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| 少しヒザを曲げてみれば、かつてだれもがその目の高さでした。覚えている?こんな景色、あんな遊び、そんな出来事・・・
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| お日様の光が小さく揺らめいた それは不思議な水たまり 顔を近づけてみると ぼくの頭が影になって 底の方まで見えるようになる ゴツゴツ岩の表面に 海藻やフジツボが一杯だ 小さなイソギンチャクだ 小さなウニがトゲを動かしている 小さなカメの手みたいなのが生えている 小さな巻貝が角を出して動いている 小さなヤドカリもいるぞ 小さなエビがじっとしている 小さな魚はハゼかな 小さな・・・ うわー何だろうあれ気持ち悪い ウミウシっていうのかな あ、カニがいた! あのハサミにつかまれたら痛いだろうな |
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| か、海水浴に来てやらなくちゃいけないのは 砂のお城を作ることさ そ、それから 風邪をひかないようにこんがり日焼けしなくちゃ えーと、それから・・・貝殻集めだ 標本をつくるんだもん えーと、えーと・・・ うるさいなあ、にいちゃん 海の水は塩っ辛いんだよ 鼻の中に入ると痛いんだよ それからクラゲだっているよ サメが来るかもしれないんだよ それから、それから・・・ いいんだ 来年は泳げるようになるから・・・ |
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| いつもぼくが一番早く気付くんだ ポツリと腕に冷たいものが当って いつの間にか空が一面あやしい雲 そして辺りに 焼け焦げるようなにおいがたち込める これ雨のにおいなのかなあ このにおいがするとすぐにザーっと来るよ 今日はもうおうちに帰ろう うわーもう降ってきた! 急げ急げ |
| ・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・ ※日照りが続いた後に雨が降ると、地面から独特のにおいがする。土や岩石に含まれる特殊な油成分が、湿度が上がるときに鉄を触媒としてペトリコールという物質に変わる。これが雨が降る前のにおいの正体と言われている。 |
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| 知っているだろうか 新宿、渋谷、池袋、上野、銀座 若者たちでにぎわう街の そこにもあそこにも 白い服を着た傷痍軍人が アコーディオンを奏でていた 道行く人はみんな 見て見ぬふりをして 急ぎ足で通り過ぎていた あの人たちのことを聞いても お父ちゃんもじいちゃんも なぜかあまり話したがらなかった 兵隊さんなんて惨めで汚くて 少しもカッコ良いと思わなかった 戦争は嫌だなあと思った あの悲しいアコーディオン弾きは どこに行ってしまったのだろう 知っているだろうか あなたが歩いている街の そこにもあそこにも 悲しい音色が流れていた |
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| 夏休み最大の楽しみは お母ちゃんの田舎に行くこと いつも乗る湘南型の急行電車 鮮やかなオレンジとグリーンの車体は 特急よりカッコ良かった 駅に着くと ベントーベントーと 駅弁売りの声が近づいてくる 暑くて少し開けてあった窓を お父ちゃんが一杯に上げて 売り子のおじさんを呼ぶ 駅弁は駅弁 今みたいに沢山の種類はなかった その代わり駅ごとに特徴のある駅弁だった ぼくはなぜか 弁当の木のふたにこびりついた かたい米粒をつまんで食べるのが好きで 旅行の味がするような気がした 開閉式の窓が珍しくなって いつしか駅弁売りの声も聞かれなくなった |
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