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『ユタとふしぎな仲間たち』に出てくる「湯ノ花村」の温泉は、お湯の温度が低いので、風呂を沸かすのに薪を割って焚いている。
《温泉といっても、湧いている鉱泉は温度が低いから、風呂は沸かさなければはいれない。
その風呂を沸かすための薪を割るのが、寅吉じいさんの仕事なのだ。だから、寅吉じいさんはたいてい薪小屋にいるが、薪小屋にいない時は谷間の浴場の焚口の前で、キセルで一服つけながら火の番をしている。その焚口にもいないときは、谷川のほとりで傾いている朽ちかけた水車小屋のかげで、昼寝をしている。
ぼくは、寅吉じいさんを捜して水車小屋のかげまでいって、そこの草の上に寝そべって昼寝をしているじいさんと並んで、寝てしまうこともあった。薪小屋で、まだ割らない薪に腰をおろして見物しているうちに、だんだん瞼が重たくなってきて、いつのまにか眠ってしまうこともあった》
……新潮文庫『ユタとふしぎな仲間たち』より抜粋
金田一温泉郷の湯温は35度位で体温と同じなので沸かさないと入れない。今ではボイラーを使って沸かしているが、三浦さんがいた頃は、薪で沸かしていたのだった。
谷川のほとりの「水車小屋」も、以前には長川沿いに在ったそうだから、三浦さんは、この金田一温泉郷の情景を小説に描いていることがうかがえる。
寅吉じいさんとユタが寝そべっていただろう草むらの所に、いつの日か、この水車小屋を、久慈市の「山根六郷」のように復元できないものかと思っている。
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