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しめじ the cat 21歳

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最終話 

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私はもともと犬派で、猫が嫌いだった。
身勝手で、こちらのことなどお構いなしで、一方的に可愛くて。
仔猫はヤンチャで爪を立て、ボロボロになった本棚の本数知れず。
座敷犬が追い出され、最初に猫がやって来た日のことは、悪夢のように思っていた。

家の周りの交通量が多くて、最後に残ったのが、用心深くて慎重なしめじだった。
人見知りの激しい猫で、嫌いな人間の靴音を聞いても、どこか見つからないところに逃げ込んでいた。
来客のある時は、決して姿を見せなかった。
活発で、若い頃は鳥を捕まえて見せにきたりしていた。
屋根を飛び回って、よそ者猫を追いかけ回していた。



そんなしめじもある日、『時計台』と呼んでいた背の高い食器棚に飛びつくのに失敗した。
隠れ家にしていたグルニエの梯子にのぼって降りられなくなった。
『おろしてよ』と鳴くようになった。
そのうち梯子にのぼることもできなくなった。
走らなくなった。
寝ている時間が増えた。
最初の痙攣があった。
若い時よりもむしろ良く食べるようになった。

一方で人なつっこい猫に変わった。
人を見かければ鳴いて呼ぶようになった。
人に付いて歩き回るようになった。
リビングに座っていると寄ってきて膝に乗せてというようになった。
膝の上で撫でてやると寝付くようになった。
朝早くから鳴いて起こしてくれた。

人肌で温めてもらわないと、寝付けなくなっていたのかもしれない。

夜枕元に来るようになった。
座ってこちらをじっと見ていた。
布団に抱え入れてやると、胸の上でごろんと横になり、やがてスースーと寝息を立てて寝てしまう。
いつの間にか私も寝てしまい、目を覚ますと、となりに大きな目をしっかり開いたしめじが私を見つめている。
やがて布団の中が暑く感じたのか、私の手を解いて、しめじはピタピタと足音をさせながら、闇の中に消えていった。
それが昨夜のことだった。



ネクタイを選んでいる時、気がつくとしめじが足下に来ていた。
最近はいつ来たのだろうと思うほど、鳴きもせず、音も立てずにそばに来る。
家にいる時は、『いつでも一緒』というぐらい、そばを離れなかった。

今日が仕事納め。
「しめじ、私はこれから出かけるんだ。お前を抱いてあげたいけど、いまは時間がないんだ。明日になれば、いくらでもお前を抱いてあげられる。だから今朝はごめんね」
しめじは、顔を上げなかった。
めずらしく。



私が玄関で靴を履きかけた時のこと。
洗濯物を二階に運んだ家内の大声が聞こえてきた。何を叫んでいるか解らなかったけど、何が起こったかは想像できた。

二階に駆け上がると、しめじを胸に抱えた家内がうずくまっていた。
「もっと抱いてあげれば良かった。しめじはお別れを言いに来ていたのに、解ってやれなかった。いつもと同じだと思っていた」
私も同じ気持ちだった。

自分を責める家内を慰めながら、私は自分に言い聞かせた。
「痛いともいわず、しめじは良く頑張ったと思うよ。最後まで、一生懸命生きてくれた。今朝も3缶も食べて、元気なふりをしていてくれたんだね。長生きすることで、『ありがとう、大好きです』って毎日言ってくれていたんだね。でももう私たちは解っていたね。しめじがもう長くは生きられないことを」

しめじはまだ膀胱炎の出血が治まっていなかった。家内が悪戦苦闘してしめじに薬を飲ませて、昨日はしめじの歯で指を切った。しめじは本能的に抵抗するけど、最後はけなげに飲み込んだ。そうしたところで本当は快復しないのだけど、それが義務であるかのように。

私がしめじに「行ってくるからね」を言って階段を下り、家内も洗濯機が停まった音に会談を下り、誰も居なくなったほんの数分の間に、しめじは突然、倒れて、心臓も呼吸も止めてしまった。

