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今朝深夜、たまたまスイッチを入れたラジオから突然三浦哲郎の声が聞こえてきた時には驚いたが、これも神の成せる技とでも言うのだろうか。
昨夜のNHK「ラジオ深夜便」は青森発深夜便で、アンカーは青森放送局の斎康敬アナウンサーが担当して放送していた。
それで、午前1時台の「朗読の世界へようこそ」は、〈〜ことばを愛した作家・三浦哲郎〉と言うタイトルで、大分前に「我がふるさと我が青春」と言う番組に出演した時の三浦さんの話と、短編の三浦作品3編の朗読を聞かせてくれた。
番組では「青森ことば(南部弁)」に拘っていて、最初の作品朗読『ぜにまくら』は、八戸子どもの本の会代表の山田剛也(やまだよしなり)氏による南部弁での語りで、とても味わいのある物語だった。
そして、『はな・三しゅ』の中の1話『ごぼう』と、昨年亡くなる2ヶ月前に出版された「おふくろの夜回り」から『おふくろの夜回り』を、斎アナウンサーが朗読してくれた。
これら3題は何れも『短篇集モザイク2 ふなうた』に収録されている作品で、昨年12月20日に、この『短篇集モザイク』シリーズ1〜3の3冊を纏めた『完本 短篇集モザイク』が新潮社から発刊になっているので、皆さんにも興味を持って読んでもらいたい。
作品について少し紹介しよう。
『ぜにまくら』
喜寿と米寿の中間の83歳を金寿として祝う習慣のある北のある地方の話である。
漢数字の八十三を圧縮すれば、金という1字になるので、金寿というそうだ。
このあたりの説明の文章が、これから読み進む読者を引きつける内容になっているところに、三浦さんらしさを感じて唸ってしまう。
金寿を迎える者は、82歳の最後の夜を、ほんのひとにぎりかふたにぎりの小銭を、まくらの下に敷き並べて寝る習わしがあって、それらの小銭は長寿のお守りとして祝いに来てくれた近親者たちに分けてあげるという。
これを「ぜにまくら」というのだそうだ。
金寿を迎える連れ合いを抱えているトワ婆さんと、その「ぜにまくら」にまつわる物語である。
祝いごとと不幸ごとの交差する老夫婦とその身辺のユーモラスと田舎の雰囲気を感じさせながら読ませる名文章が心地よい。
ラジオの朗読から物語の情景を思い描いてみると、病院の描写はどうも旧岩手県立福岡病院に思えてくる。
私は知らなかったが、それならば金寿がこの地域の慣習なのか調べてみることにしよう。
『はな三しゅ・ごぼう』
私たちの地域の方言〈ゴンボ堀り〉に纏る、頑固一徹の大工喜三郎の身辺と牛蒡の花の物語で、方言〈ゴンボ堀り〉の解説と短篇ながらもほのぼの通い合うひとのこころの思いやりが感じられる描写が凄い。
『おふくろの夜回り』
三浦作品には母親のことを書いたものが多い。
晩年のおふくろさんは冬の間だけ東京の三浦家で過ごした。その時の一コマを描いている。
どれも日常のさりげない出来事を描いている作品である。
聴き終えて、録音して置けば良かったと悔やんでいる。
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