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「わたしだって探したんよ!」
責めるような口調になった。
八つ当たりもいいところだ。
五十嵐を探して、けれど見つけらなくて、
あの時の苛立ちが、そんな口調にさせた。
さっきの五十嵐とおんなじことをしている。
そして今度は、五十嵐が絶句する番だ。
今年の6月、五十嵐とは違う方法で
わたしもまた、彼を探していた。
Facebookを始めた頃だった。
彼と同姓同名の人物は3人いた。
プロフィールに画像があるのは
そのうちたった1人で、その画像の人物には
中学時代の五十嵐の面影があるような気がした。
だから、何度も画像を拡大してみたり
目を離してみたりしたのだが
結局、決め手にかけた。
というか、今にして思えば
まったくの別人なのだが
五十嵐を見つけたい気持ちが無理やり
彼の面影を生み出したのだろうと思う。
わたし達はもう
20年以上会っていないのだ。
何処かでばったり出くわしても
気づかない可能性の方が高い。
けれど
わたしだって探した。
わたしだって五十嵐を探したのだ。
拗ねるような
甘えるような
そんな気持ちになった。
「わたしも探したんよ」
と優しく言えばよかった。
わたしだって
わたしだって
負けず嫌いな子供のようだ。
けれど一体
どちらが負けで
どちらが勝ちなのだろう。
求める者がいて
求められる者がいる。 |
同級生
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ボクラニトワハナイ
ダカラキョウヲオモエルノ?
(RADWIMPS「シリメツレツ」)
五十嵐がわたしを探している。
どこにいるのかわからないわたしを探して
ただ、闇雲に車を走らせている。
RADWIMPSのシリメツレツが聞こえてくる。
この曲には特別なイメージがある。
焦燥感というか、或いは
じりじりとするような痛み、というか
大事なものを失ったかもしれないような
そして、それはもう二度と戻らないような
そんな気持ちになるのだ。
ボクラニトワハナイ
ダカラキョウヲオモエルノ?
夕暮れの町を
五十嵐はただ、あてもなく走っている。
探すことに深い意味はない。
会ってどうするのかもわからない。
でも、ただ会いたくて
走っている
突拍子もないと思う。
しかし、その突拍子もなさに
胸が震えた。
結局、五十嵐の記憶違いのせいで
再会は果たせなかったけれど
その告白は
わたしを幸福にさせた。
もしかしたら
五十嵐を探して電話したわたしも
彼をそんな気分にさせたかもしれない。
もしも、そうだとしたら
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青年がアパートに戻ると
そこにいる筈の彼女の姿はなかった。
彼女の荷物は、ほどほどに残っている。
単に、外出しただけのようにも見えるし
出て行ったのかもしれない。
或いは、突然思いついて
彼の知らない誰かと
旅行に出かけたのかもしれない。
この部屋にやって来た時だって、そんな風だった。
彼女は大した荷物も持たず
野良猫がふらりと立ち寄るように
そのまま、居ついてしまった。
彼女の姿を見ない日もあったが
何日か経つと
何事もなかったように帰って来て
彼のベッドに潜り込み
そして、彼らは一緒に眠った。
帰って来ないような気がした。
部屋に残された
少しばかりの彼女の物は
要らないものとして
全部捨てて行ったのかもしれなかった。
青年は、自分もまた
要らなくなった洋服のように
その部屋に捨てられた気がした。
青年は、中肉中背で
髪の毛は天然パーマのような
無造作な巻き毛で
無造作といっても
無造作風に造作されたものではなく
本物の無造作であり
巻き毛の理由は、天然パーマでも
パーマネントでも
そこは、どちらでも良いけど
とにかく、巻き毛は必須である。
前髪は鼻にかかるくらいの長さで
若干、猫背だ。
中肉中背より、少し背が高めでもいい。
青年の住むアパートは、4階建てで
エレベーターはない。
2人で写った写真立てが伏せて置かれている。
写真は入ったままだ。
彼女が意図的に伏せたのかどうか
青年に知る術はない。
開け放した窓から風が入り
カーテンを揺らした途端、耳元で
「お前はもう、彼女を失ったのだ」
と、誰かが囁いたような気がした。
青年は部屋をぐるぐる歩き回った挙句
スニーカーを履き
ゆらゆらと
夕方の雑踏の中に出て行く。
踏切の遮断機の向こうに
彼女が居るような気がする。
あてもなく、走って走って走り続ける。
夕暮れの喧騒の中
彼女の姿はどこにも見えない。
「そんな時に流れる曲だ」と、わたしは言った。
BGM「シリメツレツ」RADWIMPS
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突然ですが、RADWIMPS。
RADWIMPSが好きだ。
わたしは、RADWIMPSが好きだ。
アイライクRADWIMPS。
我愛RADWIMPS。
CDなんて1枚も持っていないし
単独のライブにだって行ったことないし
英語の歌は「ふふふふ」でしか歌えないし
曲のタイトルだって覚えられないし
来年、50歳になる中高年で
綾小路きみまろに全然笑うけど
RADWIMPSに泣ける。
文句があるなら、どうぞご自由に。
ただし、聞く耳は持たんけど。
とにかく、RADWIMPS。
1番好きな曲は「シリメツレツ」
不動の1位。
それなのに、ずっと長いこと曲名を
「セツナレンサ」と間違えて覚えていた。
1番好きなのに、ね。
好きな子の名前を間違えて覚えるなんて
自分のボーイフレンドだったら最悪だけど
そこはもう、カタカナと英語に弱い
中高年の悲しい性(「さが」と読んでね)
笑ってごまかすしか、ない。
車を運転していたある日
「シリメツレツ」を聞きたくなった。
しかし、その曲が
どのアルバムに入っているかがわからない。
うちの子に言って
「セツナレンサ」を探してもらったら
思っていた曲と全然違う。
そこで初めて自分の間違いに気づく。
ああ、あの曲が聴きたいのに
曲名がわからない。
「歌詞を言ってごらん」と子供が言う。
英語じゃ、言えるわけがない。
だって、聞き取れてないんじゃもん。
「それなら、歌ってごらん」と子供が言う。
メロディを歌うのはお安い御用。
しかし、敢えて面倒くさい方法を選んでしまう。
それが、わたしというオンナ。
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「おまえ、探したんだぞ!」
そんなことを言われたところで
ただの同級生でしかない五十嵐に
しかも、20数年ぶりの会話でいきなり
怒ったように言われたところで
わたしは、どう答えれば良いのかわからず
ただ、絶句するしかなかった。
第一、探すも何も
20数年前に会った時からずっと
(その時も中学校のクラス会だった)
わたしは、この町で暮らしていて
実家だって、ずっと同じ場所にあるし
実家の電話番号だって電話帳に載っているし
母だって健在だ。
本当に探したなら簡単に見つかる筈だ。
しかし、反論する隙を与えず、彼は続ける。
2年前に帰省した時、彼は
同級生のNが経営するバイク屋へ
立ち寄ったのだという。
そのバイク屋のNから
前に、わたしが店に来たと聞き
車を走らせて
わたしの家を探したと言うのだ。
青春ドラマのワンシーンのようだ。
そう思った。
もっとも、2人が
あと30歳ほど若ければ、の話だけれど。
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