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この地域の産地直売所は、今、どこも山菜でおお賑わいだ。
その中心となっているのが天然の「タラッポ」である。
昨今、山のタラの芽を幹ごと切って自宅に持ち帰り、庭や畑に植えて栽培する不届者が増えていて、野山を歩いて見ると、枝が切られてしまったタラの幹を方々で見かけることが多くなり、見つける度に肝が焼ける思いがしている。
栽培ものは山のものより早く収穫できるとあって、雪が融けて間も無くの頃にいち早く産直所などの店先に並んでいるものは、間違いなくそのような栽培もので、山菜取りを趣味にしている者にとっては紛い物に見えてならないのだ。勿論風味も山のものには敵うまい。
だから、産直所では、慎重に天然物を見分けて買わなければならないという、厄介な時代になってしまった。
山菜取り名人に手ほどきを受けて、長年山菜に親しんでいた三浦さんなら、さぞかし見分けが上手かったことだろう。
タラッポの天ぷらが良いか、酢味噌和えが良いか。
娘さんたちの「山のアスパラガス」とは良く言い当てたものだ。
タラッポの季節になると、おふくろさんが言った
「鱈汁には、忘れないで肝を入れなせ。それがこつだえ」
を思い出してしまう。
枕元でタラッポ採りをしてきた話を聞かせたら、鱈と聞き間違えたのだそうだ。
今年もその季節真っ盛りになっている。
明日の朝は天気が良さそうなので、山を荒らしに出かけて見ることにしよう。
『タラッポ』
(昭和58.4〜59.3「婦人画報」に初出掲載。単行本『旅雁の道草』講談社。単行本『文集母』世界文化社。に収録)
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