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《私は、短篇小説を書くとき一尾の鮎を念頭に置いている。できれば鮎のような姿の作品が書きたい。無駄な装飾のない、簡潔で、すっきりとした作品。小粒でも早瀬に押し流されない力を秘めている作品 ― けれども、これは飽くまでも一つの願望で、そんな鮎のような作品が書けたと思ったことは残念ながらいちどもない。
いつの日か、情けない思いをさせられたときなどに胆の中で「短篇で来い。」といえるようなものを、一つだけ書きたい。(一つで死ねるか?)三つ書きたい。いや、七つ。いや……願わくは書くもの全てが生きのいい鮎のようであれ。》
『一尾の鮎』(S63文學界2月号初出、1990.H2.11単行本.講談社発行)より。
この『一尾の鮎』の一節は、八戸市に設置された文学碑にも刻まれていて、作家三浦哲郎の根幹を表している文章なのである。
三浦さんは、新潟県の小千谷にいる母方の伯父さんの所を訪れた時に、川の簗で飛び跳ねている鮎の姿を見て感動したことを、何かの本に書いている。
その時に見た鮎のことがこの文章に繋がっているものと思われる。
今、三浦さんがお父さんと打ち釣りを楽しんだ金田一温泉郷の馬渕川沿いには、県北随一の鮎の中間育成養魚場が有り、季節には放流された鮎を狙って方々から釣人たちが訪れる、アユ釣りの名所となっている。
今年もその鮎の放流が始まったというニュースが流れていた。
■南部馬淵川漁業協同組合
http://www.kiddy.co.jp/ayunip/iwate/mabetiN_new.html
http://www012.upp.so-net.ne.jp/morikawa/area_guide/iwate/mabeti_river.htm
http://www.e-shops.jp/local/lsh/an/3/524998.html
この養魚場も三浦文学散歩のコースに入れることを検討したが、病原菌を嫌う施設で季節も限定されるということで、組合からは快い返事を頂けなかったので断念した。
ゆかりの芥川賞作家が座右の銘にしている言葉なので、漁協で販売する鮎の地場産品ギフトに、三浦哲郎文学ゆかりの地としてこの『一尾の鮎』の一節を入れさせてもらっては如何だろうか?
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