三浦哲郎文学を読む会

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今日は送り盆です。
灯籠流しや盆踊りで親族の霊を送る日ですが、金田一ではいつの頃からか「灯籠流し」は行われなくなり、唯一、駅前広場での盆踊り大会だけが残っているので、ご案内します。

      金田一温泉駅前夏祭り

  8月16日(土)
  場所:金田一温泉駅前広場

  ・芸能の集い: 午後6時30分〜
  ・盆踊り大会: 午後8時〜9時
  ・「小さな花火大会」、「フリーマーケット」、「夜店」、「紙芝居」

櫓を囲んで輪になって「ナニャトヤラ」を踊る懸賞付きの盆踊り大会だそうです。
金田一に伝わるナニャトヤラは、唄も踊りもよその地域と少し違うように感じています。
三浦さんがブンペ(文男)さんから教わったナニャトヤラは、まさしくこの金田一の踊り方だった筈です。

盆踊りや「なにゅとやら」が描かれている三浦作品の一部を紹介しましょう。

《私は、村にいる間、文男さんとは毎日のように会って、村の流儀について教わるところが多かった。たとえば男女の交際について、文男さんは、村の流儀の講釈だけではなく、それを村人として私に実践させようとして、あちこちの村の祭りや盆踊りに連れ出してくれたりしたが、私は、実行力が伴わなくて、文男さんを失望ばかりさせていた。》
                   (『笹舟日記』の『林檎畑の林檎づくり』から抜粋)

または、

《…彼は、ふと思い出して、郷里の盆踊りの唄をひとふし口ずさんだ。
「……なんだい、いまの鼻歌は。」と、少し間を置いてから相棒がいった。「変な唄を知っているんだな。どこの国の唄?」
「どこの国って、おれの田舎の唄だよ。」
と彼は笑っていった。
「おまえの田舎の? おれはまた、アフリカあたりの唄かと思ったよ。文句がまるでわからなかった。」
「盆踊りの唄でな。よく、月夜の晩に、こうして自分の影を踏みながら踊ったんだ。」
そういって、足元の影をちょっと蹴るようにすると、踵を踏み潰したスニーカーが足から脱げて前の方へ転がった。相棒がくすっと笑った。
「おまえ、踊れるのか?」
「踊れるさ。おれの村には踊れない奴なんか一人もいないよ。なんなら踊って見せようか。」
「いいよ、いまでなくったって。」と、相棒は本気で立ち止まりそうになった彼の腕に手をかけていった。「それにしても、さっきのはなんだか変てこな唄だったな。御詠歌みたいな。あれをもう一遍やってみろよ。」
それは、お安い御用で、
(にゃにゃどやらよおぅ、にゃにゃどなされえのぉ、にゃにゃどやらよおぅ……)
「驚いたなあ。まるっきりわからねえや。その先は?」
「先なんてないよ。唄の文句はこれっきりで、これをおなじ節回しで繰り返すんだ、際限もなく。」
「……際限もなく、ねえ。まるで唄というより呪文だな。一体、どういう意味なんだ?」
「それは俺にもわからない。俺ばっかりじゃなくて、誰にもわからないんだよ。」
「どうしてだろう。だって、おまえの田舎の唄なんだろう?だったら、東北弁だろう?」
「多分な。でもね、ヘブライ語だという説もある。」
「ヘブライ語?」
「ヘブライ語だとすれば、〈永久に汝安かれ〉という意味になるらしい。」
相棒は笑い出した。
「ヘブライ語とは、意表を突くね。だけど、どうしておまえの田舎にヘブライ語の唄が残ってるんだ?」
「それはな、キリストがきたからだよ。」
「キリストが? おまえの田舎にか?」
「そうよ。日本へは二度きて、その二度目におれの田舎の方へきたんだ。そんな話、聞いたことないか?」

……近道をして、人通りの絶えた町裏の路地伝いに駅まで送っていく途中、急に相棒が立ち止まって、
「おい、あれをやれよ。」
といった。
「あれって、なんだ。」
「あれだよ、ほら……ヘブライ語の踊り。」
「ああ、〈永久に汝安かれ〉か。」
「それそれ。〈永久に汝安かれ〉だ。おまえ、踊れるといったろう。踊って見せろよ。」
よし、と彼は手のひらに唾をした。
「頭の上の高いところに、磨いたような月が出ていると思ってくれ。足元に自分の影が濃く落ちている。それを藁草履で踏みながら踊る。藁草履は新しいのより古いのがいい。古くて、汗と土とですこし重たくなったのがいい。そいつを引きずるようにして、踵で軽く地面を叩きながら踊る。こんなふうにだ。」
そういって、踵を踏み潰したスニーカーでまず踊りの足運びだけをやって見せると、思いがけなく、履き古した重い藁草履を夜露に濡れた地面に引きずるのと全くよく似た音がして、彼は自分でびっくりした。
「これだ、この音だよ。」と彼は興奮していった。「これが何十人分も揃うと相当な音になる。その音で調子をとって踊るんだ。」
「笛や太鼓は?」
「そんなものはない。」
「無伴奏か。」
「唄と草履の音だけだ。」
彼は唄いながら踊りはじめた。両手を左右にひらひらとふると、相棒は道端に後退りした。けれども、彼は踊りながら五メートルとは進めなかった。不意に目頭が熱くなり、そこから訳のわからない涙がじわじわと湧いてきたからである。》

            (『蟹屋の土産』の中の『歓楽』より抜粋)


作中にはヘブライ語のことで、新郷村に伝わる「イエス・キリストの墓」の伝説についても、詳しく書いています。

このように三浦さんも懐かしむ「なにゃとやら」を、さぁ、今夜は懸賞を狙って陽気に踊りましょう。

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