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1月26日に投稿した『付添婦の岩崎さん』
http://blogs.yahoo.co.jp/onikosato/archive/2007/01/26
を読んで「唐草模様の風呂敷の話」についてどんな話か聞きたいと「二戸ローズ」さんから言われていたので、『旅雁の道草』の最後「湯けむりの章」の始めに出ている内容を紹介します。
これは老人の介護に従事している人たちにも読んでもらいたい作品だなぁと思っています。
《おふくろの付添婦だった岩崎さんの思いで話の一つに〈唐草模様の風呂敷の話〉というのがある。おふくろの食欲が衰えると、岩崎さんはよくその話を持ち出しておふくろを励ましたという。
「早く元気になって東京へ参りましょうね。おばあさん。東京では息子さんやお孫さんたちがお待ちかねですよ。ご心配なく、私がちゃんとお供をしますから。唐草模様の風呂敷にお襁褓(おむつ)をどっさり包んで。おなかが空っぽだと、とても長旅はできません。一と口食べて、さあ出発です。」
思わず開いたおふくろの口に、一と匙(ひとさじ)、素早く滑り込ませる。それから、町の駅の構内や車内の風景、走る車窓からの眺めなどの、ユーモラスで目に見えるような描写。
「さあ、盛岡に着きました。一と口食べて、新幹線に乗り換えましょうね。」
また、ひらりと一と匙ーーーそんなふうにして、二人が東京練馬の私のところに辿り着くころには、おふくろの食器はあらかた空になっている。
いつもおなじ話の繰り返しだから、おふくろの方もすっかり憶えていて、さあ一と口、というところへくると、自分から先に口を開ける。うっかり話の順序を間違えたり、肝腎なことをいい忘れたりすると、ちょっと手を上げて訂正する。しまいには、食事時でなくても、ふっと思い出したようにその話をせがんだりするようになった。
おばちゃん、と呼ぶので、なんの用かと思うと、耳を引き寄せて、あの話をしなせ、という。なんの話ですかと訊くと、ほら、あの、唐草模様のーーーーと、おふくろはいう。
「東京に着いて、私が唐草模様の風呂敷包みをヨッコラショと背負うところへくると、いつも目がとっても楽しそうに笑うんです。胸の動悸がおさまるまで、あとを話すのを待たされることもありました。どんなに東京行きを願っていらっしゃいましたか……。」》
如何でしたか。心温まる話でしょう。
付添婦の岩崎さんの献身的な仕事振りが伝わってきますよね。そして、三浦さんたちの深い親子愛も感じ取れる内容だと感動し思わず唸ってしまいました。
実際に著書を手に取って読んで頂けるともっと上手く感じて貰えると思うので、是非お勧めします。
このページに描かれている挿絵の「おふくろの顔」(装画:小松久子)は随筆集『母の微笑』で描かれているような、「実に穏やかな微笑」である。
因に、『愁月記』では岩崎さんは「石崎さん」で登場しています。
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三浦さんとお母さんの絆の強さは切ないほどです。一昨年八戸公会堂で催された講演の席で、三浦さんが体から絞り出すように「私は母を愛していたんです」という言葉が忘れられません。
2007/2/27(火) 午前 8:53 [ まつの実 ]