2009年12月29日、午前8時30分頃、しめじ、永眠。21歳8ヶ月。

しめじが生きた長さは、私たちがしめじを愛した量と、しめじが私たちにくれた感謝の量を足した大きさだと思う。



しめじの顔は、まるで眠っている時のように穏やかだった。抱きかかえると、首の据わっていない赤ん坊のように、首がだらんと垂れたことで、眠っているのとは違うと解った。

私たちは階下の母親にどう伝えようか迷った挙句、家内が母親に声をかけた。

「おかあさん、しめじが死んだの」

母は「ええっ?」と声にならない声をあげて階段を駆け上がってきた。

「ああ、いつかその日が来るとは思っていたけど、来てみるとやっぱり悲しいね。しめじ、あなた昨日まで元気だったじゃないの!」

父の死もそうだった。

「順番ね、お別れは順番だけど、寂しいね。もう鳴き声も、足音も聞こえない。あなたが汚した跡を拭いて回ることもない。寂しいね」

それは母にだけではない。しめじを亡くした寂しさは、きっと後から、私たち家族全員に、降り積もる雪のようにしんしんとやってくるだろう。
私たちは当たり前のように明日が来ると思っているが、いつかは誰にも明日が来ない日が来る。そのことを今日はしめじに最後に教えられた。言い古されているけど一期一会。一日を大切に生きなければならない。賢者と愚者の差は、後悔の量だろう。



しめじは何も言わなかったけど、多分、体中痛くて苦しかったのだろう。背中を曲げて、尻尾を下げて、フリーズしたように立ち止まりながら歩いていた。
風邪を引いたらいけないからお風呂にもいれられず汚れて臭くもあった。でも老醜を晒しても、歯が少なくなった口で、鬼気迫るほど食べて、生き続ける努力をしてくれた。

そんなしめじが、私たちはどんどん好きになっていった。家族なのだから。家族は外見で愛している訳ではないのだから。

しめじについて語ることは多過ぎる。思い出も多過ぎる。しめじは人間ではなかったけど、人間と同じようにコミュニケーションができた。しめじは人間ではなかったけど、間違いなく家族だった。
人間、本当に悲しいと涙が出ない。正気を保つために、感情を崩壊させている余裕などない。



私は言った。

「急いでいるからごめんね。また明日」

しめじは顔を上げなかった。
多分しめじはうつむいたままこう言っていたのだと思う。

「いままでありがとうございました。お別れの時が近づきました。いつも寝るときに話してくれたように、私はきっと生まれ変わります。そしてもし少しの間待ってくれるなら、私はきっとあなた方をお訪ねして、今日で終わるこの私たちの話の続きを、その時また一緒にしたいと思います。その日まで、元気でいてください。さようなら」



しめじ、長い間、ありがとう。合掌。

枕元のスフィンクス

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ゆっくりと起きたら、枕の反対側にしめじが寄り添って眠っていた。

いつもと違って、歩き回っても鳴いても気がつかなかったので、諦めて寝たようだ。

急いでそばにあったケータイで写真を撮った。

暗かったのでライトを点けたら、しめじが目を醒ましてしまった。

水晶体が緑に光っている。

ケータイのカメラだから赤目補正などなし。





毎日しめじは家族が寝ているところを徘徊する。

誰かを起こして朝ごはんを作ってもらう。

普段は朝7時には朝食を食べ終える。

その後、私を起こしに来た時は「お腹がいっぱいになったから寝かせて」の合図。

布団に入れると満足げに眠りにつく。

入れ替わりに私が起きる。





1.胸の上に乗せる。スフィンクス座りをしている。撫でてやる。肉球がまだ冷たい。

2.体が温まってくるとごろんと横になる。肉球がやや温かくなる。

3.体側に降ろして体温で温め続ける。手を伸ばしてくるので掴んでやる。肉球をプニプニしてやったり、爪を引っ張ってやったりすると、力を入れて握り返してきたりする。掌を使った猫とのコミュニケーション。時にゴロゴロ言う。ゴロゴロの意味は不明だけど、決して機嫌は悪くない。

