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魔法の靴 〜前編〜

 本日姉が亡くなった

 享年81歳

 結局姉の意識が戻ることはなかった。

 もう長い間、会話すらしていない…

 それでも不思議と悲しいものだ…

 姉はずっと「たった一人の人にでもいい、生きているうちに何かを残したい」と言っていたが

 結局何も残せなかったようだ。

 さぞ無念だろう…

 そう思うと、なんだかとても悔しく思う。





 









 私は先日、魔法使いのおばあさんを助けた。

 なぜそのおばあさんが魔法使いだとわかったかと言うと、私に魔法の靴をくれたからだ。


 学校帰りに道で倒れていたので、救急車を呼んで病院へと運んだ。

 おばあさんは一命をとりとめ、私はとても安心した。


 それから私は毎日病院へと通った。


 おばあさんはある日「あなたは命の恩人よ、お礼に何でも願いをかなえてあげる」と言ってくれたので、私は冗談半分で「物語の中に、自由に出入りしてみたいなァ」って言ったら、おばあさんは翌日私に靴をくれた。


 「これは、物語の中に自由に出入りできる魔法の靴よ」そう言っておばあさんはにっこりと笑った。

 それが本当ならどんなに素敵だろう。


 それはとっても素敵な靴だった。

 足のサイズもぴったりで、春物のワンピースなんかに良く似合いそうだ。

 確かにこの靴を履いてお出かけしたら、まるで物語のヒロインになったみたいで気分がいいだろう。

 オードリーヘップバーンになった気分で、ローマなんかを歩いてみたい。

 私はそんなことを空想しながらくすくすと笑った。

 「気に入ってもらえたようで嬉しいわ」

 おばあさんは病室のベッドの上で横たわりながら、嬉しそうに笑った。



 ある日、いつものように学校帰りにおばあさんの病室を訪ねると、一人のおじいさんが、おばあさんのベッドの脇でパイプ椅子に腰掛けながらうなだれていた。

 おばあさんは静かに目を閉じていた。


 おじいさんは私に気づくと軽く会釈をした。

 おじいさんはおばあさんの弟だった。


 おばあさんの容態は急に悪化したらしく、昨晩から意識を失ったようだった。

 結局意識は戻らないまま、つい先ほど息を引き取ったと言うことだった。


 「姉はずっと、たった一人の人にでもいい、生きているうちに何かを残したいと言っていましたが、どうやら何にも残すことが出来なかったようです…そう思うと無念でなりません…」

 おじいさんは、もう長いことおばあさんと会ってはいなかったようだった。

 久しぶりの再会が死に別れだなんて、さぞや悲しいだろうと私は胸を痛めた。



 でもおじいさんは勘違いをしている。

 おばあさんは私に魔法の靴をくれた。

 たった一人かもしれないけれど、おばあさんは私に魔法の靴を残してくれたんだ。

 

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なるほど冒頭は弟さんの思いでしたか。
どうなるんだろう??

2008/8/5(火) 午後 5:04 ばっど

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