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三浦哲郎さんの作品の中には、実によく植物の名前が出てくる。
たとえば、今読んでいる長編小説『海の道』では、
《ビョルンソンがぎんを初めてみたのは、油菜の花が咲くようになってからだが…》
とか、
《これは、なんというまばゆい光景だろう。入江を半円形に囲んでいる山の斜面は、油菜の花で真黄色に塗り潰されていた。》
や、
《モンペの紐に手をやりながら慌しく駈け降りていった。油菜の茂みを分けてしゃがむと、大きなぎんの目の高さに花の頂が咲き揃っている。…黄色い油菜の花の間から、ひろがっていく血の海がみえた。》
《ぎんがそろそろ仕事じまいをしようと思ったときには、雨もよほど小降りになっていて、海の水平線近くの雲の裂け目からこぼれた黄ばんだ夕暮れのあかるみが、薪小屋の前の柿の若葉をひからせていた。》
《時ならぬ揃いの赤半纏といい、ドロやなぎの下で棒の先を削ったり、井戸端で九寸五分を熱心に研いだりしている男たちといい、漁師たちが群をなしてなにか物騒なことを企んでいるとしか思えない。》
《けれども、年が明け、また油菜の季節が巡ってきても、凌風丸は一向に姿を表さなかった。》brown
《下駄を両手に、あっちこっちと、小鳥のように浜のはずれの岩山まで飛んでいって、ついでに岩の裂け目に咲いている山百合の花を折ってくる。》
《彼は真新しい、黄色の夏服をぎこちなく着て、胸に早咲きのオランダ菊の花束を抱えていた。》
などのように、色々な場面で花や樹木が描かれていて、場面のイメージ作りの一役を担っている。
この小説は八戸が舞台になっているが、その地域に相応しい、また、季節や場所を感じさせる重要な演出効果を持たせているのである。
今、金田一温泉郷では『まるごとミュージアムガーデン 花と文学の魅力あふれる温泉郷づくり』をすすめている。
昨日、この次の会議のためにいわてまちづくりアドバイザーの軍司さんと、市地域づくり推進課のMさんと打合せを行なった。
軍司さんは、前回の会議の後、更に三浦作品からこのように金田一温泉郷にまつわる花や樹木が描かれている場面を沢山探し出して、資料を作ってくれていた。
県立図書館から『三浦哲郎自選全集』等を借りて一生懸命調べてくれたそうだ。
その後も現地の散歩コースを訪れて、植物類の現状も調査してくれたようで、その結果を地図に示して、作品調査の内容も合わせて、資料作りをしていると言っていた。
大変貴重な資料が出来上がりそうなので、とても楽しみにしている。
このようにして、地域と文学作品を関連づけようとの試みがなされている。
熱心に取り組んで頂いている軍司さんの誠意に答えるためにも、地元の皆も軍司さんに負けないように頑張って取り組んで、何としても成果を上げなければ成らないと思わされた。
関連ブログ:何でもナニャトヤラ
http://blog.canpan.info/azukibatto/
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