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ずっと続くんだと思い込んでいたけど
指のすき間から こぼれていった
つなぐ糸の細さに 気づかぬままで
暖めるための火を絶やさないように
大事な物まで 燃やすところだった
一人よがりの意味も 知らないフリして
_スピッツ「若葉」より抜粋 作詞:草野正宗
スピッツの「若葉」を聴きながら
いつの間にか、泣いていた。
今まで、何度も何度も聞いた曲なのに。
その日、初めて、涙がこぼれた。
あたりまえのことなんて、世の中には1つもない。
ずっと続くと思っていたものは、
指のすき間から、こぼれていってしまった。
1人で車を走らせながら、わたしは、
久しぶりに、泣いた。
気持ち良かった。
そして、去年の今頃、いつも車の中で、
「ホタル」を聴いていたことを思い出した。
「ホタル」を聴きながら、
「ホタル」を歌いながら、
あの頃のわたしは、よく泣いていた。
そして、泣くと、夫に叱られた。
けれど、わたしの涙は、誠に都合が良くて、
運転席の夫に気取られぬよう
左目だけから、こっそり、こぼれた。
横道な運転。横暴な発言。有無を言わさぬ態度。
夫の何もかもが、乱暴だった。
言いたいことも言えず、やりたいことも出来ず、
夫に従い、働いて、寝るだけの生活。
自分の生活が、砂のように思えた。
そこに射した、ささやかな光。
わたしにとって、蛍のような存在だった。
時を止めて 君の笑顔が
胸の砂地に 浸み込んでいくよ
闇の途中で やっと気づいた
すぐに消えそうで 悲しいほどささやかな光
甘い言葉 耳に溶かして
僕のすべてを汚して欲しい
正しい物は これじゃなくても
忘れたくない 鮮やかで短い幻
_スピッツ「ホタル」より抜粋 作詞:草野正宗
その笑顔は、わたしの胸の砂地に浸み込んだ。
正しい物は、これじゃなくても、
すぐに消えそうで、悲しいほど、ささやかな光、
或いは、忘れたくない鮮やかで短い幻でも、
わたしのすべてを汚して欲しいと望んだ。
けれど、鮮やかで短い幻も
悲しいほど、ささやかな光も
いつの間にか、失くしてしまった。
思い出して、また、涙がこぼれた。
けれど、不思議と嫌な気はしなかった。
悲しくも、寂しくもなかった。
失くしてしまったけれど、
それは、あの時、確かに、あったのだから。
あの時、確かに、わたしにあった。
だから、それで良いのだと思う。
よりあつまって形を作り、
捻れて絡まって、ときには戻って、
途切れ、またつながり。
それがムスビ。
それが時間。
_新海誠監督作品「君の名は。」より
涙が、たくさん流れる。
対向車の運転手達は皆、きっと、
わたしを気味の悪い女だと思うに違いない。
けれど、へっちゃらだ。
馬鹿みたいに涙を流しても良いんだ。
涙をとがめる男は、この車には、もう乗っていない。
後から後から溢れる涙は、
さっきまで綺麗さっぱり忘れていた
1年前の涙とは、全然違う味がした。
アクションちゃんは、
使命を果たしに行く前、自分で車を運転しながら、
ゴシゴシと、わざと乱暴に、涙を拭う。
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