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先日は、ゆかりの草花や木などの植物を探し出す話をしたが、読んでいて直ぐ忘れてしまうので、食べる植物のことを書き留めておくことにする。
『おらんだ帽子』の中の『離郷』を読んだ。
これは、田舎(一戸町)に住んでいるおふくろさんを、冬の間だけ東京の我が家で過してもらおうと、田舎まで
迎えに来て連れて行く時の話である。
その中に、おふくろさんがサングラスをかけて縁側へ出て、食用菊の花摘みをしている情景が出てくる。
《みていると、すぐ鼻眼鏡になる男用のサングラスを、猫が顔を洗うときの手つきで押し上げ押し上げしながら、丹念に花びらを摘み取っている。笊のなかに堆く溜まった真っ黄色の花びらのなかで、時折、水玉が煌めいた。
摘み取った花びらは、どうするのかというと、よく水洗いして、味噌漬けにする。菊の花びらは、そのままで味噌汁の実になるし、湯掻けば、おひたしにも酢の物にもなるが、笊に溜めている花びらの量をみれば、これは味噌漬けだとすぐわかる。
私は、子供のころによく見物したおふくろの漬け物の流儀をいまでもはっきり憶えているが、まず甕の底に味噌を薄く敷き、その上にキャベツの葉を一枚に敷き詰めてから、水切りをした花びらを厚さ二センチほどに積んで、その上にまたキャベツの葉を敷き詰める。そんなふうに、味噌、キャベツ、花びら、キャベツ、味噌という順を繰り返しながら、何層にも重ねていって、上に軽目の重石を載せる。すると三日か四日で、花びらが薄い板のような味噌漬けになる。
黄色い花の色はそのままで、口に入れると花のかおりもする味噌漬けである。
このあたりでは、真冬になると、朝炊いた御飯が昼にはもうかちかちに凍ってしまう。
それで、昼は大概湯漬けにすることになるが、この菊の花の味噌漬けは、湯漬け御飯によく合うのだ。
縁側の菊は、今朝方、近所の農家の人が、霜除けをして作った花の最後の収穫だといって、餞別代わりに持ってきてくれたというが、おふくろは、今年は独りで冬を越すことになる姉のために、早速味噌漬けにすることを思い立ったのだろう。》
食べてみた憶えは無いが、寒い日にこの文章を読んでいると、一体、どんな菊の香りがするのだろうかと興味を誘うから、菊の花の味噌漬けの湯漬けが食べて見たくなる。
「菊の花の味噌漬け」を今も造っている家はあるのだろうか。どこか売っている所はあるのだろうか。
これは、この地域ならではのものなのだろうか。もしも、そうだとしたら、上手く活用できないものか。
先ずは、食べてみなければ何とも言えないので、時節柄、どこか食べさせて貰える所が在れば食べてみたいものだ。
この中ではおふくろさんとサングラスの話しもとても味わい深いものがあり、家族愛が伝わってくる良い作品である。
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