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三浦哲郎文学評

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私は、『はまなす物語』を知って、このように自分の郷里のことを著名な作家が新聞に連載された小説に描いてくれていたことに大変驚いた。
この小説に限らず、多くの作品でそんな場面に遭遇する度に、三浦哲郎という文学者の地方に向ける眼差しに大変感銘を受けるのである。

そのような三浦さんの姿勢について、この小説の〈あとがき〉に文章にしているので紹介しよう。

〈 私は、自分が地方の出身で、今でも地方の暮らしに強い愛着を抱いているから、作品にも地方の風物やそこで暮らしている人々を書くのが好きだし、地方や田舎を書くことを自分の義務の一つのように考えている。
 けれども、今度の「はまなす物語」に、あえて地方出身者や、地方で地道な暮らしをしている人ばかりを書いたのは、もちろんそんな私の好みや義務感のせいでもあるが、それとは別に、現代小説の舞台が都会に片寄りがちなことに、かねがね不満をおぼえていたからでもある。どうして都会小説ばかりがこんなに多いのだろう。そこに根を下ろしているのはほんの一部の人々にすぎないのに。なにも都会にばかり現代があるのではない。私は、新聞小説に限らずもっと地方が書かれなければならないと考えている。〉
     (「はまなす物語」後書きより抜粋)

私は、この小説も然ることながら、この本の〈あとがき〉が好きである。

このことは、現代日本のマスメディア全体に言えることではないだろうか。

一昨日の例会で、「三浦哲郎文学を読む会」に関心を示して自著の三浦哲郎文学研究論文を送って下さった近藤洋子さんのことを報告して、贈って戴いた論文『三浦哲郎初期恋愛小説論 -「湖影」をめぐって-』を紹介した。
出席者たちは大変興味を示してくれて、それぞれ手に取って内容を確かめていた。そして、早速、菅原会員が読みたいと言って借りて行った。

■過去のブログ記事
 三浦哲郎文学評はどうなる?     2011/3/10(木)
 http://blogs.yahoo.co.jp/onikosato/32979120.html



●三浦哲郎初期恋愛小説論 ー「湖影」をめぐってー(1998)
「近藤 洋子 和泉書院 東海学園女子短期大学国文学科創設三十周年記念論文集-言語・文学・文化-」H10.4.1発行


 内容は『湖のほとり』から『湖影』へ、そして『水の中の神話』に至まで3度に渡って改題された作品について、作者が一つの題材から物語をどうふくらませ、拡げていったのかを、前後を比較しながら、掲載誌の置かれていた時代背景も含めて考察されていて、小説の辿る運命は、多くは掲載紙の事情に左右されていることも教えてくれている。

この本はこの後『ゆのはな文庫』の蔵書として会員に貸出しをするが、会員以外や遠方の皆さんも、国立国会図書館から貸出しして頂ける筈なので是非読んでみて下さい。

国立国会図書館には、他にも近藤洋子さんの三浦哲郎研究論文の蔵書を見掛けたので、機会を見て是非読んでみたいと思っている。

 ●三浦哲郎研究--「団欒」から「石段」へ [近藤 洋子 東海学園女子短期大学 1996-09]

 ●三浦哲郎作品論--『白夜を旅する人々』 =A study on Miura Tetsuo's works: Byakuya wo Tabisuru Hitobito
           [近藤 洋子 東海学園大学日本文化学会 / 東海学園大学日本文化学会 編 2008]


贈り主の近藤さんには、文学散歩ガイドマップをまとめて購入して戴いているので、その内、教え子たちを連れてゆかりの地の文学散歩に訪れてくれるかも知れない。
その際には歓迎してガイド役を務めさせて貰おうと思っている。

今回の東北地方太平洋沖地震の震災は日増しに全容が明らかになり、気が遠くなるような悲劇が起きていることが分かってきた。
この悲劇は大津波がもたらしたもので、過去に何度もこのような大きな災害がこの地域を襲っていて三陸大津波として記録に残されている。

