extent compensated for by environmentalimprovements. But can we continue to improve theenvironment indefinitely? Will a time come, especially ifthere is some sort of catastrophe (war, epidemic orfamine), when we are forced to return to the life ofancestors? Under those circumstances, we would surelysee an increase in human misery, for all the mutationsthat have accumulated would be expressed in full force.

???

Nature Review Genetics 1: 40-47.


Page 23
軟骨形成不全症・アペール症候群の原因Wilkie 2005


Page 24
FGFR2突然変異は生殖系列で有利

イメージ 1





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ハンチントン病:CAG反復数の増加

Pearson 2003


Page 26
より一般的な点突然変異率は?

さまざまな修復メカニズム


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生活習慣病の遺伝子
• 糖尿病
• 肥満
• 高血圧
• 高尿酸血症(痛風など)
• 脂質異常症(高コレステロール血症)

 などヒトの進化過程では有利な遺伝子(倹約遺伝子)だった可能性あり


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Angiotensinogen遺伝子の変異

Nakajima & al 2004Am J Hum Gen 74: 898-916

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NaNde←A(-6)Thr235

Druze←G(-6)Met235AGT 発現レベル低い


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かつては有利だった遺伝子の候補


Rienzo & Hudson 2005 Trends in Genetics 21: 596-601


Page 30
ヒトの移住・拡散の歴史
イメージ 3



九大ミニミュージアムhttp://www.museum.kyushu-u.ac.jp/WAJIN/wajin.html


Page 31
Selective sweepと連鎖不平衡


Nielsen et al. 2007. Nature Review Genetics 8: 857-868.


Page 32
Incomplete selective sweep in LCT

Blue, Europe; Red, AsiaNielsen et al. 2007. Nature Review Genetics 8: 857-868.


Page 33
正の選択を受けた対立遺伝子の年齢


Hawks et al. (2007) Recent acceleration of human adaptive evolution. PNAS 104.


Page 34
ヒトにおける淘汰圧• ヨーロッパに北上した集団における環境適応
– 皮膚:Ding Y-C, et al. (2002) PNAS 99:309ー314.
– 寒冷適応:Wang E et al. (2004) Am. J. Hum. Genet.74:931-944.
– 食事:Akey JM et al. (2004) PLoS Biol 2:e286.
• 農耕の発達にともなう淘汰圧
– 病気:Wang ET et al. (2006) PNAS 103: 135-140.
– 食事の変化:Bersaglieri T et al. (2004) Am. J. Hum.Genet. 74:1111-1120
• 文化の発達(後期更新世)
– 死亡率は低下したが、繁殖における分散が拡大
– コミュニケーション、社会的相互作用、創造性への淘汰



Page 35
HIV抵抗性対立遺伝子頻度の変異

Nobembre et al 2005 Plos Biol 3: e339


Page 36
日本人の年齢階級別死亡率
     0.05.010.015.020.025.030.035.040.0

0〜4歳
5〜9
10〜14
15〜19
20〜24
25〜29
30〜34
35〜39
40〜44
45〜49
50〜54
55〜59
60〜64
65〜69
70〜74
75〜79
80〜84
85〜89
90〜94
95〜99
100歳以上

死亡率資料 厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健統計課「人口動態統計」(17年)


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弱有害変異の平衡頻度

多くの機能的遺伝子ではほとんど無視できるレベルではないか


s=μ/p

μ=突然変異率:寿命が延びることで増加

p=淘汰の強さ:寿命が延びることで減少


ほぼ中立であり、決定論的なこの公式はあてはまらないヒト集団はおそらく平衡状態ではない。

淘汰圧は変動している。環境や他の遺伝子との相互作用が、重要な場合が少なくない。


Page 38
多くの遺伝学者が陥った罠
• 科学的命題と価値的命題の混乱– 自然淘汰上の「有利」「有害」・・・適応度の定義にもとづく科学的判断。

– 人間にとっての「有利」「有害」・・・人間の価値判断の問題。


Page 39
適応戦略としての「病気」
• 発熱
• 下痢
• 嘔吐
• 陣痛
• アレルギー
• 鬱状態
• 老化

病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解 (単行本)ランドルフ・M. ネシー , ジョージ・C. ウィリアムズ (著) 新曜社

弱有害変異

人類集団には有害遺伝子が蓄積しているか?




今日の「生態学II」最終回では、前回の授業で書いてもらった質問をとりあげて、解説をした。質問票の中で、寿命の進化に関する有害突然変異蓄積説と拮抗的多面発現説について、もういちど説明してほしいというリクエストがいくつもあったので、「有害突然変異蓄積説」については、とくに詳しくとりあげて解説した。このテーマは、「集団生物学」の最終回でもとりあげたので、パワーポイントファイルの用意がすでにできていた。ココにpdf化したスライドがあるので、興味がある方は参照されたい。ただし、大部分の図は著作権の関係で、省略されている。引用文献は明示されているので、それをもとに各自調べていただきたい。

Crow(2000)[Nature Review Genetics 1: 40-47]の次の見解は、遺伝学者が繰り返し述べてきた警鐘である。

We are certainly accumulating mutations faster than they are being eliminated. (われわれは疑いなく、自然淘汰による除去よりも早く、有害突然変異を蓄積している)
20世紀前半には、この見解が「優生学」という忌まわしい運動に利用された。上記のスライドでは、「優生学」の歴史についても、簡潔に紹介している。

