■画像:東奥日報新聞連載 三浦哲郎特集第8回目の紙面
東奥日報新聞連載 三浦哲郎特集第8回目は短編小説「金色の朝」である。
生誕80年・芥川賞受賞50年特別企画
毎週日曜日に掲載、カラー誌面
芥川賞作家 三浦哲郎
作風と文学への旅
No.8(5.22) 短編小説「金色の朝」
仕事の厳しさと命の尊厳
三浦文学ゆかりの地(二戸市):金田一温泉郷
(写真2枚 夜通し介助し16匹もの子豚を取り上げた少年は金色の朝、手を洗う村の小川。
飼育舎で生まれ母豚の乳首に吸い付く子豚たち)
その乳首の色がいつもより濃くみえるのは、
西日のせいかと思ったら…。
(「金色の朝」から抜粋)
この本:「追悼の達人」(嵐山光三郎著 新潮社刊)
“珠玉ノ感涙文芸”に冴え
この作品はこのような野趣に富んだ作品ばかりを16集めた短編集『野』(単行本:1974.S49.12文芸春秋、文庫本:1990.H2.4.10講談社発行)に掲載されている。
これらの短篇は、三浦さんが所用で郷里一戸町の家に帰っていたときに、おふくろさんが問わず語りにしてくれた田舎話をもとにして書かれているが、『金色の朝』は父の村の親戚に聞いた豚の出産の話をもとに書いたと言う(「あとがき」又は『自作への旅』参照)。
〈父の村の親戚〉とは、『ブンペと湯の花』にも描かれている金田一温泉郷「きたぐに旅館」の創業者文男さんのことを指している。
三浦さんは、他にも『小指』など色々な作品にこの文男さんのことを描いている。
三浦さんは実際に豚の出産に立ち会ったことは無いそうだが、実に詳しく素敵な描写で表されている。
文男さんは倹しい生活をしている三浦さん家族のことを思い、きっといつか役に立つからと三浦さんに豚の飼育を勧めるのだった。
そして、ある日、子豚を届けにダンジャ坂を登って行くと、三浦さんと家族が石垣の上に立って待ってくれていて、出迎えを受けるのだった。
『ブンペと湯の花』に描かれているこの場面を読むと、家族の子豚にかける期待感と希望のようなものを感じて、作者の思いが伝わってくる。
この豚にまつわる物語が『ある外套の話』まで延々と続くのである。
この『金色の朝』を初めて読んだときの驚きは忘れられない。
作者の思惑にまんまとハマってしまったのだから、私にとっても印象深い作品となっている。
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