この地域にゆかりのある三浦哲郎さんは、その惨状を子供のころから聞かされて地震と津波の脅威を知っていたようで、色々な作品の中に描き残してくれている。

先日、usa*o*iさんからコメントがあったとおり『白夜を旅する人々』(S59.10初出)では、昭和8年、山長百貨店の4月1日新装開店を控えた3月2日深夜2時40分頃に起きた地震とそれに伴う大津波の惨状を「14」の項で描いている。
3月10日に清吾と苗が面接試験の会場で再会する一週間前の出来事であった。

この作品の大分以前に書かれている『海の道』(S42〜44.秋 初出)では「その7・泥海砂漠」の項でも、昭和8年3月2日午前2時40分に起きた地震と津波の惨状を相当の頁に渡って詳細に描いている。

この地震は岩手県釜石沖を震源として発生したM8.1の「昭和三陸地震」のことで、地震による被害は少なかったが、地震後に襲来した津波による被害が甚大であったという。
最大波高は岩手県気仙郡三陸町(現・大船渡市)綾里で28.7mを記録し、田老町(現・宮古市)では町が家がほとんどない更地同然の姿となっていたそうだ。

これらの作品を読んで見ると今回の惨状を描いているようにも思えてくる。
歴史は繰り返されるのである。

町が一瞬にして津波にさらわれて何も無くなってしまった情景は正に「泥海砂漠」である。

これは三浦さんが資料を紐解いて史実に基づいて描き残したもので、決して忘れてはいけない震災の記憶を、自分が子供のころに聞かされて恐怖心を植え付けられたように、読者に伝えたかったのではないだろうか。

幸運にも、現代に住む我々には発達した情報網と進化した交通機関など、当時と比べ物にならない武器があるのだから、一刻も早い救済と復興を願わずにいられない。

三浦さんが恐怖心を持っていた地震の話しは他にもいくつか作品があるので、追って紹介することにしよう。

三浦哲郎文学はこれからも、研究され、評論されていくのだろうか?
ある編集者によると、三浦哲郎文学は文壇界では高く評価されていたが、文学者や作家にそれは期待できないだろうとのことだった。
文学界のことはよく分らないが、日本現代文学や短篇小説の観点からそれなりに高い評価を得ていたのであれば、もっと功績を研究して評価をして貰いたいと思うのは、ファンとしての望みでもある。

芥川賞作家で、数々の文学賞も受賞し、現代日本文学の大家と評されていた三浦さんについては、これまでにも色々な方面で研究論評をされてきていることと思うが、刊行本に掲載されている解説以外に、論評らしい文章を読む機会が無かった。

そこで国立国会図書館サーチで検索してみることにした。

「三浦哲郎-記事・論文」の項
http://iss.ndl.go.jp/books?filters[]=1_2&any=%E4%B8%89%E6%B5%A6%E5%93%B2%E9%83%8E

この中には、月刊小説誌等の大衆誌に掲載されたものや、三浦哲郎さん本人のものも列記されているが、大衆向けでない学術系会報や学内誌などに掲載されたものも多く含まれていて、興味の湧いてくる「論文」がいくつも並んでいるのには驚いた。

秋山駿や高井有一など親交の深かった作家の論評も是非読んでおきたいものである。

 ●批評の透き間(5)私小説と三浦哲郎 [秋山 駿 邑書林 / 邑書林 〔編〕]

 ●多彩な平明さ--三浦哲郎「野」(新書解体) [秋山 駿 文芸春秋社 1975-02]

 ●ひたすらに書き続けた一生 (追悼 三浦哲郎) [高井 有一 新潮社 2010-11]


私が特に目を引かれたものを以下に掲げて見る。

 ●三浦哲郎は面白い =Tetsuro Miura is amusing [関谷 一郎 現代文学史研究所]

 ●瀬戸内寂聴と三浦哲郎と(文芸時評) [細窪 孝 新日本出版社 / 日本民主主義文学会 編]

 ●三浦哲郎文学の特色--亡びの血の超克 [豊嶋 昌志 富士大学学術研究会/富士大学学術研究会 編 1992-03]

