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ササノハサラサラ・・・
君が歌う
水が流れるように
雨が降るように
君が歌う
僕は、海に浮かんでいた。
雨だと思ったのは、波だった。
海は白く温かい。
ササノハサラサラ
歌声を頼りに僕は、君を探している。
白く温かい海を泳いでいく。
海は広く、深く、生温かく
ゆるゆると僕の身体を包み込む。
風が強いな。
波は、次第に高さを増して
しょっぱい水が、僕の目と鼻と口を塞ぐ。
海水をしこたま飲んだ挙句にようやく、
僕は、君の後ろ姿を見つけた。
柔らかくて温かい小さな魚だった。
その魚が君だと僕には、すぐにわかる。
君のうろこを傷つけないように
僕は注意深く君を、つかまえた。
雨が降るからきょうは少し暖かいみたいだ。
そう言おうとして、なぜか声が出なかった。
喉に綿が詰まっているみたいだ。
さっき飲んだ海水が固まったのだろう。
まあ、いいさ。
そんなの別に、たいしたことじゃない。
いま君はこうして、僕の腕の中にいる。
それが、僕にとってのすべてだ。
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眠れる森の中で
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君は眠る眠る眠る。
ときどき起こせば起きるようにはなったけど、
普通の人間が目を覚ましている時のようには、
覚醒しているわけではない、という事も
実感として理解できるようにもなった。
眠りながら、君が悲しい顔をする。
そうか、お腹が減ったんだね。
きょうで2日間、食事をしていない。
まるで、大きな赤ちゃんにするように
背中をさすって機嫌をとりながら
食事をさせ、排泄を手伝い、
そのついでに、着替えをすませる。
今度目覚めた時に、君が悲しくならない程度には、
簡単に身支度を整えることにも
最近ようやく慣れてきた。
君がいつ起き出してきても良いように、
寝室にはいつも薄明かり。
寝室の片隅に運んできた小さなテーブルが
食卓であり、仕事机になった。
あと5頁だけ片づけたら、もう寝よう。
君のとなりにすべりこんで、
一緒に眠る。君の世界で眠る。眠る。
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窓の外は雨。
12月にしては、あたたかい夜だった。
薄明かりのなか、ふかふかの布団にくるまって
きみは、すうすうと気持ち良さそうに眠る。
きみのこのヘンテコな病気が見つかってから
そろそろ3ヶ月が 経とうとしていた。 原因不明の眠り病。
医者の話によると、命に別状はないそうだ。
ただ、眠りの期間がやってくると、
きみは眠り続ける。何時間でも何日間でも、
きみはただ眠る眠る眠る。
眠れる森の中できみはどんな夢を見ているの?
きみの眠りを邪魔しないように、
きみの素敵な夢を終わらせないように、
そうっと小さな声で尋ねてみる。
もう、何百回も繰り返されてきた一方通行の会話。
そのあとに羽のようなキスを鼻に一度。
ゆっくりおやすみなさい
朝のうちに作っておいたシチューを温め直して
簡単な夕食をすませると
再び、仕事机に向かった。
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幸運なことにだって!?
ああ!そうだ!本当に幸運なことに!
なんて幸運なんだろう!
幸運すぎて屁が出そうだ。
幸運というよりほかに、術がなかった。
死なないのだ。取り敢えず今のところ、は。
コノ病気デハ死ナナイ…
君は死なない。今はまだ死なない。
このヘンテコな病気では、
まだ君は、死んだりなんかしない。
医師は確かにそう告げたのだ。
難病ではあるが、命に別条はないと。
神様!仏様!
ああ、それから、それから…
いったい誰に感謝すればいいのだろう?
イエス様でも御釈迦様でも閻魔様でも
もう誰だって良い!構いやしない!
この、チンケな若造(医師)の
ケツにだって、今すぐここでキスしてやる!
おっと!紳士淑女のみなさま
これは、とんだ御無礼を。
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空はどこまでも高く青く、
薄青の山の向こうに
羊のかたちの雲を見つけた。
あの羊になってさあ、かけていこう。
海と空の境目はやがて曖昧になって、
空を泳ぎ、海を飛ぶ。
疲れたらただ、ぷかぷかと浮かんでいればいい。
海でもいいし空でもいい。
青の中に浮かぶ2匹の羊は、
走ったり転がったり
じゃれあったりもつれあったりしてるうちに
おしまいにはとうとう
大きな綿菓子になりましたとさ
君がそういって静かに笑う。
君の笑顔はなんだかいつも少しだけ哀しい。
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