散策思索語録質種

絵本もどきの落書きと、エッセイもどきのひとりごと・・・

インスピレイション

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蛋白質

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見かけはカブトムシであっても、彼女らアリたちにとっては単なる食糧にすぎない。彼女らの仕事は、この高タンパクの肉塊をバラバラに切り刻み、効率よく巣に運んでいくだけだ。 もしかしたら、彼はまだ意識があるのではないか?バラバラにされていく自らの体を冷めた目で見つめているのかもしれない。アリたちの栄養になる自分の運命を哀れに思っているだろうか。その身が次の生命の材料に使われることをどう感じているのだろうか。 いや、彼はすでに死んでいる。そこに意識はない。何もない。何もない。アリたちの認識の通り、ただの肉の塊。マグロの刺身と同じ。ジュウジュウ音を立てて焼き上がったステーキと同じ。 死んでいるとは何か?生命活動の停止?いや、停止するだけでなく、もはや回復の見込みがないこと?そうであれば、どこが生と死の境目なのだろう。単純に脳死、心臓死という区分けで判断できるのだろうか?しかも、そんなものが法律というタテマエで決めて良いものなのだろうか? 医者が脳死と判断しても、あるいは心臓死と判断しても、ごく稀に生き返ることはある。どんなに小さな確率であっても回復する可能性がゼロでないならば、死者の肉親は死を受け容れたがらないのは当然の話。これからますます医学が進歩すれば、その確率はどんどん高くなるだろう。そうなるとこれは単なる感情論ではなくなってくる。 一方で臓器移植によって助かる命がある。脳死を死とすることにより、国内で年少者の移植手術が可能になったという。それは移植を要求する側から言えば好ましい判断だろうが、もしかしたら、生き返ったかもしれない命を犠牲にする確率はゼロではない。そのほんの僅かな確率は、決して言葉通りの僅かな数字ではないのだ。 難しい。こればかりは、誰が正しいとも間違っているとも言えない。願わくば、IPS細胞の一刻も早い実用化しか、臓器移植の問題を基本的に解決することはできないだろう。 などということを考えて歩いていたら、いつのまにか家に帰っていた。

(2009/07/15)

定家

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「今の時期は、街のどこもかしこも何がしかの花の香りが漂っていて、歩くだけで心躍らせる。最もよく香るのは、ミカンの花だろうか。あるいはウツギ、スイカズラの類にもよく出合う。庭一杯にバラを咲かせている家の前ならもちろんバラが香るが、中には素馨(ソケイ)を絡ませてジャスミンをブレンドさせている家もある。 うす黄の花の生垣が朝日に眩しく光っている。ああ、この甘い香りはどこかで嗅いだ事がある。そうだ、京都のような古い街を歩いていると、どこからか流れてくる香の匂い。深く息を吸えば吸っただけ胸の中に香りが満ちて、軽い目眩すら感じる。 薄目を開ければ、若い修業僧が一人、しっかりとした足取りで私を追い抜いていった。こんな住宅地に珍しいなと思いながらも、たまに繁華街の道端で托鉢を持った坊さんが立っている。彼も恐らくはこの先の駅に向かっているのだろう。低気圧が近づいて雲が出てきた。天気が悪くなれば人通りも少なくなって、お布施もそんなに集まらないだろうに。が、修行ならば銭金の多寡など関係のないことか。 それにしても、真夏でもないのにこの空の暗さはどうしたものか。さーっと風が吹いて驟雨でも来そうだ。そう思った途端、鼻の頭に微かな水の感触。こんなときはさっさと帰った方が良い。少し小走りに歩き始めた。 地面を見ると、はっきり雨粒が大きくなっているのがわかる。これでは本降りになる前に家に着くのは無理かもしれない。確か、この先の小さな児童公園に四阿(あずまや)があった。そこでしばらく雨宿りをした方が良さそうだ。雲行きを見れば通り雨ですぐに止むだろう。 駆け足で逃げ込んだ四阿には、先刻の修行僧がいた。目が合ったので、苦笑いしながら軽く会釈をしたが、全く無表情で外の様子を眺めているだけ。今どきの修行僧というのは随分と無礼なもんだなと思いながら、椅子の端に腰を下ろした。他の音が聞こえなくなるくらいの大降りだ。間一髪助かった。 しばらく何も考えず、若葉から滴り落ちる水滴を眺めていた。ふと、声がするので修行僧の方に目をやると、いつの間に入って来たのだろう。品の良い中年女性が一人、私と反対側の椅子の端に座って何か話している。挨拶をと、帽子を取って頭を下げたが、これまた無視されて非常に不愉快である。まあいいさ。坊主とはいえ彼の方が間違いなく若いしイケメンだものな。 雨音に混じって微かに彼らの話が聞こえる。 「ここは京極中納言様の時雨亭、こちらは式子内親王の墓です」・・・? 「京極中納言様と言えば、かの定家卿ですね」・・・??定家って昔の歌人の藤原定家のことかい? 「私は式子内親王。中納言様との仲を取り沙汰されてしまいましたが、本当は秘かに黒谷上人様をお慕い申し上げていたのです。でも、中納言様があまりにしつこいもので、ご覧ください、その執心が蔦葛となって墓にまとわりついているのです」・・・なにを奇妙なこと話しているんだ?と、女性の指差す先を見れば、そこには先刻の香の匂いのする花が暗がりの中で異様に光っている。 「我聞如是、一時佛住、王舍城、耆闍崛・・・」修行僧が両の手を合わせ、静かに読経を始めた。すると、女性の姿が徐々に霞んでいくではないか。揺れるように透き通っていき、ついには消えてしまった! 「有難うございます、これで成仏することができました」小さく聞こえたかと思うと、突然雨が止み、辺りが朝の光にあふれ、遠くで鳥が鳴いていた。そこは定家の時雨亭でも公園の四阿でもなく、あの生垣の前だった。 かなり前の方を、修行僧が歩いている。ほんの少しの間、夢を見たのか・・・そうだ、この花は定家葛(テイカカズラ)というのだった。 もう一度深く息を吸おうとしたら大きくむせてしまい、喉の痛みだけがやけに現実味を帯びていた。