 ●三浦哲郎 (文学における妻の投影<特集>)--(現代作家とその妻) [山敷 和男 至文堂/至文堂〔編〕1975-12]

 ●「忍ぶ川」(三浦哲郎) (近代文学が描く愛と性<特集>) -- (作品の描く愛と性)
              [与那覇 恵子 至文堂 / 至文堂 〔編〕 1987-10]

 ●文学とメディア 三浦哲郎『ユタとふしぎな仲間たち』--劇団四季・ミュージカル化の試みとの関連から
                      [増満 圭子 東洋学園大学 / 東洋学園大学 〔編〕]

 ●「おろおろ草紙」(三浦哲郎)の分析研究 (〔早稲田大学〕創立百周年記念論文集) -- (日本文学の断面)
                  [武田 勝彦 早稲田大学政治経済学部教養諸学研究会 1982-11]


 ●三浦哲郎研究--「団欒」から「石段」へ [近藤 洋子 東海学園女子短期大学 1996-09]

 ●三浦哲郎作品論--『白夜を旅する人々』 =A study on Miura Tetsuo's works: Byakuya wo Tabisuru Hitobito
           [近藤 洋子 東海学園大学日本文化学会 / 東海学園大学日本文化学会 編 2008]

これらは、特にも興味をそそる題名になっているので、是非読む機会を得たいものである。


そんな思いの中、一昨日、私のところに一冊の三浦哲郎文学研究論文が送られてきた。

 ●三浦哲郎初期恋愛小説論 ー「湖影」をめぐってー(1998)
          「近藤 洋子 和泉書院 東海学園女子短期大学国文学科創設三十周年記念論文集
           -言語・文学・文化-」H10.4.1発行


送り主は、先日、文学散歩ガイドマップの問い合せを頂いて、購入して貰った方で、この論文の著者だった。

早速、読ませて頂いたが、内容は『湖のほとり』から『湖影』へ、そして『水の中の神話』に至まで3度に渡って改題された作品について、作者が一つの題材から物語をどうふくらませ、拡げていったのかを、前後を比較しながら、掲載誌の置かれていた時代背景も含めて考察されていて、なるほどと頷きながら読まされる内容になっていた。
この著者と内容については、この後、また続きを書くことにする。

進呈されたこの本は、有難く頂戴して早速例会で披露した後、『ゆのはな文庫』の蔵書として保管させて頂くことにするので、興味のある会員は貸出しを受けて読んで下さい。

三浦さんは数々の文学賞を受賞されていて、日本の文壇界では高い評価を得ていた。
その中でも『川端康成文学賞』を2度も受賞していることは、三浦さんの短篇小説が如何に優れているのかを教えてくれている。
『川端康成文学賞』についてよく調べて見ると、受賞作だけでは無く、最終選考作として取上げられた作品も多くあったことが分かった。
以下に、それらをまとめてみることにする。

●受賞作
    ・じねんじょ
    ・みのむし


●最終候補作
    ・ひとさらい
    ・頬紅
    ・乱舞
    ・蟹屋の土産
    ・愁月記
    ・からかさ譚
    ・とんかつ
    ・こえ


これらの作品は、選ばれただけあって完成度が高い作品と言うことになるので、皆さんも関心を持って読んでみては如何でしょうか。

三浦さんの作品が選ばれた時のライバルを見渡して見ると、装幀や批評などで三浦さんの書籍に関わった人など、三浦さんと親交が深かった人達が並んでいたりして、色々なことが想像できて楽しめると思うので、Wikipediaからピックアップして転載させて戴くことにする。

三浦さんは第19回から選考委員も務められていて、委員になってからも自らの作品が最終選考作や受賞作に選ばたりしているのも注目点である。


■川端康成文学賞
 作家の川端康成を記念して作られた文学賞。川端康成のノーベル文学賞賞金を基金とする財団法人川端康成記念会が主催している。本賞は、前年度の最も完成度の高い短編小説に贈られる。

●第1期

第1回(1974年) 上林暁 「ブロンズの首」
   * 最終候補作
     o 佐多稲子 「歳月」
     o 庄野潤三 「甘えび」
     o 小島信夫 「ハッピネス」
     o 三浦哲郎 「ひとさらい」

