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『三浦哲郎短篇小説全集 第1巻』の月報を読んでいる。
中には三浦さんに縁のある次の方々が、三浦さんの初対面の頃の思い出を綴っていて、三浦さんの人となりの一コマが分かりとても楽しく読んでいる。
庄野 潤三 一本の葡萄酒
瀬戸内晴美 美青年
高井 有一 幸福な家族
小沼 丹 将棋
『一本の葡萄酒』は、三浦さんがスペイン旅行中に見聞きした事柄について聞かせてもらった思い出を庄野潤三が書いている。
スペイン紳士が同伴客に葡萄酒を振舞う前に、給仕が勧める葡萄酒の試飲をするしぐさを実地しながら話してくれたそうだ。
《三浦君はこれまでの私の接した限りでは、酒席ではみんなと一緒に楽しみながら、しかし、どちらかといえば目立たない方である。人の話に相槌を打ったり、参ったというように唸ったり、時にはふき出したりしながら、もっぱら聞き手に回っている。
この時のようなのは珍しい方だろう。それにしても彼の話しぶりは巧みであった。……》
スペインの話のあと、三浦さんに「船頭小唄」を歌ってくれるように頼んだと書いている。
《本当に声が出なくなったんですといった。彼にとっては「忍ぶ川」で芥川賞を受賞する以前の、奥さんと二人で耐え抜いた、苦しい時期のかたみともいうべき歌曲である。昔はこれが始まると、みんな項垂れて聴き入ったものであった。》
三浦さんの「船頭小唄」は、自作にも書いているが、知人友人の間ではこのように有名な話しとなっているようだ。
いつか、聴ける機会がないものかと思っている。
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