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「妻の橋」を読んで、改めてゆかりの場所やゆかりの人があることに気付いた。
備忘のためにも、それらをここに拾い上げてみることにしよう。
〈近くの人家といえば彼の家の方から橋へ向かって坂道を降りたところに、唖の夫婦が棲んでいる軒の低い家が一見あるきりだ。〉
この「唖の夫婦の家」とは、今の「忍ぶ川」文学碑の近くになるのかな。
〈彼は、大学が休暇になるたびに、友人たちには田舎へ帰るといってこの町へ帰ってきた。ここはそんな帰省の町にすぎなかった。町はずれの借家では、父親が軽い脳軟化症を患っていて、結婚を断念した姉は国道の橋の袂に琴の稽古場を開いていた。〉
実家だった所が「町はずれの借家」なのである。
〈姉は、国道の橋の袂の酒屋の二階を稽古場に借りて…〉
この「琴の稽古場」については、東京の三浦さん宅を訪問した際に直接夫妻に尋ねたことがあった。
懐かしそうに思い出していたが、断定できる場所が分からなかった。
地元の人達に尋ねているが、曖昧になっている。
「銭湯」は旧松の湯。
〈裏通りを遠廻りして、靴屋の前に出て小走りに国道を渡った。〉
「靴屋」とは?
〈二階の養蚕室の奥にある姉の八畳間に同居させて貰っていた。〉
実家の2階は「養蚕室」だった所。
〈…木橋とは反対の国道沿いの町並の方へ走り降りていった。…やっと国道に出ると、まだどこも表戸をあけていない商店街を、サドルから尻を浮かして産婆の家まで走りつづけた。
よその町の産婦人科の医者の囲われ者だったという、体格のいい、赭ら顔をいつもつやつやさせている産婆は…〉
この「産婆」は?
〈彼の姉は、町ではお琴せんせと呼ばれていた。〉
なるほど、「お琴せんせ」と呼ばれていたのか。
〈「これね、お姉さんの胞衣(えな)ですから、裏の畑の隅にでも穴を掘って埋めて下さい。」〉
裏の畑のどこかに埋められたのである。
〈彼は、毎日きまった時間に家を出て、裏山を歩き廻ることからはじめた。〉
「裏山」とはどの当りのことだろうか?
〈稽古場仲間のSさんという大きな味噌問屋の娘と親密になった。Sさんは、目鼻立ちのくっきりとした品のいい顔立ちの娘で、……秋に、親同士が纏めた縁談で隣県の造酒屋へ嫁にいくことがきまると、急になりふり構わず彼に近づいてきた。〉
「Sさん」とは?
小説『春の舞踏』に重なる登場人物になっているが、果たしてだれなのか?
例会ではよく話題になるが、実在の人らしい。
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