第4回(1977年) 水上勉 「寺泊」、富岡多恵子 「立切れ」
   * 最終候補作
     o 円地文子 「問わず語り」
     o 遠藤周作 「うしろ姿」
     o 田久保英夫 「羽搏」
     o 竹西寛子 「春」
     o 富岡多恵子 「名前」 
      o 三浦哲郎 「頬紅」
     o 吉村昭 「メロンと鳩」

第8回(1981年) 竹西寛子 「兵隊宿」
   * 最終候補作
      o 三浦哲郎 「乱舞」
     o 古井由吉 「あなおもしろ」
     o 中村光夫 「形見」
     o 岩橋邦枝 「伴侶」
     o 高橋揆一郎 「骨を噛む」
     o 島村利正 「くちなわ幻想」
     o 吉村昭 「黄水仙」

第11回(1984年) 大江健三郎 「河馬に?筋まれる」、林京子 「三界の家」
   * 最終候補作
     o 三浦哲郎 「蟹屋の土産」
     o 八木義徳 「熱い季節」
     o 八木義徳 「遠い地平」
     o 大庭みな子 「道」
     o 上田三四二 「著莪の人」
     o 澁澤龍彦 「ねむり姫」

第13回(1986年) 小川国夫 「逸民」
   * 最終候補作
     o 加賀乙彦 「LATE AFTERNOON」
     o 高井有一 「半日の放浪」
     o 三浦哲郎 「愁月記」
     o 吉村昭 「鋏」
     o 吉行理恵 「赤い庭」
     o 大庭みな子 「白い鳥」

第14回(1987年) 古井由吉 「中山坂」、阪田寛夫 「海道東征」
   * 最終候補作
     o 三浦哲郎 「からかさ譚」
     o 高井有一 「家族の虚実」
     o 丸山健二 「月に泣く」
     o 尾辻克彦 「舞踏神」
     o 清岡卓行 「痛風と海」

第16回(1989年) 大庭みな子 「海にゆらぐ糸」、筒井康隆 「ヨッパ谷への降下」
   * 最終候補作
     o 安岡章太郎 「犬」
     o 飯島耕一 「サマー・タイム」
     o 金井美恵子 「飛ぶ星」
     o 三浦哲郎 「とんかつ」
     o 森内俊雄 「口紅」

第17回(1990年) 三浦哲郎 「じねんじょ」
   * 最終候補作
     o 佐江衆一 「橋の向う」
     o 青野聰 「燕の巣のある家の闖入者」
     o 黒井千次 「音」
     o 村上春樹 「TVピープル」

第20回(1993年) 司修 「犬(影について・その一)」
   * 最終候補作
     o 阿川弘之 「鮨」
     o 増田みず子 「顔」
     o 小沼丹 「軽鴨」
     o 山本道子 「喪服の子」
     o 大岡玲 「ジンベイザメになりたかった」

第21回(1994年) 古山高麗雄 「セミの追憶」
   * 最終候補作
     o 笙野頼子 「増殖商店街」
     o 三浦哲郎 「こえ」
     o 増田みず子 「風草」
     o 森内俊雄 「桜桃」

第22回(1995年) 三浦哲郎 「みのむし」
   * 最終候補作
     o 竹西寛子 「草原の歌」
     o 富岡多恵子 「触れる袖」
     o 小川国夫 「黙っているお袋」
     o 村田喜代子 「強盗山」
     o 萩原葉子 「スネーク」


■選考委員
第1期
* 第19回から第20回 - 吉行淳之介、大江健三郎、水上勉、竹西寛子、三浦哲郎
* 第21回から第22回 - 大江健三郎、水上勉、竹西寛子、三浦哲郎
* 第23回 - 大江健三郎、水上勉、竹西寛子、三浦哲郎、秋山駿
* 第24回から第25回 - 水上勉、竹西寛子、三浦哲郎、秋山駿、田久保英夫

このようなことからも、作家三浦哲郎という人が如何に偉大な作家だったかがうかがえるのではないだろうか。

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