4.与えている手を舐めたり、顔をこすりつけているうちにトロンとしてくる。目を閉じる。

5.伸びる。筋肉が弛緩する。正体がなくなる。肉球が温かくなる。呼吸が静かに大きくなる。

6.この状態で、しめじの頭を枕に預けてそっと抜け出す。ここまでくれば、もう追いかけてこない。





今日は家族みな爆睡していてしめじに気づかず、9時を過ぎるまでしめじは空腹を抱えて枕元でふて寝していた。

時に家内のところだったり、息子のところだったりするけど、最近しめじは私のそばがお気に入りのようだ。

察するに運動するので、体温が高い。猫の体温も高い。そのあたりがお気に入りの理由ではないかと分析している。





ごめんごめんと朝ごはんをあげたら、猛烈な勢いでしめじは食べた。

体調悪くても、食欲旺盛。

しめじ。

一生懸命食べて、一生懸命生きるのがしめじの家族としての仕事。

すごい寝相

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実はしめじ、膀胱炎がぶりかえして体調不良。

寝られなくて歩き回る。

寝ても落ち着かない。

痛いのかもしれない。

抗生物質を喉に押し込む。





不安なのかいつのまにか黙って足下にいる。

うっかり蹴飛ばしてしまう。

それでも声をあげない。

痛いとも言わない。

信じきっているから、切ない。

近況

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[1週間前]
[今日]

寒くなってますます健啖家になったしめじ。

良く食べる。

一説によると栄養素を取り込む能力が落ちるので沢山食べないといけないんだとか。

何はともあれ、食欲があれば元気だ。



ところで昨日珍しくしめじの具合が悪くなった。

私が遅く帰宅したときはもういつものしめじだったから、その話を聞くまでは信じられなかった。

家内が帰って来た時のこと、しめじが徘徊していて、血を流していたのだとか。

慌ててかかりつけの動物病院に連れて行ったそうな。

かかりつけといっても前回具合が悪くなったのがもう数年前のこと。

しめじはめったに病気をしない。



連れて行く前に電話をしたらしい。

病院の人は事前診察のようなことをして準備をして到着を待ってくれる。

それほど緊急の状態に見えたのだろう。

「で、猫の名前は?」 

尋ねる病院の人。

数年前のことだからカルテが多分あると言う。

「しめじ、ですが」

答える家内。

「えっ!」

電話の向こうで絶句したとか。

「ま、まだ生きているのですか?」

恐らくそんなところだろう。

しめじにとっては失礼な話、かもしれないが、意味不明にちょっと嬉しい。

前回、その数年前に連れて行った時でさえ、

「昭和生まれの猫ですか! もう、ほとんどいませんよ」

と、動物好きな病院関係者の注目を浴び、可愛がられたしめじ。

その時は休日だったと思う。

確か私も付いていった。

今回もそんな感じだったんじゃないかな。



診断の結果は膀胱炎。

薬をもらって帰って、一度飲ませたら血尿はピタッと止まった。

「しめじって、よほど体が頑丈に出来ているのね」

家内。

「先生は『3日ぐらいで治るでしょう』って」

病院でも人気者だったらしい。

「へ〜、21歳にはとても見えませんね〜」

褒め言葉と受け取っておこう。

最近少々型崩れし始めたけど、しめじのコートは素晴らしく艶々している。

しかし。

歪んだ疑問が湧いてきた。

その獣医はそもそも21歳の猫を診たことがあるのだろうか?

「とてもキレイな心音ですね」

聴診器を当てた医師はそう言ったそうな。

内臓は年齢ほどに機能低下は避けられない。

だから大食い。

強心臓なのが長生きの理由のひとつなんだろう。

最近はストーブの前にいないで、むしろ歩き回っている。

寒がりでもなくなったのかな? 



何となく、22歳が見えてきたしめじ。

でも油断は禁物。

今回の急病は警報なんだろう。

いのちのサイズが小さい。

小さないのちにはちょっとしたことで危機が襲い掛かる。

注意するけど、運命もあるかな。



キミの仕事は一生懸命食べて長生きしてくれること。

居てくれるだけで私達がどれだけ幸せを感じるかキミは知っている。

だからこれだけ長い間、私達と暮らしてくれている。

長生きはキミの感謝のシルシ。

私達と暮らすのがウレシイのサイン。

私達と一緒に生き続けたいから高齢猫の食事を一度に3缶も食べる。

私達もキミに、これからも最大限の愛情を注ぎ続ける。

何があっても良いように、一期一会で愛し続ける。

それに応えて、キミも最大限の愛情を私達に返しておくれ。

食費のことは気にしないでいいから。

長生きすることで。



しめじが教えてくれたこと。

「いのちは、それがあるだけで、本人と周りを幸せにする」

しめじは居てくれること自体が愛情表現なのだから。

しめじが居る生活がシアワセなのだから。

人間も同じことだろう?

