三浦哲郎文学を読む会

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先日の、いちのへ町民セミナーの際に、一戸にゆかりのある作品はどれを紹介するのが良いのか悩んだ結果、聴講者の皆さんは三浦文学に馴染みのない人たちのようだったので、一戸町のことだと分かる二つの作品を、持参した本の中から選んで読んで聞いて貰うことにしたのだった。
素人朗読になってしまって失礼したが、やはり、作者の文章を読んで聞いて貰うのが一番伝わるだろうとの思いで、朗読させて頂いた。

その作品とは、

『文集 母』から (1994.H6.6.25世界文化社発行)
 「舞台再訪―私の小説から」 (S43.11.27朝日新聞に初出、収録単行本『おふくろの妙薬』三月書房』)
「除夜の鐘まで」 (S47.4〜48.3毎日新聞に初出、収録単行本『笹舟日記』毎日新聞社)

であった。

 〈岩手県二戸郡一戸町―― 北上山地の北はずれの山間(やまあい)にあるこの古い町はずれに、私の母と姉とが住んでいる。…〉

で始まる 「舞台再訪―私の小説から」は、短い文章の中に一戸町に移り住むことになった経緯や、一戸町に帰省する時の様子、家族のことなどが実に分かりやすく簡潔に描かれているので、初めて聞く一戸町民には驚きを持って聞いて戴ける内容だと思っている。

〈…人には、「ちょっと郷里へ帰ってきます。」といって、出かけていく。
この町を、自分でも郷里と思い、人にもそういうようになってから、もうどのくらいになるだろうか。…〉

『忍ぶ川』と一戸町のことなども、作者の思いを書き綴っているこの作品は、是非、もっと多くの一戸町民に読んで聞かせたいものである。

広全寺と住職春覚さんのことが描かれている 「除夜の鐘まで」は、菩提寺で三浦家の墓があるこのお寺との交流の一端が垣間見られる。そして、家族への思い遣りがほのぼのと感じられる。これも短い作品の中にぎっしりとと言っていいぐらいに、無駄のない文章で描かれているので、三浦哲郎という作家の人柄を知って貰うのにふさわしい作品だと思って紹介させて頂いた。

果たして、聴いて下さった皆さんにはどのように伝わっただろうか。

セミナー会場でアンケートを回収していたようなので、後で内容を見せて頂きたいとお願いしてきた。






今日は、午後から一戸町奥中山地区公民館ホールでの「いちのへ町民セミナー」「三浦哲郎文学を読む」と題してたっぷり2時間講演をさせて頂いた。

一戸町でも私たちのようなサークルが立上ってくれることを望んでいるので、少しでも切っ掛けになればとの思いで、一戸町にゆかりの深い芥川賞作家三浦哲郎を紹介させて頂いた。

16名と少人数の参加者だったが、ほとんどが三浦哲郎文学にご縁の少ない方たちだったので紹介し甲斐があった。
後で職員の方から伺ったら、町の中心市街から車で30分も離れているこの奥中山地区の人達が主だったようだ。
三浦さんたち家族が住んでいたところから遠いので、尚更ご縁が薄いのも止むを得ないことなのだろう。

このセミナーのコースの人たちは、前回は研修旅行で青森県近代文学館に行って来たそうだ。
館内で職員の方がガイドをしてくれて、一戸町民だと知ると常設展示の三浦哲郎コーナーで説明と合わせて「じねんじょ」など二つの作品の朗読までしてくれたので、思わぬところで三浦哲郎文学に触れることができて大感激して帰ってきたとのこと。
特にも今回の講演を控えている時でもあったので、熱心に見学、聴講することができたと話していた。
この話を聞いて、三浦哲郎ゆかりの地の人達への文学館職員の気配りには感激した。

今日は、話したい内容を上手く伝え切れたかどうか不安が残るが、真剣に聞いて頂いたようなので、今後のご縁に繋がることを大いに期待したい思いでいる。

いつものことだが、厚かましくも読む会で所持している三浦作品の書籍4種を数冊持参して、欲しい人に分けて上げた。
三浦文学の魅力を教えたくても、今では書籍のほとんどが入手不可能になっているので、この行為も三浦文学普及には欠かせないことなのである。

前宣伝をした所為もあってか、一戸町の姉帯城跡九戸政実の時代にタイムスリップする物語を描いた「偽まさざね記」の載っている『東北戦国志』に関心を示してくれた。

講話の中で、読む会の今後の活動について、8月29日の三浦さんの命日に広全寺に墓参りする早朝例会を予定していることと、一戸町立図書館とのコラボレーションで、図書館での三浦作品朗読会を計画してみたいと話したら、皆さんが大変興味を示してくれたのがうれしかった。一戸町の人たちがそのことを知っていたら参加する人が増えるのではないかとも話していた。

