| 葉桜の落ち着きに安堵する頃、紅色のよく目立つ蕾を枝一杯に付けるので、さぞ鮮やかな赤い花だろうといつも想像する。ところが花が開けばありふれた淡い紅。それでつい印象に残らないまま花期を見過ごしてしまうのである。 そんな曖昧さがあって、ねむれる花という別名があるのかと思っていたら、そうではなく、酒に酔って眠たげな楊貴妃を、玄宗皇帝が海棠の花に譬えた故事から付けられた名前であった。 そんな蘊蓄を得るだけで、うつむき加減の花に艶めかしさを覚える。先入観のなせる技と言ってしまえばその通りだが、それではあまりにつまらない。 蕪村の、海棠や白粉に紅をあやまてる、はこの故事を織り込んだ句。それで深みと味わいが出るのだから、先入観に任せるのもたまには良い。 |
| ◇海棠(バラ科)_庭木によく利用される。野生種はない。花を観賞する垂絲海棠(はなかいどう)に対して実海棠があり、黄色く熟して食用となる。(2012/04/20) |
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