(2009/05/22)

四拍子

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 トントコトントコトントコトン・トントコトトントトントコトン・ 川崎の・お大師さまは4年ぶり・ 門前通りのお土産物店飴切りの音が聞こえてくるよ まな板を・叩いてトントコお客呼ぶ・ 売り子のおばちゃん大声で・名物の飴美味しいよ・ 呼びとめられると飴切り職人デモンストレーション始まった・ 柔らかい飴を次々と・トトントトントン切り落とす・ トントコトントコトントコトトン 和風サンバのリズムにきっとブラジリアンなら踊りだす・ その点日本のお客さん・珍しそうにじっと眺める慎ましさ・ でもねホントは日本の人は4の拍子を心地よく・感じて愉しむ民なんだ・ なんてったって万葉の・昔からリズム愉しんでいる 例えばたとえば 「あかねさす・むらさきのゆきしめのゆき・のもりはみずやきみがそでふる」額田王歌ってる・ 字余り字足らずなんやかや・季語なし俳句はダメだとか・都々逸色恋川柳風刺 七五の調子に決め事ばかり・気にしていたら頭ん中にカビが生えるよトントコトン・ 簡単を・難しくする専門家・ 俳句や短歌気軽に詠めば4の拍子が心地よい・ そうさ4拍昔から・日本の歌のリズムだよっそれ! 「ふるいけや・かわずとびこむみずのおと」っイェイ! 「ちはやぶる・かみよもきかずたつたがわ・からくれないにみずくぐるとは」イケメン業平詠んでいた・ 飴切りの音は4拍子・3拍子では折角の・飴がまずーくなっちまわあ・ それそれトトントトントコトン・トコトントコトントントコトトン

(2009/04/20)