さて、Crow(2000)に代表される見解は科学的に妥当だろうか。

確かに、いくつかの有害突然変異は、人間の一生のうちに生殖細胞(とくに精子)において新たに生じる。その発生率は、年齢とともに増加するという確かな証拠がある。Crow(2000)が図示している証拠は、軟骨形成不全症・アペール症候群の発生率である。このほか、統合失調症やハンチントン病などは、父親の年齢とともに発生率が増大する。これらは精子形成の過程で生じる突然変異が次世代に伝えられる例である。もしこのような突然変異が一般的なら、ヒトの寿命が延びて、高齢出産が一般的になれば、「有害」な突然変異が増えていくだろう。

また、衛生状態の改善と医療の発達によって死亡率が低下した結果、かつてはより有害度が高かった遺伝子が、弱有害変異、あるいはほとんど中立な変異へと変化した例は多数あるだろう。弱有害変異はより有害な変異よりも発生率が高く、かつより弱い淘汰しか受けないので、集団中での平衡頻度は高くなる。その結果、自然淘汰による除去よりも早く、蓄積していく。これがCrow(2000)の主張である。

授業ではまずこの主張の論理と証拠を説明した。そして「われわれは疑いなく、自然淘汰による除去よりも早く、有害突然変異を蓄積している」という結論に納得できたかどうかを聞くと、3割程度の学生が納得できたと回答した。なぜかは判然としないが納得できないという学生が約1割。他の学生は、判断がつかないという結果であった。

そのあとで、私の見解として、Crow(2000)への反論を述べた。

第一に、軟骨形成不全症・アペール症候群の原因となるFGFR2, FGFR3の突然変異は、非常に特殊な例である可能性がある。これらの突然変異は、遺伝子配列の特定のサイト(ホットスポット)で頻発している。しかも、FGFR2の突然変異は、精子が形成される過程での細胞間競争において有利なのだという、実に興味深い論文がScienceに2003年に発表されている。このような事例がどの程度一般的かは、現在のところ正確には判断できないが、かなり例外的な突然変異機構である可能性が高いと思う。もし一般的なら、すでに判明しているいろいろな遺伝病の遺伝子で、同様な発見があいついで報告されても良いはずだ。

ハンチントン病に関しては、マイクロサテライトが原因であることがわかっている。この場合、CAGの反復数が少ないうちは発症しないが、反復数が多くとともに発症するようになる。そして、男性が年齢を重ねるとともに、精子形成の過程で反復数が増えていく(つまり方向性をもった突然変異が生じる)ことがわかっている。

統合失調症は約150人に一人が発症する、発症率の高い病気である。父親が20代の子では141人に一人の発症率だが、父親が40台前半の場合には80人に一人、50台の場合には47人に一人に、発症リスクが増加する。このリスクの増加はきわめて顕著であり、ハンチントン病に似た方向性の突然変異が原因かもしれない。

今のところ、父親の年齢とともに顕著に変異率が増加する確かな事例は、この程度である。私は、これらの事例は、多くの遺伝子に生じる点突然変異とは異なる、特殊な事例ではないかと疑っている。現時点で、これらの少数事例から、有害遺伝子蓄積の脅威をあおることは、科学者として納得がいかない。

第二のポイント、つまり、「かつてはより有害度が高かった遺伝子が、弱有害変異、あるいはほとんど中立な変異へと変化した例は多数あるだろう」という点に関しては、Crowをはじめ多くの遺伝学者がこの点をあたかも大問題のようにとりあげることが不思議でならない。現代の衛生環境と医療の下で、ほとんど中立なら、それは有害遺伝子とはいえない。その運命は偶然に左右されるだけで、人類集団の中に蓄積していくと考えるのはおかしい。戦争や飢饉が起きれば、再び有害になるとCrow(2000)は主張しているが、これもかなり馬鹿げた意見である。かつては有利だった変異が、食生活の変化とともに有害遺伝子に変化した例も少なくない。高血圧、糖尿病など、いわゆる生活習慣病の原因となる遺伝子の多くはその例である。では、食生活の変化には人類集団に有害遺伝子を蓄積させる効果があると言えるだろうか。

環境が変化したために、淘汰圧が変化した。それだけのことである。そして、全体としては淘汰圧は弱まっている。それは遺伝的変異の運命がより偶然に左右されるように変化したことを意味するだけである。

それを好ましいと思うかどうかは、人間の価値観の問題だが、淘汰圧が弱まるということは、ヒトが死ななくなっているということであり、通常の価値観をもつ多くの人には、好ましい結果に違いない。

以上の理由により、人類集団に有害遺伝子が蓄積しているという20世紀初頭以来の遺伝学者の警告には、いまだにたいした根拠はないと考える。

ただし、親になるのは、若いとき(適応戦略として設計されたヒトの繁殖期の範囲内)のほうが良いことは、かなり確かである。母親では、30代後半よりも高齢になると、ダウン症などのトリソミーの発生率が顕著に高くなる。父親においても、染色体突然変異が年齢とともに増えるという証拠がある。これらの知識は、高校できちんと教えるほうが良いと思う。

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