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■写真:真冬の岩手山…岩手町川口付近及び渋民より遠望


   ふるさとの 山に向ひて
    言ふことなし
   ふるさとの山は ありがたきかな
                   石川啄木


盛岡市に向う途中車窓から見える雄大な姿の姫神山や岩手山が見えてくると、いつもこの短歌が思いだされる。

石川啄木はふるさと旧玉山村渋民の辺りから見える両方の山を眺めながら育ち、その山を思いながらこの歌を歌ったのだろう。
私が小学校5年生の時に初めて知ったこの歌には、心にジーンと滲みるような共感を覚えたものだった。
因みに、我がふるさとの山はというと、折爪岳になる。

26歳2ヶ月の短い生涯を駆け抜けた啄木が、彷徨った地ではほんの束の間の滞在にも関わらず、今ではゆかりの地として歌人石川啄木を讃えて地域の人々や観光客に親しまれている。

渋民尋常小学校の代用教員を辞してふるさとを離れた21歳の啄木が函館に向ったのは明治40年5月4日であった。
函館では尋常小学校代用教員、函館日日新聞社遊軍記者と職を求めるが、函館大火で勤めを失い9月13日に札幌に向う。
9月16日から札幌で北門新報社に勤務。
10月1日からは小樽日報社に勤務。
翌明治41年1月22日から釧路の釧路新聞社に勤務。
そして4月5日には、ついに東京での文学活動をめざして釧路を発ったのは22歳の時だった。

北海道を旅行すると、釧路や小樽そして函館では、ゆかりの歌人として石川啄木を大きく取上げていて、短歌の舞台などゆかりの場所を観光ポットとして活かして、多くの来訪者に親しんでもらっているのである。
それなのに啄木が北海道の各地に滞在した日数は

 函館 130日 4.3ヶ月
 札幌  17日 0.6ヶ月
 小樽 112日 2.8ヶ月
 釧路  73日 2.4ヶ月

 合計 332日  11ヶ月

とこのようにほんの束の間だったにも関わらず、今では大変有名になっていて、その知名度はふるさと渋民を凌ぐほどになってるのではないだろうか。

一戸町を舞台にした小説『忍ぶ川』で芥川賞を受賞し、その一戸町を自ら郷里と言って憚らなかった三浦哲郎が、岩手では今一つ知名度が無いのは何故だろうか?
『ユタとふしぎな仲間たち』では、金田一温泉の「座敷わらし」のことや、「化石の宝庫」であることなどこの地域のことを作品にちりばめてくれている。
他にも多くの岩手にゆかりの作品を残してくれているにも関わらず、「岩手にゆかりの芥川賞作家三浦哲郎」は認知されていないのである。

そこで、一昨年、岩手県教育委員会に岩手にゆかりの作家として認めて、県立図書館開架書庫の郷土の作家コーナーに三浦哲郎の書籍も加えて貰えるように請願したことがあった。
その結果「岩手で生まれていない上に、岩手に住んでいないなど、基準に該当しないために「ゆかりの作家」にならないという結論の通知文章を頂いたのであった。
では、よその地域での石川啄木の例は何なんだ?と文句を言ってみたけれども、当時は結論先に有りきで、聞き入れて貰えなかった。

立派な『忍ぶ川』文学碑が建立されて、今では菩提寺・廣全寺に三浦さんが眠る一戸町は、正に三浦哲郎の郷里となっているのである。

岩手県教育委員会や県立図書館そして岩手日報社には、このことを踏まえて郷土の芥川賞作家三浦哲郎を認めて、地域に根差すための働き掛けに協力してもらいたいものである。

今日、盛岡の馬場勝行さんから久々に電話を頂いたので、そんな話しをしながら、昨年開催した三浦文学講演会をまた盛岡市で開きたい希望を持っていることを伝えた。


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