公民館でも情報を頂けたら参加者たちにも連絡を差し上げるようにするからと、賛同してくれた。
今日話しきれなかったもっと多くの一戸町にゆかりの作品の内容については、テーマを変えればまだまだ伝えたいことが多くあるので、又こんな機会を頂けたら有難く、そして嬉しく思う。

今日の内容は以下に掲載のレジメの通り。
文学散歩コースの所だけは、時間の都合で省かせて頂いたが、文学散歩ガイドマップを持ち帰って頂けるように皆さんに配布した。
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一戸町で三浦文学講演

この度、一戸町奥中山地区公民館からの要請を受けて、明日同ホールで行われる「いちのへ町民セミナー」「三浦哲郎文学を読む」と題して講演をさせて頂くことになっている。

「いちのへ町民セミナー 自然・文化コース」の聴講者30名ほどを対象に、三浦哲郎文学の魅力と一戸町との関わりについて話をさせて頂きたいと思っている。

このセミナーでは、二年ほど前に八戸市の森林康氏が三浦哲郎文学について講師を務めているので、やり難い面もあるが、私なりの三浦文学についての話をさせてもらうことにしたい。
何しろ、三浦哲郎文学研究の第一人者であり、立派な自前のテキストを持参する森林氏のように、準備周到な講師にはなれないので、読む会で発行している「三浦哲郎文学散歩ガイドマップ」を持参して、これを資料にしながら進めることにしようと思っている。

三浦さんやその家族が暮らした一戸町なので、聴講者と語らいながらの雰囲気になれたら、むしろ、新たな情報を頂ける機会にもなるのではないかと、期待を膨らませている。

「海鞘(ほや)の話」

三陸海岸の名物「海鞘」が最もおいしい季節がやって来た。
特にも岩手県洋野町旧種市町「南部もぐり」と呼ばれる潜水技術による天然の海鞘の収穫高が多いことで有名だ。
昨年3月11日の大津波で養殖場や海岸沿いの漁場が壊滅状態になったというのに、漁業の人達の努力によって、名産地の収穫が戻ってきたそうだ。
ヘルメットを使う伝統の潜水技法を守り続けている潜水夫は今は二人だけになってしまったという。
このところ、その様子をNHK−TVや岩手日報新聞などの特集で報じられている。

いつものことであるが、「海鞘(ほや)」を見ると、大の海鞘嫌いだった三浦さんが、ある時から海鞘中毒にかかってしまったという話を思い出す。

そのことについて書かれている「海鞘(ほや)の話」という作品は、『狐のあしあと』(1999年講談社刊)、『おふくろの夜回り』(2010年文芸春秋刊)に所収されている。


                  海鞘(ほや)の話
                                                   三浦哲郎

 食物で嫌いなものはと訊かれれば、「ホヤとカキ」と答えていた。カキの方は、アクセントで容易に柿のことだとわかって貰えるが、ホヤの方は、そうはいかない。二度も三度も訊き返されることが多い。
ホヤというのは、酒をたしなむ人なら誰でも知っている。肴には持ってこいの海産物で、漢字にすれば海鞘になる。海のパイナップルなどと呼ばれていて、海中の岩肌に付着しているところはなるほどそれに似ていなくもないが、色や中身は、似ても似つかない。
ホヤ好きにも、小料理屋や居酒屋などで、きれいに調理されたものしか見たことがないという人がすくなくないが、もとの姿はといえば、体長十五センチほどのいびつな球形、疣々(いぼいぼ)のあるセピア色の固い袋のような皮をかぶっている。見るからにグロテスクで、初めはちょっと手を触れるにも勇気がいる。
酒の肴に最適なホヤの身は、この固い皮袋のなかにあるのだが、私がホヤを味わうこともなく強い嫌悪感を抱くようになったのは、先にそのグロテスクな外形を見てしまったからである。
まだ郷里の旧制中学の生徒だったころ、家族が敗戦後も父の村へ疎開したままになっていて、私だけが叔父のところに寄食して通学していたのだが、週末に両親の許へ帰るとき、よく汽車で漁の行商人たちと一緒になった。私は、その短い汽車の旅で、初めてホヤのありのままの姿を見た。姿を見たばかりではなく、行商の女のひとが両手でホヤを持ち、仰向いて、口を大きく開け、ホヤの口腔からほとばしる無職の液体を、喉を鳴らして飲むのも見た。私は嘔吐を催してデッキへ出た。
ところが、ホヤ好きによれば、この皮袋に詰まっている、つんと鼻を刺すような独特なかおりを持つ体液こそ、ホヤの命で、この味をおぼえると、あるとき発作的にホヤを食わずにはいられなくなる、一種の中毒症状を呈するようになるという。
実際、戦争中、ホヤ中毒が兵隊にとられたが、とても我慢できずに兵営を脱走して魚市場へ直行し、ホヤをむさぼりくったという話を聞いたことがあり、私はホヤをいちども食ったことがないのにその脱走男を小説に書いたことを憶えている。
おかしなもので、私はいい齢になってから、ほんのちょっとしたことがきっかけでホヤが大好物になった。いまでは脱走男の気持ちがよくわかる。こうしてホヤの話を書いていると、口中にじわりとつばきが湧いてくるから、もはや私も中毒者のひとりなのかもしれない。
(平成七年九月)