だから幾つになってもどうなっても、いのちの持ち主は、何とかして生きるべきだと、

私達は思っている。

晩秋

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[自分の寝床で 私の気配を感じて起きる]
[枕元でまどろむしめじ お話のあと]

このところ、しめじの秋も深まった感じがする。

掛け布団の中に潜り込んで、体温が上がってしまってちょっとした熱中症状態になっても出てこられなくなって。

いない、どこに行ったのだろうと探して見つけた時は犬のように舌を出してハアハアやっていて。

こんな犬のような猫を観たのは初めて。

というか、命の危険を感じてそれどころではなかったけど。

冷たい水を飲ませて、外気にあてて。

それで何とか回復して、いつものしめじに戻ったけど。

冷や汗をかいた。

目が離せない。





最近、私の枕元を寝る時の定位置にしている。

私がベッドに入った時に居なくても、朝起きると丸い背中があったりする。

あるいはしめじの早い朝ごはんの後に、にゃ〜と鳴いて私を起こしにきて、そのまま自分は枕元で寝る。

枕元で寝ていても油断はできない。

そのまま下に落ちたり、体勢を崩して起き上がれない時が出てきた。

軽い痙攣のような症状を起こすこともある。

まあ人間で言えば100歳以上。

仕方がないことでしょう。

食欲があるうちは大丈夫。

今朝も、14歳以上用のキャットフードを3つも平らげた。

健啖家でも食べたことを忘れるのでもない。

老化によって消化吸収率が下がるので、大飯喰らいになるようだ。





ペットを飼えば、命の変化が早送りで解る。

それは猫の変化だけではなく、時間の長さは違っても、例外なく人間に訪れるものを観ているのだ。

これはペットからの贈り物だろう。

学ばせてもらったものは多い。

懸命に生きてもこの長さ。

最善を尽くしてもこの長さ。

人間は自ら命の長さを縮めることができる。

なんと勿体ないことができるのだろうか。

自ら命を絶つ日本人が年間3万人。

人の苦しみは本人にしか解らない。

死ぬより生きることが苦しい人も居るだろう。

しかしこの猫は、自分で死ぬことは選べない。

どんなに生き続けることが苦しくても、

それが本来生き物に与えられた使命だと

生き様を通して、それを人に伝えている。





最近目覚めるとほとんど必ず枕元にしめじが居る。

別に寝床を作ってあるのに、なぜか私の所に来て寝ている。

この間の気温の低い日に、ストーブを点けていたら、しめじは尻尾を焦がしていた。

だんだん痛覚や温度感も壊れているのかも知れない。

危険に思ってストーブを点けないことにした。

それもあって私のところに来るのかもしれない。

特に運動後など、代謝が大きいので私はストーブみたいに暖かい。





しめじと目が会うと、最近必ずこんな風に言って聞かせている。

「長い間、私たちと一緒に生きてくれてありがとう。

 それは何よりのおまえからの恩返しだね。 

 これだけ人間が好きになったおまえだから、

 今度生まれて来る時は、きっと人間に決まっている。

 しめじ、もし猫で生きるのが辛くなったら、

 もういつでも人間になっていいからね。そして、

 もし人間に生まれ変わって、私たちのことを覚えていたなら、

 会いに来ておくれ。楽しみにしているから。

 でも、もう少し猫でいてくれるなら、

 それはそれで嬉しいことだよ。

 おまえが、生き続ける大変さを乗り越えて

 猫として私たちと生き続ける努力をしてくれる限り、

 私たちもできる限りの愛情を、

 おまえに注いであげるからね。

 居てくれるだけで、私たちは幸せだよ。

 朝晩、3食分ずつ食べてくれるだけで、

 私たちは、おまえの気持ちが良く解るんだから。」

しめじはその間、猫の頭では何も解るはずがないのに、

大きな目をそらさずに私の顔をじっと見ている。

そして、まるで『解ったよ』と答えているかのように、

ゴロゴロ(嬉しいサイン)と喉を鳴らしてくれる。





本当はぜんぶ聴いて解っていて、

でも何も言えないだけなんじゃないかって、

そう思えるんだよ、しめじ。

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