三浦哲郎文学を読む会

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会場の八戸市公会堂は、開場40分前に到着した時には既に館内のホールに長蛇の列が出来ていた。
寂聴さんの高い人気のお陰もあって、平日午後開催で心配された集客も何のそので、大ホールに入り切れなかった人達のために、ホールの外で実況映像を見せて上げていた。
この日の為に用意した金田一温泉郷での三浦文学のイベント広告チラシを、慌て並んでいる人達に手配りして歩いた。
実行委員会の人達の配慮でホワイエの一角に、ポスター掲示とチラシを置かせて貰う事ができた。
井伏鱒二は東北の人が余程好きだったのかと言って、太宰治と三浦さんの井伏鱒二との師弟関係についても話してくれた。
三浦さんの井伏さんに対する尊敬の思いと接し方は、人から嫉みをかうような卑しさが無く、羨ましい程の師弟関係を築かれていた。
それは、誰でも三浦さんに逢って、嫌な気持ちを持つ人はいなかっただろうことと、誰からも三浦さんの悪口なんて聞いたことがない。
そんな三浦さんの人柄だったから。

講演に先立って、この日から市内の市民交流施設「はっち」で始まった『三浦哲郎特別展』を、市長達に案内されて観てきたそうで、「三浦さんは、この街の誇りになる偉大な作家なのだから、文学館を建てて上げないといけない」と、市長に強く要望したと話していた。
そして、「私が生きているうちに開館して!その時には挨拶をしたい」と言っていた。

開会の挨拶に立った八戸市長は、大きな宿題を頂いたと言って、早速、寄付を呼び掛けていた。
建てないなら、金田一温泉郷か一戸に建ててしまうことになるかも知れないと、そんな思いがしている。
会場から幾度も笑いが絶えない寂聴節が続く。
途中、三浦朱門と言い間違えたところもあったが、それにしても、とても九十歳とは思えない饒舌と記憶力には驚かされる。

始めてあった時は、てっきりアルバイトの学生かと思ったが、既に結婚していて子供までいたのには驚かされた。
何しろどきんとするほどの美青年だったのだから、さぞかし、女の子に持てたことと思う。自分は三浦さんの母親か姉のような気持ちになって接してきたが、亡くなって改めて10歳しか違わなかったことを知ると、恋愛感情が起きてもおかしくなかった。

始めて会った時、「今に有名な作家になる」と予言して上げたのだったが、それから半年ほどして、芥川賞をとった若い新人の名前と写真を見て飛び上がらんばかりに驚いた。
まだ売れていない自分は、嫉妬心が出てもおかしくなかった筈なのに、本当に心から嬉しかったことを覚えている。

これまでお互いに新刊を出す毎に贈り合った仲だった。
その中でも、三浦さんから出稼ぎ家庭の妻の性を題材にした『夜の哀しみ』を頂いた時には、私が書くような小説を、純文学の三浦さんが書いて、今迄とは全く違う作風に挑戦したのには驚いた。
賛否両論有ったが、バルザックやモーパッサンの小説にも劣らない、最高傑作で直ぐに手紙で誉めて上げた。そうしたら、お礼の返事を電報でくれたが、そんな事をするのは三浦さんの他にはいなかった。


このように『夜の哀しみ』を絶賛して、聴衆の皆さんにも読むように強く薦めていたので、八戸の書店や図書館はその後、問い合わせが殺到しているに違いない。
何しろ、これも八戸の情景が描かれている作品なのだから。

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