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合歓の花が咲きだした。
この花を見ると思い出す三浦作品がある。 < 合歓木の多い町であった。 そんなに合歓木の多い町は、おなじ谷間ではそこだけである。それで近在の人たちは、その町のことをネムと呼んでいた。 町には、ちゃんとした名がないわけではないが、谷間の人たちは誰でも、 「あした、いいあんべええだったら、一緒にネムの市にいかんかね。」 そんなふうにいっている。 ネムには、駅前の街道に、片側だけだが一丁ほどの合歓木の並木があって、その並木の下に、一日、十一日、二十一日と、毎月一の日に市が立つのである。> 三浦さんの著書『野』に収められている「合歓の町」という作品の書き出しである。 この作品は、この辺り旧南部藩の地域で盛んに行われている市日(いちび)のことが詳しく描写されていて、ある町の市が舞台になっている。 < 市の日には、朝早くから近所の町の商人たちが、品物を自分で背負ったり、共同で小型トラックに積み込んだりして集まってくる。毎度おなじ顔ぶれだから、店を出す場所もきまっていて、彼等は自分の場所に荷物を下ろすと、さっそく店を作りにかかる。 竹竿の一方の端を合歓木の幹に縛りつけ、一方の端を棒の柱で支えて、それからシートをうしろの方へ、地面まで斜めに張って、それが屋根。その屋根の下に、床板を敷き詰め、その上に茣蓙を敷き、品物を並べて、これが店。つまり、一本の合歓木を間に、二軒つづきの店ができるわけである。等間隔の並木だから、店を連ねるには都合がいい。店先も、屋根の線も揃って、見た目にも綺麗である。人もよく集まってくる。 > …(「合歓の町」より抜粋) いつもの癖で、作品を読みながら舞台の町をイメージしてみる。 “谷間の町” “片側だけ合歓木の並木になっている駅前の街道” “駅前の街道の市” “合歓木の並木の市” “市の端が橋の袂” “川向うの古い造酒屋の奥さん” “万引き常習犯の酒屋の奥さん” “橋を渡る鉄道員” “橋を渡る郵便配達夫” “「銘酒 峰の誉れ」”?? etc. どう見ても2国鉄の機関区が在った一戸町の市日の様子に思えて仕方がないのだが、果たして、三浦さんは何処の町を描写しているのだろうか? 梅雨明けを宣言するように、紅色の花を無数に咲かせ始めた合歓の木を見ると思い出して気になるのである。 ■当ブログ過去の関連記事 【合歓木の花】 2010.8.1(日) |
三浦哲郎著書
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