どんなきっかけだったか?、脱走男の出てくる小説は何だったか?
思い出しながら作品をひもといて見ることにしよう。

八戸近隣では、この魚の行商の女の人達のことを「イサバのカッチャ」と呼んでいて、この辺りでは今はもう居なくなったが、私達が子供の頃に、三浦さんが列車で見かけたであろうカッチャが金田一駅からリヤカーに商品を積み替えて家々を売り歩いていた姿が、ホックホクのコロッケの味と共に懐かしく思い出される。

近頃のホヤは養殖ものばかりで、天然ものは中々手に入らなくなっている。
歯触りや味の濃さが違うらしいので、病みつきになった人は、天然の海鞘を求めてわざわざ種市まで車で出かけるのだという。

私の口の中にもつばきが湧いてきて堪らなくなるのは、やはりホヤ中毒か?

合歓の町

合歓の花が咲きだした。
この花を見ると思い出す三浦作品がある。

< 合歓木の多い町であった。
そんなに合歓木の多い町は、おなじ谷間ではそこだけである。それで近在の人たちは、その町のことをネムと呼んでいた。
町には、ちゃんとした名がないわけではないが、谷間の人たちは誰でも、
「あした、いいあんべええだったら、一緒にネムの市にいかんかね。」
そんなふうにいっている。
ネムには、駅前の街道に、片側だけだが一丁ほどの合歓木の並木があって、その並木の下に、一日、十一日、二十一日と、毎月一の日に市が立つのである。>


三浦さんの著書『野』に収められている「合歓の町」という作品の書き出しである。
この作品は、この辺り旧南部藩の地域で盛んに行われている市日(いちび)のことが詳しく描写されていて、ある町の市が舞台になっている。

< 市の日には、朝早くから近所の町の商人たちが、品物を自分で背負ったり、共同で小型トラックに積み込んだりして集まってくる。毎度おなじ顔ぶれだから、店を出す場所もきまっていて、彼等は自分の場所に荷物を下ろすと、さっそく店を作りにかかる。
竹竿の一方の端を合歓木の幹に縛りつけ、一方の端を棒の柱で支えて、それからシートをうしろの方へ、地面まで斜めに張って、それが屋根。その屋根の下に、床板を敷き詰め、その上に茣蓙を敷き、品物を並べて、これが店。つまり、一本の合歓木を間に、二軒つづきの店ができるわけである。等間隔の並木だから、店を連ねるには都合がいい。店先も、屋根の線も揃って、見た目にも綺麗である。人もよく集まってくる。 >
                                        …(「合歓の町」より抜粋)

いつもの癖で、作品を読みながら舞台の町をイメージしてみる。
“谷間の町”
“片側だけ合歓木の並木になっている駅前の街道”
“駅前の街道の市”
“合歓木の並木の市”
“市の端が橋の袂”
“川向うの古い造酒屋の奥さん”
“万引き常習犯の酒屋の奥さん”
“橋を渡る鉄道員”
“橋を渡る郵便配達夫”
“「銘酒 峰の誉れ」”??
etc.
どう見ても2国鉄の機関区が在った一戸町の市日の様子に思えて仕方がないのだが、果たして、三浦さんは何処の町を描写しているのだろうか?

梅雨明けを宣言するように、紅色の花を無数に咲かせ始めた合歓の木を見ると思い出して気になるのである。

■当ブログ過去の関連記事
 【合歓木の花】     2010.8.1(日)

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