散策思索語録質種

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黄昏のビギン

「こんにちは赤ちゃん」は、梓みちよがお母さんの歌として大ヒットさせた昭和の名曲である。ところが、歌詞を作った永六輔によるとこの歌は父親の歌であって、「私がママよ」の部分は「オレがオヤジだ」が正しいという。実際の話、女性が自らお腹を痛めた赤ん坊に「こんにちは」という感覚はないそうで、永六輔が出演するラジオ番組でもよくその話が出され、自ら正しく歌ったりもしている。 永六輔はこの他にも数多くの名曲を世に出しているが、どちらかというと男の歌ばかりで、女性の歌はほとんどない。世界的なヒット曲「上を向いて歩こう」や「遠くへ行きたい」「見上げてごらん夜の星を」など、コンビを組んだ中村八大やいずみたくのメロディがきれいで親しみやすいために、女性歌手もカバーしているけれど、歌詞の中身はやはり男性である。外国の曲だと、よくheをsheに置き換えることで意味が通じてしまうが、日本の歌謡曲ではなかなかそうもいかない。 その永六輔が、自分が作った曲の中で一番好きなのは「黄昏のビギン」だと言っていた。59年に水原弘が出したシングルのB面の曲。若い恋の喜びを男性の視点から語っている歌である。当時、水原弘のオリジナルはほとんど注目されなかったけれども、言葉を丁寧に情感を込めた歌い方はとても好感が持てる。水原弘と言えば、酒や借金といったゴシップばかりが目立ったが、元々抜群の歌唱力の持ち主で、歌詞の意味、作曲者の意図を最も理解した歌い方をしていると思う。 その後91年にちあきなおみがカバーしているのだが、このときはラジオなどで少し流れた程度で、やはりそれほど大きな反響はなかった。このラジオから聞こえてきた歌声を、私はよく覚えている。と言っても、何と言う曲で誰が歌っているのか聞き逃して、ベテランの女性フォーク歌手が古いフォークナンバーを歌っているのだと思っていた。鼻歌でも歌うような軽い歌い方が魅力的で、しばらく気になって仕方がなかった。
イメージ 1
結局のところ何もわからないまま諦めるしかなく、そのまま忘れてしまえば、どうということもなかったのだけれど、それからさらに10年ほどして、テレビのCMにその歌声が流れてきたのである。これが大ヒットしたのはご存知の通り。ところが、普通、画面に出るはずの曲名と歌手名の表示がなく、わかったのはさらにその後渋谷のショップでCD視聴したときである。まさかそれがちあきなおみだとは思いもよらなかった。 「黄昏のビギン」をカバーしている歌手は多い。前述したように女性歌手がよく歌っているけれども、いずれも甘いメロディの雰囲気だけを流しているように聞こえて仕方がない。夏川りみや石川さゆりのような本格派すら、妙に感情を込め過ぎて、歌が浮き上がっている。やっぱりこれは男の歌なのだ。

だが、それでもすごいと思わせるちあきなおみ。なぜ、女性でこれだけ男の歌を聞かせられるのか!例えば、愛する彼氏あるいは旦那が歌っているのを横で聞いていた彼女が、ある日ふと思い出したようにメロディを軽く口ずさむ。ちあきなおみが歌うとそんな風に聞こえるのである。 男の歌を思い出にふけるようにさらりと歌ってしまう巧さ。これは「喝采」のようなシリアスな歌詞に情感を込めつつも、どこかで冷めた目で見つめているような、彼女の独特な歌い方によるものかもしれない。つまり、炎のように燃える歌ごころと氷のように冷たい客観性を同時進行させて、最高のパフォーマンスが演出できる歌唱力。大上段に構えて派手に感情を入れ込むだけがパフォーマンスではないのである。多分、今それができる歌手は、数えるほどしかいないだろう。 さて、水原弘とちあきなおみ。彼らと比肩するくらいに「黄昏のビギン」を聞かせる歌手が出て来ないものか。 (文中敬称略)

[補遺]関連映像をYouTubeからリンクしておきます。
 黄昏のビギン/水原弘
  http://youtu.be/Q4N5m1oSOcM
 黄昏のビギン/ちあきなおみ
  http://youtu.be/VcsDsOEU3B0

(2009/10/06)

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実は、先日この記事を拝見した時、コメントを書きかけたのですが長くなりそうだったので消してしまったのです。本日あらためてお邪魔しました。(かなり簡略しました^_^;)
『黄昏のビギン』はCMで聴いてから大好きな歌でした。同じ頃、車のCMで流れていたちあきさんの『星影の小径』も好きでした。
http://www.youtube.com/watch?v=z2VFi0Pc_9A&feature=related

ちあきなおみさんは、さらっと心地よく聴かせてくれる歌い手ですね。水原弘さんのはつながらなかったので、聴くことができませんでしたが…もう一度やってみますね。

2009/10/10(土) 午後 1:37 [ You ]

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youさん、コメント有難う。
Youtubeは著作権の問題でよく削除されるので、当てになりませんね。
別のリンクに差し替えましたので、聞いてみてください。(これもいずれ削除されるんでしょうけど)

星影の小径は、勘太郎月夜とか、湯島の白梅というヒット曲(聞いたこともないでしょうね・・・苦笑)で有名な小畑実という方が歌っておられました。
といっても、私もまだ生まれていなかったので、そんなによく知っているわけではありませんが、懐かしのメロディなんかで見たことがあります。
この歌は、ちあきなおみもオリジナルの雰囲気をうまく出している感じがします。

2009/10/10(土) 午後 2:02 面白狩り

勘太郎月夜、湯島の白梅、どちらも知っていますよ。同じ方が歌っていたのが星影の小径とは知りませんでした。
父の影響で、わりとナツメロには強いのです。面白狩りさんと同じで、決してリアルタイムで知っているわけではありません。念のため(笑)

2009/10/10(土) 午後 2:24 [ You ]

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早速のレス有難うございます。
そうですか!ナツメロに強いというのは結構なことです♪私も父の影響が強いです。
今の歌が嫌いというわけではないのですが、古い歌ほど五七の韻を踏んでいる歌詞が多く、歌謡曲といってもしっかり日本の伝統文化を意識しているので好きなんです。
バーブラ=ストライザンドやリンダ=ロンシュタットの記事でも述べましたが、こういう古い歌をカバーして歌いこなすスタイルが、もっとあってもいいのにといつも思います。
ちあきなおみのような聞かせる歌手が少ないのが残念です。

2009/10/10(土) 午後 3:08 面白狩り


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