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 彼は自室のベッドに、うつ伏せで倒れこんだ。

 「僕はもう終わりだ…」


 泣いても泣いても涙は枯れない

 枕は見る見るうちに水浸し

 
 「死にたい、死にたい」

 彼は声を殺して何度も何度も、そうつぶやいた。



 「あなたはあなたの絵を描きなさい」

 先生の声が頭の中で鳴り響く…

 「うんざりだ…頼むから消えてくれ…」

 人差し指を耳の奥まで深く突っ込む

 それでも声は消えない。


 頭をかきむしる

 全身をかきむしる

 
 部屋中を転げ回り

 そして仰向けになって天井を見た。


 僕は学校をクビになった…

 日本に帰って来てしまった…


 絵が書けなくなった…


 僕はもう、本当に終わってしまったんだ…

 そう思うとまた、幾度も幾度も泣けてくる。


 目を閉じた

 眼の奥で懐かしい風景を観た

 幼少期の思い出だ…


 アトリエで絵を描く父さんの背中…


 目を開けた

 とても不思議だった

 なんでこんな事、思い出したんだろう…


 原因はすぐに分かった

 コーヒーの香りだ。


 
 僕が天才とうたわれる様になってから、どれほどの時が流れたのだろう…

 父さんと、ゆっくり話をしたのはいつ以来だろう…

 コーヒーの香りに心を奪われたのなんて

 本当にいつ以来だろう…


 彼は涙を拭き、ゆっくりと起き上がった。
 

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芸術家のスランプ、、、うーんわかりますね〜。
私も芸術家の端くれでした。
コーヒーで昔を思いながら癒してください。

2008/10/8(水) 午後 1:27 [ 阿陀無有 ]


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