居酒屋

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紅く色付いたツタを這わせた洒落た色煉瓦。 まるで銀座の高級スナックの壁、あるいはちょっと小粋なフランス料理の店かもしれない。キツネ色に焼けたローストチキンの匂いが漂ってきて、グラスに注がれた赤いワインが踊っているようなイメージ。あちこちで忘年会が盛んな時期だが、こんな店だとちょっと高そうで入りづらい。 実は散歩の途中で見かけた、ごく普通の家の煉瓦塀。 出会ってすぐに居酒屋という名前が頭に浮かんだのだが、今どき居酒屋と言えば、繁華街の雑居ビルに大きなフロアを構えるチェーン店を思い浮かべる人がほとんどだろう。実際、居酒屋とは安く酒を飲ませる店のことだから、高級な居酒屋というのでは明らかに矛盾してしまう。 思い浮かべたのは、ヨーロッパの田舎町の居酒屋。例えば、居酒屋という古い映画がある。エミール=ゾラの原作をルネ=クレマンが監督し、名優マリア=シェルが不幸なヒロインを演じた近代フランス映画の傑作と言われている名画である。 つまり、今どきのキンキラキンの居酒屋じゃなくて、こんな味のある煉瓦塀の居酒屋なら、何か大人のドラマでも起こりそうな気がしてこないか。そんなイメージを少しだけふくらませて愉しんでみる。 薄暗い店の中、数えるほどのテーブルを囲む客が、にぎやかに談笑している。会話とノイズの混じったジャズの中を紫煙が漂い、ライトに照らされてカウンターの上の真っ赤な薔薇にまとわり付いていく。その横で、ワイングラスを弄びながら、女がバーテンと何かしゃべっている。うっとりとした目で女が微笑みかけたそのとき、大きな音を立てて店の扉が開き、若い男が入ってきた。ひどく酔っている。よろよろと女に近づき、ゆっくりと顔の前にかざしたその手には、血に染まったダガーナイフが握られていた。男は一体・・・ さて、この続きは・・・いずれ、そのうちに。

(2008/12/14)

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蟷螂の夢

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「彼女は腹を空かしていた。 昨日までは、この広いカヤの原を徘徊していれば、コオロギ、バッタの類に事欠かなかった。すばしこいハエやアブですらも彼女の洗練された狩猟技術をもってすれば、簡単に捕食できた。 ところが、隣接する日当たりの良い土手で、カメムシ狩りに夢中になっていた後に戻ってくると、うっそうとしたカヤがすべて刈り取られ、根っこだけが残る荒涼とした平地になっていた。三角形の頭をくるりと回し、自慢のカマの腕で大きな目をこすっても、一変した光景が元に戻ることはなかった。一体何が起きたのか、もちろん彼女に理解する術はなかった。 間もなく訪れる産卵の時期を控えて、とにかく今は体力を蓄えるだけが彼女の仕事であった。やむを得ず再び土手に向かったが、こちらもすでに丸裸の状態に変っていた。 目の前を動きの鈍いワラジムシがはっていく。いとも簡単にこれを両のカマで挟み込み、ゆっくりと腹の中に収めていく。食べ終わるとカマの刃を口でぬぐい、触角を動かして周囲の気配に注意を払うが、そこにはもはや彼女が必要とするものは何もなかった。 それどころか、こんな見通しの良い場所では逆に自分が野鳥の餌食になってしまう。ここは危険だと、本能が彼女に教えていた。あれだけたくさんいた兄弟姉妹たちのほとんどがそうやって鳥やネズミの犠牲となり、DNAを後世に伝えられる個体が彼女のほかに残っているかどうかは、神のみが知るところだった。 刈り取られた原とは逆の方向に歩き出す。そこは死の世界のような冷たいアスファルトが広がっていた。それでも、何かに憑かれたように彼女は歩き続けた。時折り、この世のものとは思えない轟音と共に大きな黒い影が空を覆い、過ぎ去っていった。 側溝を越え、なんとか、命の感じられる土の匂いのする空き地にたどり着くと、枯れかかっているノギクの花にシジミチョウが管を伸ばして、ないに等しい蜜をむさぼっている。これを捕らえて口に運ぶのに何の苦労もいらなかった。しかし、これで今は持つが、空腹はすぐにやってくる。 彼女は、再びアスファルトの海を渡る決意をした。そして、側溝まであと少しというところに来たときである。それは轟音を伴わず、静かに、突然空から降ってきて彼女の体を押しつぶした。 「ちぇっ、カマキリ踏んじまったよ」 男はそう言って唾を吐くと、不機嫌な顔をしてその場を立ち去っていった。 `・・・・・・ この死骸には一体どんなドラマがあったんだろう?
(2008/11/22)
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